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パチスロワイルドサイド-脇役という生き方-
2019.12.10
5号機の夜明け~2027襲来~
その駅で降りたのは数か月ぶりだった。仮面ライダーDXを打つ際によく通った地域だが、某店のお祭り状態が終わってからは、すっかり足が遠のいていた。都内有数のオフィス街だけあり、こんな早朝でも行き交う人は多い。俺は人とハトを器用に避けつつ、広場の隅にある喫煙所に向かった。
広場には特徴的なオブジェがあり、その陰に隠れるようにあるこの喫煙所がお気に入りだった。そしてちょうど1本を吸い終えたころ、聞き慣れた声がした。
虎さん「よぉ、久しぶり」
――「おはようございます! お久しぶりです」
虎さん「行こうか」
――「はいっ」
新台ページの編集を始めて以降、虎さんに会うのは久しぶりだった。虎さんは相変わらずスロプロ生活を続けており、収支も変わらず好調らしい。
虎さんから連絡が入ったのは、アノ機種が導入されて3日後のことだった。俺がヒットすると予想した機種に、さっそく虎さんが喰いついたらしい。そしてすでに狙うべきホールも決めたとのこと。
俺らは騒がしい駅前広場を離れ、薄暗い路地へと入った。
ボッタ店ゆえの穴。
――「まさか、またここに並ぶことになるなんて」
虎さん「はは…たしかに」
正直に言えば嫌いな店だった。「スパイダーマン2」・「リンかけ」の全盛期に虎さんと通っていたが、あまりに節操がない「ガセ煽り」に嫌気がさし、もう2度と来ることはないとさえ思った店だ。
当時はガセイベントなど珍しくなかったが、このP店は次元が違った。店内マイクで極限までプレイヤーを煽るのである。「今日のオススメは○○コーナーです! ぜひお手持ちのカウンターで小役を数えてみてください!! 空き台がもったいない! 今すぐご遊技ください!!」といった具合。しかし、実際に打ってみると「それらしい台」は1台もない。そんな営業をしていたから、常連客も綺麗サッパリいなくなった。が――
虎さん「まあニーマルに使ってるのは間違いない」
――「ホントすか? まだ解析も出きってないのに?」
5号機「2027」(JPS)
2007年の夏にJPSが放ったART機で、愛称は「ニーマル」。それまでの5号機ART機といえばボーナス+ART機が当たり前。2027にもボーナス(JAC)はあったが、基本的にはARTのみで出玉を増やす斬新なタイプだった。ART「バトルモード(BM)」は1セット20Gの継続率管理で、純増は1Gあたり1.67枚。出玉速度は現在と比較するとかなり遅いが、当時としては相当早い部類だった。のちのART機に多大なる影響を与えたことは言うまでもない
|
虎さん「データは何軒ぶんも見てるけど、ここだけバツグンだわ」
――「前から導入直後だけは頑張る店でしたもんね」
虎さん「だな。客は綺麗に飛んだけど、そこだけは変わってない」
――「まだガセ煽りウルサいんすか?」
虎さん「いや、もう静かなもんだよ」
――「はは、安心しました」
かつてのようなウザいマイクはないようだ。
虎さん「そういや、ラッシーはニーマル初打ちか?」
――「そうすね。新台だけど2人とも取れますか?」
JPSの新台なのに設置は6台。この新台を見境なく買ってしまうあたりも、常連が離れた一因だろう。
虎さん「前の6人はおそらくマーベルかマジハロ行くから」
――「まあ、そうなりますかね」
虎さん「ニーマルに来たとしても1人くらいだよ」
――「ほう、なら並び打ちできますね」
虎さん「だな。JACインだけは気を付けろよ」
――「ちょ~、素人じゃないんだから大丈夫っすよ」
虎さん「その油断が危ねーんだって」
――「誰に言ってんすか。攻略ライターすよ?」
そしていざ開店。3階までゆっくりと階段を上がり、虎さんに連れられニーマルのシマへ。すると、予想に反しすでに3人が座っていた。
――「あぶなっ!! 3人もいるじゃないすか!」
虎さん「ニーマルの面白さがバレはじめたかな」
前日までの朝イチは、ライバルがいても1人だったらしい。しかし今日は3人だ。この過疎店で3人なら、他店では取り合いになっているかもしれない。
猿も木から…。
2時間後―――
台「ジャックイ~~~ン!!」
――「ふわぁぁぁ~!!!」
2度目のBM消化中、うっかりJACを揃えてしまった俺!
