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パチスロワイルドサイド-脇役という生き方-
2022.10.11
極秘の仕事~パチスロのウラ側~
――「ほ~、これは……なかなか」
K先輩「うん……なかなかだな」
古びた駅舎を出ると、俺らはその場に立ち尽くした。ロータリーなどと呼べるものはなく、少し離れたところに住宅だけが並んでいる。
ド田舎育ちの俺でも圧倒されるほどの〝のどかさ〟だ。都会生まれ・都会育ちのK先輩からすれば、まるで異国に来たような感覚だろう。
せめてコンビニくらいはあるだろうと予想していたが、それらしいものは見当たらない。店舗と思しきものは、駅のスグ隣にある小さな喫茶店だけだ。
K先輩「ん~、参ったな。とりあえず飯にするか?」
――「ですね。でも、どこで……」
K先輩「そこのサ店しかねーだろ」
――「で、ですよね~」
店の窓には「味自慢! ナポリタン」の貼り紙がある。パスタは好きだが、喫茶店のナポリタンなどかれこれ十年以上食べた記憶が無い。
案の定、店内は静かだった。先客は高齢の男性1人だけで、店主と思しき中年女性と楽しそうに話している。たしかに昼にはまだ早いが、とはいえ駅前の一等地だ。経営は大丈夫なのかと心配になってしまう。
2人揃って素直にナポリタンとアイスコーヒーを注文した。調理を待つ間、ずっと窓の外を眺めているが、人っ子一人通りはしない。この辺りの人々は、あまり鉄道を利用しないのだろう。
K先輩「てかさ、駅前にタクシーいた?」
――「いえ、1台も。〝無〟でした」
K先輩「だよね? 来るかな?」
――「呼ぶっきゃないんじゃないスか?」
K先輩「マジか、のどかすぎんだろ」
――「ちょっと、おかみさんに聞いてきますね」
K先輩「すまんねえ。頼むよラシ夫」
テーブルに置かれた先輩の右手の人差し指は、トントンと忙しなくリズムを刻んでいる。イラついている風ではない。きっと、俺と同じように緊張しているのだろう。
俺らにとって初めての仕事なのだ。緊張するのも無理はない。
――「おかみさん、タクシー呼んでくれるそうです」
K先輩「そうか。呼べば何分くらいで来るって?」
――「5分から10分くらいだそうです」
K先輩「OK! 飯食って一服したら頼むか」
――「そうスね」
あまり食欲はなかった。これから俺らは〝何〟をさせられるのか。その不安が、胃の中にどっしりと居座っていた。
いつもの展開。
事の起こりは、5日ほど前に遡る。編集部で増刊本の校了作業をしていると、遠くからとフロア内を見渡している編集長と目が合った。
瞬間、イヤな予感が走り目を逸らしたが、どうやら遅かったらしい。編集長はニコニコと作り笑いを浮かべながら、一直線に俺のもとへ向かってきた。
編集長「ちょうどいいのがいた!」
――「で、でたー! 本前兆確定」
編集長「ラッシーさ、来週頭ヒマだよな?」
――「空いてる?…とかじゃなく断定形なんスね」
編集長「そう断定断定。ヒマだよな?」
――「いや~、本誌の原稿を書かなきゃ」
編集長「あ~、大丈夫大丈夫。何ページ?」
――「8Pくらい……」
編集長「あ~、そんなん移動中とホテルでチョチョイでしょ」
――「いやいや……てか、地方出張スか?」
編集長「そうなんだよ。急な話なんだが」
誰かの代わりの来店だろうか。元が誰かは知らないが、俺へのグレードダウンとは運のないホールだ。
編集長「ちょっと変わった仕事でよ」
――「変わった仕事?」
来店ではないらしい。それに、この言い方であれば取材の可能性も皆無だ。地方メーカーへの取材は減ってきているものの、俺も経験が無いわけではない。こんな回りくどい言い方はしないハズ。
編集長「うん、お前が適任だ。お前にしか頼めない」
――「怖い怖い! なんスか?」
編集長「ちょっと秘匿性の高い話だから、あっちで話そうか」
