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パチスロ攻略ライターの思考ルーチン
2021.09.07
4号機と5号機以降でAT小役の揃い方がまったく違う? AT・ARTの変遷。
先日のこと。話の流れで「4号機のAT機の通常時では、1枚役とかゴチャゴチャしていなかったと思う」なんてな感想を聞きまして。押し順ナビに従えばメイン役が揃うように外見の事象は同じでも、作り方がまったく異なることが風化してきていると感じた次第です。
いや、まったく違うとも言い切れないか。なんてモヤモヤしたので、自分のためにもまとめてみたいと思います。長くなりそうなので、前置きは短め。
タイトルはAT・ARTとなっていますが、小役ナビがまとまって出るアシストタイム(以下、AT)とリプレイ確率がアップするリプレイタイム(RT)が合わさったのがアシストリプレイタイム(ART)。今回は小役の話がメインですので、ATと総称させていただきます。
★4号機のAT(アシストタイム)
ATは、サブ基板(演出用の基板)が認められ、いろいろな演出ができるようになって登場することができました。ということで、3号機以前や初期4号機(アクロスが復刻している時期の機種)にはございません。
▲初のAT機『ゲゲゲの鬼太郎SP』(サミー:2000年)
初のAT機は、サミーの『ゲゲゲの鬼太郎SP』でした。少しややこしいですが、『ゲゲゲの鬼太郎』は初の液晶搭載機。でも、8ラインのノーマルでした。うん、どちらも名機。
ATの突入はBIG後の1/2で、左リール3択の色ナビ方式。1Gあたり3枚程度の純増でした。今から考えると3枚/Gは早い部類となりますが、当時ではマイルドという位置付け。ATに限らず、激しい機械(大量獲得・CT機)がたくさんありましたからね。
あくまでも推測ですが。マイルドなものを一度“検査期間に対する観測気球”として出しておいて、それが認められたら激しいものも出してしまおう。そのような形だったように思えます。
▲初の爆裂AT機『獣王』(サミー:2001年)
その翌年『獣王』が登場します。BIGを引かなくともモリモリと増えるメダル(1Gあたり約10枚の純増)。そこまでのパチスロ感と出球感を大きく変えるものでした。等価交換営業が増えたきっかけですね。
と、ここまでは今の常識でも理解することができる作り方なんです。色によって「3色×2色×2色」で12択。それだけの小役(別フラグ)が用意されていました。揃ったら払い出し。揃わなかったら払い出しなし。実に分かりやすいです。
ただし、色目押しということは、ある程度の目押し力が必要となります。多くの人が親しむにはハードルがあるということですね。
▲押し順爆裂AT機の大ヒット機種『アラジンA』(サミー:2002年)
そのハードルを解消したのが“押し順小役”です。ナビされた押し順に従うだけでOK。その技術革新は割と早く。2001年のうちに『クレイジーレーサー』(メーシー)などで実現していましたが、そのような小役の作り方(5択や6択の押し順小役)が当たり前になったのは『アラジンA』あたりでしょうか。
冒頭の方が「昔は1枚役とか揃わなかった」というイメージで話されていたのは、この時期の機種かと思います。この当時の押し順小役は、揃ったら払い出し。揃わなかったら払い出しなしとなっていました。いや、いろいろとフリを作るとややこしくなるので、どう作られていたか答えから書きましょう(笑)。
押し順小役(例:ベル)は、1つのフラグ。ただし、押し順によって“振り分けられており”正しい押し順でないと揃わない形になっています。同一フラグの制御違いなんて表現します。
この当時は、1つのフラグに対して複数のリール制御(揃い方・ハズレ方)を持つことができました。それを利用したんですね。これ、比較対象となるので、読み進めるのに覚えておいていただければ幸いです。
★4号機の終焉。
爆裂AT機は、その射幸性の高さが指摘され、検定取り消しなどを経て作ることが難しくなってしまいました。それを埋めたのがストック機でした。
なに4号機の歴史を語っとるんじゃい。ATの話をするのに、ストックは関係ないじゃろが。そう思われるかもしれませんが、関係ありありなのです。
ストック機を実現するのに必要不可欠なものが、同一フラグの制御違いでした。リプレイをたくさん成立させて、実際に揃うのは1/7.3程度。それ以外は取りこぼしつつ、隠し持っているボーナスも揃わない作り方をしていたのです。
4号機が終わりに向かうきっかけは爆裂AT機が作ったかと思います。その規制が立て続けにあり、最後のダメ押しとして5号機への遊技機規則改正となりました。悪いのは爆裂AT機だったはずですが、それ以上にストック機が目の敵にされることに。
・BIGなどボーナスを複数持つことも禁止
・リプレイは全てに優先し、取りこぼし禁止
・1つのフラグで複数のリール制御を持つことも禁止
二度とストック機を作れないように、何重にも保険をかけて制約が作られました。このうち1つでもストック機は作れませんがな。
その中の1つに「1つのフラグで複数のリール制御を持つことも禁止」俗に言う単一制御がありました。もちろん、これはリプレイのみに当てはまるわけではありません。『アラジンA』が採用していたような同一フラグの制御違いが使えなくなった瞬間となったのです。
★5号機初期からAT機は登場。
傍から見れば、爆裂AT機もストック機も、4号機時代の後半を彩った主役であり、4号機時代を終わらせることとなった張本人ですが。何重にもロックされたストック機と違い、AT機には温情が与えられたように感じました。