虎さん「ほら、だから言ったろバカ!!」
――「だって左BARだったから、中・右適当打ちしちゃって…」
店員「〇〇番台のお客さま、ボーナスゲームスタート! おめでとうございまぁす!!」
――「…マイク煽り、全然ヤメてないじゃないすか」
虎さん「ふはは、JAC揃えて煽られてやんの」
――「ぐぬぬ…」
2027のART
ニーマルのARTシステムは独特だった。既存の機種はボーナス後にRT状態へ移行し、ARTが当選していればナビを出してARTに突入といった具合だった。対するニーマルは言わば真逆。ボーナス(JAC)が成立するとリプレイ確率がアップし、そこからボーナスを揃えるまでの間がARTとなる。言うなればART中は成立したボーナスを持ち越している状況となり、うっかりボーナスを揃えてしまうとARTが終了してしまう |
虎さん「あ~あ、今30連くらいしてたかもしれないのに」
――「い、いや…どうせ3連くらいで終わってましたよ」
虎さん「これがライターだってんだから、Hも落ちたな…」
――「弘法も筆の誤りという言葉をご存じで?」
虎さん「早くボーナス回せよ」
――「はい…」
その後、2人ともART初当たりを重ねるも、ロング継続には至らず苦しい展開が続く。俺は初当たり5回の時点で最高3連。投資はすでに2万円を超えていた。
虎さん「もうヤメておけよ。高設定は右2の台っぽいし」
――「ですね…でもなんか手ェ止まらないんすよ」
虎さん「は?」
――「負けてるけどヤメたくないんす。久々にワクワクしてんす」
2027のART抽選は極めてシンプル。通常時は必ず低確or高確に滞在し、高確中にボーナスが成立すればARTへの突入が約束される。そしてボーナスの9割超がチャンスリプレイ同時当選だ。つまり高確中と思しき状況でのチャンスリプレイにアツさが集約される。現代から見れば呆れるほどシンプルだが、その潔さが逆に心地よかった
|
虎さん「まあ…分からんでもないけどよ」
――「虎さんだって、薄々高設定じゃないって思ってるでしょ」
虎さん「まあな。俺はさすがにそろそろヤメるけど」
――「俺は一発デカい継続を味わうまでヤメませんよ!」
虎さん「…Hも落ちたな」
――「ヤなこと言わないでくださいよ」
そのときである!
虎さん「おっ!?」
――「どうかしたんすか?」
虎さんの液晶画面を覗くと、潜水艦内を高速移動しているような演出が!
忘れかけていた感覚。
――「なんすかソレ? 見たことない演出ですけど」
虎さん「この前この演出で赤7揃ったんだよな」
――「は? 赤7ってスペシャルリプレイの?」
虎さん「そう、高継続率確定って言われてるヤツ」
スペシャルリプレイは同時当選確定で、低確・高確を問わずART突入も約束される。さらにその際のART継続率は95%確定なので、平均連チャン数は20連にも上る。ニーマルにおける最大の爆裂トリガーだった。ちなみにスペシャルリプレイ確率には大きな設定差があるが、それが明らかになるのはもう少しあとのことである
|
――「そん時、どれくらい連チャンしたんすか?」
虎さん「38連だったかな? ギリ40連届かなかった」
1セットで約33.4枚。それが38連なら約1270枚! いや、枚数はそこまで魅力ではない。俺が嫉妬したのは「BM中のストーリーを長く見られた」という点だ。BM中は毎セットでストーリーが進行して行き、継続が進むと対戦する敵キャラも変化していく。2027はオリジナルコンテンツゆえ、BMが連チャンしないとストーリーの続きが分からないのだ。
――「また赤7揃うんすかね?」
虎さん「さあ、どうかな…」
虎さんが恐る恐る赤7を狙うと見事中段に揃い、直後にARTがスタート!
――「マジっすか! ズルい!!」
虎さん「よっしゃ、コレで出玉確保したらしばらく遊べそうだな」
――「それもプロが言う言葉じゃないでしょ」
虎さん「うっせぇ! たまにはいいんだよ」
そこから虎さんは順調に連チャンを伸ばし、難なく平均の20連を突破! 俺は自分の台でストーリーを見たいため、虎さんの台から目を逸らし続けた。
一方、俺の台はといえば未だに見せ場はゼロ。まだ内部数値など分からないが、これが低設定であることだけはしっかりと分かった。
しかし、そんな展開でもヤメたくはなかった。5号機時代に突入して忘れかけていた何か。それを思い出せそうな気がして手が止まらない。そして4枚目の1万円札を両替して再び打ち始めると、直後に初見の演出が発生!
――「ちょ、これなんすかね?」
虎さん「潜水艦が突っ込んで来てんの? 俺も初めて見た」
――「レバーONで液晶が赤く光って、そこから潜水艦が突っ込んで来たんです」
虎さん「念のため赤7狙ってみたら」
――「まさか、そんな期待させちゃって…」
すると、すんなり中段で赤7がテンパイ。顔を見合わせる俺と虎さん。
虎さん「おめでとう」
――「ま、マジか…」
見事中段ラインに赤7が揃い、虎さんに続き俺も95%継続のARTがスタート!!
