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パチスロ攻略ライターの思考ルーチン
2020.05.05
打ち手から見たP-WORLDの功罪
仰々しいタイトルを付けてしまいましたが、P-WORLDに喧嘩を売っているわけではございませんので、お間違いなきようにお願いいたします。もちろん、私も長きに渡り大変お世話になっている便利なサイトです。みなさんもそうでしょう? パチンカー・スロッターなら見たことがない人を探すほうが難しいかと思います。
4月24日に大阪府の吉村洋文知事が、休業要請に応じないパチンコホール6店舗を公表。東京都も店舗公表の考えを示した途端にコレです。
開いているホールまで遠征しようと閲覧した不届き者はごく少数でしょう。どこが営業を続けているのかな。そんな興味本位だったかと思います。それでもアクセスが集中してしまうほど、パチンカー・スロッターの情報収集源として定着しています。
先日のことですが、平成まとめシリーズで「ぱちんこホール数の推移と歴史」という特集を書きました。平成元年から令和元年までをまとめてみましたが、スマホで見ると表組が小さいこと、小さいこと。必要な数字を切り貼りする作業のほうがよほど原稿よりも大変だったのですが(苦笑) そんなわけで、スマホでリンクを踏まれた方は、拡大してご覧くださいませ。
そのホール数の推移の特徴をざっくり書きますと。ホール数は平成7年(1995)の18244軒がピークで、令和元年(2019)は9636軒。昭和56年(1981)以来38年ぶりに1万軒を割り込みました。しかし、ホール1軒あたりの平均設置台数は常に右肩上がり。平成元年(1989)に245台だったものが、令和元年には435台と200台近く増えています。店舗の大型化が進んだんですね。
平成まとめシリーズでは、主にパチスロ機の変遷から数値の変動を眺める形を取りましたが、そのホールの大型化を支えたのはP-WORLDだったのではないか。ふと、そう思ったのです。うん、その特集記事を書いているときに気付けよ、俺。
正確には、時代のニーズを捉えたというべきでしょう。P-WORLDがなければ、どこか他のサイトが立ち上がっていたはずです。なので、P-WORLDに罪はありません。ただ、時代の流れを一気に加速させたのは間違いないでしょう。
★P-WORLD以前の遊技環境。
P-WORLDの開設は平成8年(1996)12月。まさにホール数がピークに達している時期にあたります。しかし、その当初は存在を知られてはおりませんでした。2年後の平成11年(1999)2月に加盟店が1000店に。平成12年(2000)3月に3000店。当時は17000店近くあったので、3000店でも約1/6です。この当初から「メール配信サービス」はあります。後々、効いてきますね。
P-WORLDがまだない平成最初期。私が普通の(?)ユーザーだった時代です。この頃、設置機種などの情報は自分の足で稼ぐ必要がありました。特にパチスロを始めたばかりの平成2年(1990)あたりはパチスロを設置しているホールもまだ少なく。打ちたい機種があるかどうか歩き回ったものです。
開設前後は、いわゆるパチスロ生活者となっていました。携帯電話や創成期のインターネット(パソコン通信)もありましたが、まだまだ足で情報を稼ぐことが主流。ホール数もピークの時期です。近所の住民しか知らない隠れた優良店がゴロゴロありました。そして、遠征して来る集団に荒らされるようなことも滅多にありませんでした。良いホールなんて簡単には教えないですよ。必然的に、P-WORLD以前の時代のプロは特定のホールに通うジグマスタイルが主流とならざるを得なかったのです。
この当時のプロは、ジグマだけだったのか。今で言うイベント狙い的な存在もいましたよ。新装開店などを狙う開店プロです。電話帳でホールの存在を確かめたり、求人誌でグランドオープンを探したり。いや、話で聞いているだけですけどね。とにかく、アナログな時代だったかと思います。ただ、開店プロはジグマプロには嫌われまくっていました。
ジグマプロは、その地域に根ざして生かされていました。地域共生です。そのホールの出す余力を残すよう気を配ったり(良い台でも夕方に帰ることも)、負けても通ってくれる常連客との繋がりも大事にしていました。しかし、開店プロは容赦しません。勝てるときに勝つのみ。そのホールがその後に回収営業をせざるを得なくなっても関係ありません。いつの時代もそうです。守るものがある側は弱いものです。
★P-WORLDが普及した後の世界。
平成15年(2003)9月。P-WORLDの加盟店は、1万店を突破します。この頃のホール数は16076軒。比率にして62%強です。過半数のホールがサイトにアクセスするだけでホールの存在や設置機種を検索することができるように。近隣住民だけでなく、広い商圏から集客することが可能となりました。大型店が台頭しやすくなったのです。