▲5号機初のAT搭載『ゴルゴ13 ザ・プロフェッショナル』(平和ブロス:2006年)
2006年には早くも5号機初となるAT機『ゴルゴ13 ザ・プロフェッショナル』が登場。ただし、この当時はメダルが増えるものではなく、現状維持レベルしか認められませんでした。
2006年といえば、まだ4号機と併設されていた時代。良いことがありそうなのに増えないというゲーム性は浸透しにくく。RTのほうが主流となっていったのです。研究の伸び代も大きかったですしね。
ちなみに、AT小役は色目押し方式。押し順方式が禁止されたのかとも思いましたが「もうちょっと待って」と保通協(検査する機関)に言われていたようです。
ということで、4号機の色目押し機と同様に、それだけの小役(別フラグ)が用意されていました。揃ったら払い出し。揃わなかったら払い出しなし。分かりやすく作ることが可能でした。1枚役が揃いまくるのはもうちょっと後の話です。
★5号機での押し順の概念。
▲5号機初の押し順AT小役を搭載『押忍!空手部』(イレブン:2008年)
ほどなく、押し順ATを搭載した機種が登場してきます。その最初は『押忍!空手部』でしたが、押し順非合致で1枚役が揃うことはなかったと記憶しています。1枚役が揃うようになった最初の機種は何だったかなあ。思い出せないので話を先に進めます(笑)。
4号機の押し順小役の作り方は、リール制御振り分けによって、押し順の択を作るものでした。しかし、5号機では封じられています。そこで登場したのが、5号機から許されるようになった「同時当選」の概念です。
同時当選といえば、小役とボーナスの同時を思い浮かべる方が圧倒的に多いかとは思いますが「小役+小役」も認められており、それを使うのです。これは押し順に限った話ではありません。強チェリーと弱チェリーは、どうして違うのか。弱チェリーは、チェリー単体での当選。それに対し、強チェリーは「チェリー+1枚役」などと“別のフラグ”としているのです。
押し順ナビに従って揃うのがベルとして。
ベル揃い+1枚役A
ベル揃い+1枚役B
ベル揃い+1枚役C
ベル揃い単独
と、異なるフラグを用意したとしましょう。1枚役Aと同時のものは、左リールから押した場合にベル揃いを優先。Bと同時のものは、中リールから押した場合にベル揃いを優先。Cと同時のものは、右リールから押した場合にベル揃いを優先。このような組み合わせを作ることが可能になります。ちなみに、ベル単独は、どこから押してもベル揃いとなる“共通ベル”のような存在ですね。
では、押し順が不正解だった場合にどうなるのか。ベル揃いではなく、1枚役優先に切り替わります。出玉試験の方法とかいろいろ絡んでくるので、好きな言葉ではないですが「そういうもの」と思ってくださいませ(汗)。
1枚役があるということは、揃う絵柄の組み合わせがあるということ。ベルが揃わないなら1枚役が揃う(絵柄が近くになければ取りこぼす)ことになります。優先順位はさておき、5号機以降、成立した小役を強制的に取りこぼさせるのはNGですからね。
押し順小役でモリモリ増えるような機種であればあるほど、押し順小役の抽選確率は高くなることに。必然的に1枚役が揃う機会が大きく増えることになるのです。また、押し順の択が増えるほど、同時当選させる小役も増えることになります。
現在主流の少ライン機だと「見た目上はベル揃いになるけど」実際の有効ラインで揃う組み合わせは異なることが増えます。「小役+小役」のような同時当選が必要なのは、小役だけではなくてリプレイもです。「リプレイ+特殊リプレイ」のような形になりますね。
見た目上ではなく、正式な役構成がゴチャゴチャすることこの上ないですね。4号機以前は「いつでも見られるパネルに」正確な役構成の表示が義務化されていましたが、5号機の押し順ART機が台頭するようになって、液晶に表示するのもOKに。そして現在は、非公表でも構わないとなりました。
書いてあるけど面倒で見られないのと、書いてないからどの絵柄が揃えば良いのか分からない……は、まったくの別物と思う次第です。
絵柄を狙って止める技術介入性がパチスロ機には必要とされています。全リール適当打ちで期待値がまったく変わらない機種とか、型式試験に適合しません。それなのに「揃えるべき絵柄を公表しなくて良い」とは、どういうことですか。プンプン。「多分、7が揃えば偉いんだろう」とか、メーカーとユーザーの信頼で成り立っているだけですよ。
ストック機のストッパーはあることですし、役構成はゴチャゴチャしてしまっていますが、擬似的に1つのフラグで複数のリール制御を実現できています。もう、複数のリール制御を認めて、役構成の表示を再び義務化したほうが良いと思うんですけどねえ。それなら役構成もスッキリしますし。5号機以降の押し順小役は、幅広いユーザーに親しまれるゲーム性を実現させる功の部分もありますが、パチスロがパチスロであるために必要な情報公開の妨げとなった罪もありますな。そんな感想です。
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- 佐々木真
- 代表作:パチスロ攻略ライターの思考ルーチン
裏モノ全盛期に“ギャンブル”としてパチスロを始めたが、技術介入機時代に最適手順を模索するなど“遊技”としての魅力にはまり、履歴書に大きな穴をあけてしまう。2000年よりパチスロ雑誌などで編集兼ライターの活動を開始。現在は、ほぼすべての機種の発表会や取材に参加。法律・規則などの知識をもとに、根幹システムの推測をライフワークとしている。
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