――「さすがにマクるのは現実的じゃないけど、半分は取り返せるハズ!」
虎さん「いやいや、全額取り返してやろうぜ!」
――「おっしゃ、初打ちから伝説作ってやりますわ!!」
それから伝説へ…。
BM開始から6セット目――。
台「一旦浮上する」
――「へっ!?」
味方潜水艦の浮上。それはBM終了を意味する。海面に潜水艦が出てしまえば、あとはJACを揃えてTHE ENDだ。
――「ちょ、待っ…そんな」
虎さん「どうした?」
――「なんか浮上するとか言ってますが」
虎さん「んなバカな。95%継続だぞ!?」
――「…もう終わりっすわ。儚い夢だったな…」
が、海面に浮上したと思いきや、出現したのは潜水艦ではなく大きなクジラ! そして次ゲームでバトルモードの文字が出現!! 継続確定パターンだ。
――「ふおぉぉぉ! こんなパターンもあるんか!!」
虎さん「結構見るぞそれ。ラッシー全然継続してないから見れてないだけで」
――「…そうなんすね」
なるほど、ドキドキさせやがる! たしかに95%継続はそう簡単に終わらない。虎さんはすでに30連を超えている。さあ、ここから俺も気持ちを新たに大連チャンを狙おうじゃねーか!! すると次セット…
台「一旦浮上する!」
――「はいはい」
虎さん「おい、またピンチじゃねーか」
――「いやいや、もうその脅しには屈しませんよ」
言っても95%継続だ。4号機「北斗の拳」の88%継続より遥かに高い。平均は20連。そう簡単に終わるわけがない。またクジラがジャンプするハズだ。
が、水面にバサーッと現れたのは潜水艦。そして静か~にBAR揃いナビが発生。固まる俺。
虎さん「お、おう…残念だったな」
――「…ヤメます。もうデコイも尽きましたわ」
初めての95%継続は、たった7連で終了。獲得枚数は210枚程度だったと記憶している。
新時代の香り。
――「ビールおかわり!」
虎さん「よく飲むなぁ、4万も負けておいて」
――「だから飲むんでしょ」
虎さん「ふは…まあそうだな」
実戦後によく通った小汚い中華屋。まだ日が落ちたばかりだが、すでにサラリーマンの姿が目立つ。
――「虎さんはいいっすね~、一撃でマクってプラスですもん」
虎さん「まあ95%継続だからアレくらい」
――「なるほど、皮肉がお上手で」
虎さんは記録を更新する46連。その後も少し打ち続けたが、初当たりが重いとの理由で低設定と判断し実戦終了。序盤の投資が響き大きくは勝てなかったようだが、満足げな表情だ。
――「しかし、なぜニーマルを狙うんです?」
虎さん「ん?」
――「マーベルやマジハロ推しのホールも多いし、今日の店だってマーベルのほうが扱い良さそうでしたが…」
虎さん「たしかにな。でもニーマルが1番ワクワクしない?」
――「1番ワクワク?」
虎さん「マーベルもマジハロも面白いし、スペックも魅力的だけど、俺らが想像していたART機と大差ないっていうか」
――「ゲームフロー的には従来機と一緒ですからね」
虎さん「そう。でもニーマルは違うじゃん? 5号機なのに4号機Cタイプみたいな」
――「おっしゃる通り。新時代を感じますね」
虎さん「それよ! 単純に勝つためだけならエヴァでも打ってりゃいい。でもニーマルはやっぱ未来を感じるんだ」
――「そうすね! 俺も負けたけど、明日にでもまた打ちたいし」
虎さん「俺もプロなんてやってるけど、単純に金のためならほかの仕事するわ」
――「はあ…」
虎さん「生産性ないからな。楽しくないならプロ辞めるわ」
――「なるほどっすね」
プロとしては甘い。でも、いかにも元攻略誌の編集らしい。それだけパチスロが好きだし、未来のパチスロにも期待している。それが知れて嬉しかった。
虎さん「俺はしばらくニーマルを追うよ」
――「なら俺もお供します」
この頃の5号機ART機は玄人向けで、完成形じゃないイメージだった。まだ洗練されておらず、プロトタイプといった雰囲気。しかし、その未完成っぽさにこそソソられた。これからきっとART機時代が訪れる。ニーマル・マーベル・マジハロは、まさにそう感じさせる機種だった。
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- ラッシー
- 代表作:パチスロワイルドサイド -脇役という生き方-
山形県出身。アルバイトでCSのパチンコ・パチスロ番組スタッフを経験し、その後、パチスロ攻略誌編集部へ。2年半ほど編集部員としての下積みを経て、23歳でライターに転身。現在は「パチスロ必勝本&DX」や「パチスロ極&Z」を中心に執筆。DVD・CS番組・無料動画などに出演しつつ、動画のディレクションや編集も担当。好きなパチスロはハナビシリーズ・ドンちゃんシリーズ、他多数。
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