奇しくも、爆裂AT機やストック機でパチスロに勢いがあった時代。イベント営業も加熱していきます。設定発表なんて当たり前。ここで絶大な効果を発揮したのが、メール配信サービスでした。ズラっと並ぶ高設定の台番号。そんな圧巻さは中小のホールに太刀打ちできるものではありません。ハコの大きさだけでなく、高設定を数多く置ける経営体力も違います。
それによってプロの形も様変わりしました。メール配信サービスの充実・集客競争により、多くの情報を集め取捨選択することが大事となっていきました。少ないホールを観察して気を遣いながら凌ぐよりも、良いホールに遠征して、後腐れなく出せるほうがラクに決まっていますからね。このニュータイプからは、昔のジグマプロが旧ザクのように見えたことでしょう。守るものがある側は弱いものです。再び。
ここでひとまず、P-WORLDの功罪(?)をまとめてみます。
【功】:商圏を広げ大型店の進出を促した。情報化社会の流れに沿ってユーザーのホール選択肢を広げた。(イベント営業と合わせ)一般ユーザーにも来店機会を作った。
【罪】:ユーザーと地元ホールとの繋がりを希薄にし、中小規模の地域密着店にダメージを与えた。目押しサービスなどのお手伝い役や、常連の不満などを進言もしたジグマプロを絶滅に追いやった。
こんなところでしょうか。機械の購入費用も捻出しやすい大型店のニーズに合わせて、派手な機械ばかり作られるようになった……など、派生する部分もあります。そして、そのような機種ばかりとなって中小ホールはますます苦戦したわけですが。ギャンブラー向きと憩いの場向きでは設置すべき機種が違います。
★それでも、遊技人口は減少を続けている。
そもそも大衆娯楽。社会から必要とされる度合いは時代とともに変化するものなので、P-WORLDの責任ということではありません。しかし、このような大型店にシフトしていく流れも、遊技人口の減少方向にベクトルが向いている。そう私は考えます。
少数の大型店という構図は、そこまで出かけなければ楽しめないということ。それに押されて地元の中小店が減っていくと、フラッと歩いて行くような距離で楽しめる機会も少なくなります。生活の一部ではなく、非日常となってしまうのです。特に2003年あたりのイケイケ全盛期は、ホールコンセプトを非日常とするホールも多くありました。
その方向で進みすぎて、もう引き返せない。突き進むしかない。私にはそう映るのです。
6号機は射幸性が抑えられました。BOX導入など同じ機種をズラっと並べる営業は不向きです。たまたま座った台が高設定でなくても、うっかりの一撃で大勝ち……なんてことは難しいですから。「昨日ひどかったあの台、今日は出るかな」そう思わせて、それに応えられる。1台1台に手と目をかけられる中小規模のホールが復活するチャンスとも思っていたんです。それこそ、P-WORLDがまだなかった頃のホール規模に近い感じですね。
交換率の問題やそれに合わせたスペックにしていくとかもありますが。それ以前に新型コロナウイルスの影響が強すぎます。経営の体力が強くはない中小規模のホールが存続できるかという苦難の状況となりました。
もちろん、中小規模のホールが多かった時代の弊害もあることでしょう。しかし、地元からの愛され方は中小ホールの林立時代がはるかに優っていたと感じます。もうその時代に戻ることはありませんが、1軒でも多くの地元住民に愛されているホールが存続できますように。そう願うばかりです。
いや、規模は関係ないですね。いまある建物を小さくもできませんし。どのみち、これからホールが生き残るために必要なのは、地域との共生ではないでしょうか。お客さんを他から奪えばいい。足りなければ、もっと遠くの商圏から集める。他県のユーザーの遊技禁止を条件に営業再開を目指している県もありますよね? 当面は無理でしょう。
P-WORLDのことですから。地域との共生に役立つツールとか作ってきそうな気もしています。ん、そうだ。いっそのことパチ7で作ってみるのはどうでしょう?
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- 佐々木真
- 代表作:パチスロ攻略ライターの思考ルーチン
裏モノ全盛期に“ギャンブル”としてパチスロを始めたが、技術介入機時代に最適手順を模索するなど“遊技”としての魅力にはまり、履歴書に大きな穴をあけてしまう。2000年よりパチスロ雑誌などで編集兼ライターの活動を開始。現在は、ほぼすべての機種の発表会や取材に参加。法律・規則などの知識をもとに、根幹システムの推測をライフワークとしている。
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