――「はぁあ? 怖いんですけど」
編集長「大丈夫大丈夫!」
しっかりと肩を掴まれ、フロアの隅にある会議室まで拉致された。
穴。
編集長「お前、パチスロ詳しかったよな?」
――「へ? なんスかその質問。皮肉ですか?」
編集長「皮肉じゃねーよ。システムとか好きだったろ?」
――「はあ、もちろん好きっスけど」
改めて確認するまでもない。若手ライターは分からないが、同世代以上の攻略ライターや編集部員は、言うまでもなく重度のパチスロオタクだ。システムに疎い者など1人とていない。
というか、同世代以上であれば、一般プレイヤーも当たり前にシステムに詳しい。我々が青春を過ごした頃のメディアは雑誌だけ。斬新なシステムが登場すると、雑誌はこぞって特集を組み、その仕組みを解説していた。
それを読んで育った世代なのだ。3号機以前に関してはサッパリだが、4号機以降であれば概ね理解していると言っていいハズである。
編集長「そんなお前に、いい仕事があるんだよ」
――「回りくどいなあ。なんでしょう?」
編集長「Kと一緒に、メーカーに行ってほしいんだ」
――「はあ、取材ですね?」
編集長「いや、それだったら編集部員の誰でもいいだろ?」
――「まあ、そうスけど。取材じゃないならなんです?」
編集長「まだお前が行くか分からないから詳細は伏せるけど……」
たしかに『秘匿性が高い』と言っていた。
編集長「とあるメーカーが、斬新なシステムを開発したんだそうだ」
――「ほ~、それは面白そうな話っスね」
すでに30歳を超えているが、斬新なシステムと聞けばワクワクせずにはいられない。AR・AT・ストック……と、新システムが登場するたびパチスロ市場は一変した。「またあの狂乱が起こるのでは?」と、どうしても期待してしまう。
編集長「で、依頼が来たんだ。調べにきてくれと」
――「はあ、やっぱり取材じゃないですか」
編集長「そうじゃねえ。先方が〝穴〟を探せって言うんだよ」
――「穴?」
編集長「はじめてのシステムだから、攻略法とか出たら困るだろ?」
――「なるほど! そういうことか」
重み。
ライター業をしていると、未発表の機種を打って感想を聞かせてほしいという依頼はたまにある。しかし、そのほとんどは意味がナイ。ほとんどの場合、メーカーから依頼を受けた段階で機種が完成しているからだ。
意見を言ったところで、そこから手直しするメーカーはあまりない……気がする。次機種以降に意見が反映された経験なら何度かあるが……。
しかし、今回は重みが違う。
もし穴が見つかれば、当然そのまま発売することはできない。手直しせざるを得ない。そのぶん俺らの責任も重大だが、こんな機会は滅多にない。
編集長「そんなわけで、システムに詳しいKとお前に行ってほ…」
――「行きます! それは行くわ、さすがに!!」
編集長「あれ? 原稿で忙しいとか言ってなかった?」
――「そんなもん、移動中とホテルでチョチョイっスわ!」
編集長「ふはは、チョッロ!! でも遊びじゃねーぞ?」
――「もちろん! でも、普通は社内でデバックとかするんじゃないっスか?」
編集長「当たり前だろ。デバックは一通り済んでるけど、お前らみたいなパチスロ〇〇〇〇は、どんな行動するか分からないだろ?」
――「いや、言い方!」
編集長「大卒のお利口な開発さんじゃ考えもつかないような奇行を、お前らならやるかもしれない」
――「なに期待されてんスか、俺たち」
編集長「だから実際に工場まで来て、攻略法がないか確認してくれというわけだ」
――「工場……?」
また鼓動が早くなった。この業界に入り十余年になるが、パチスロの工場に行くのは初めてだ。
編集長「2日だ。お前らには2日間カンヅメになってもらう」
――「2日間!?」
編集長「そらそうだろ? 1日打ったくらいで見つかる穴なら、先方も苦労しないわ」
――「たしかに」
編集長「あと、この仕事はマジのガチで極秘だ。編集部員にもライターにも話すな」
――「編集部員にも!? ……分かりました」
編集長「仕事から帰ってきても、見た機種の話は厳禁だ。2日目の工場を出たら、もうこの機種のことは忘れるんだ。いいな?」
――「はい」
編集長「念のため、お前がその機種の担当ライターにならないよう手は回しとく」
――「はあ……」
たしかにそれが得策だ。もしも導入後に俺が攻略法を見つけたら、『実はあのとき気付いていたのに黙っていた』と誤解を生む恐れがある。
――「諸々承知しました」
編集長「よっしゃ、じゃあ先方にはヤバいヤツら派遣するって伝えとくわ」
――「やめてくださいよ!!」
かくして、俺と先輩編集のKさんが派遣されたというわけである。
未知との遭遇。
政令指定都市からローカル線でウン十分。「ギリギリ有人です」といった雰囲気の駅からタクシーに乗ると、3分ほど走ったところで辺り一面が田園風景に変わった。我々がお世話になっているパチスロが、こんな牧歌的ともいえる環境で作られているとは驚きだ。
田園風景の中を割くように敷かれたバイパスを10分ほど走ると、ポツリと異様な雰囲気を放つ建物が見えてきた。事前に外観を調べていなかったが、直感で「ソレ」だと分かった。
宙に浮く黒い箱。
まさにそんな印象である。都心ではあまり見ないが、建物の形は地方都市の郊外にある家電量販店に似ている。1階部分が駐車場になっていて、ほかには小さな入り口があるだけ。入り口から入ると、スグに2階へ上がるエレベーターやエスカレーターがあるタイプだ。
1階部分が小さいため、少々大袈裟に言えば宙に浮いているように見えるわけである。案の定、タクシーは宙に浮く黒い箱の前に止まった。入り口に近づくと、防犯カメラの多さに気付く。予想していた通り、セキュリティーは万全のようだ。
ドアは意外にもガラスだが、おそらく強化ガラスだろう。そして、ドアの中にもガラスのドアが見え、そのさらに奥に黒光りする重厚なドアが鎮座している。万が一にも機密は漏らさない。そんな気概が伝わってくる。
K先輩「おうおう、予想通りセキュリティーえぐいな」
――「なんか近未来的な建物っスね。SFみたい」
K先輩「ヤベえ、緊張してきた」
――「俺もっス」
そう言って顔を見合わせると、K先輩は少年のようにキラキラと目を輝かせていた。口角もキュッと上がっている。きっと俺も同じ顔をしていたハズだ。
K先輩「ちょ待って! どっか喫煙所ないかな?」
――「このセキュリティーで外には無いでしょ! 行きますよ」
K先輩「待て、そもそも2日間禁煙なんじゃ……」
――「いやもう行きますよって!」
俺は緊張と興奮をかき消すよう、力強くインターフォンのボタンを押した。
つづく
※メーカー関係者の方へ
本エピソードにおいて、メーカー名・機種名・システム内容を明かすことはございません。
また、工場内の描写につきましても、機密事項やセキュリティーに関する漏洩が無いよう最大限配慮いたします。守秘義務は遵守いたしますので、見守っていただけますと幸いです。
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- ラッシー
- 代表作:パチスロワイルドサイド -脇役という生き方-
山形県出身。アルバイトでCSのパチンコ・パチスロ番組スタッフを経験し、その後、パチスロ攻略誌編集部へ。2年半ほど編集部員としての下積みを経て、23歳でライターに転身。現在は「パチスロ必勝本&DX」や「パチスロ極&Z」を中心に執筆。DVD・CS番組・無料動画などに出演しつつ、動画のディレクションや編集も担当。好きなパチスロはハナビシリーズ・ドンちゃんシリーズ、他多数。
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