パチスロライターに“なってしまって”episode.26（東日本大震災）

佐々木真パチスロ攻略ライターの思考ルーチン

2011年の年明けは、パチスロに衝撃が走りました。導入されたばかりの『サクラ大戦3』に攻略法があるというもの。BIG中にレア小役をわざと取りこぼして、ARTの権利を得られる抽選機会を増やすとかどうとか。いや、もっと凄い手法とかあったのかもしれませんが、詳しくは知りません。

▲ハーレムエース2（ネット：2011年1月）・シスタークエスト2 ～魔剣の騎士と白銀の巫女～（SNKプレイモア：2011年1月）

というのも、同日にノーマルタイプの『ハーレムエース2』と『シスタークエスト2』が導入開始となっていたのです。私の好み的にそちらを打つので忙しいではありませんか。おまけに『ハーレムエース2』は、携帯連動で123Ptを獲得すると先着でCDが貰えるキャンペーンをやっていまして。一般のユーザーさんに混じって参加していただきましたとも。一時、ランカーで名前が出ていました（笑）。

届いたものを開けたら、取材の時に貰ったCDと同じでしたが。いやでも、123キャンペーンのシールが貼ってあって、役得ではなく自力でちゃんといただけたと、喜びが一入でしたね。なので『ハーレムエース2』を打つのが忙しくて、『サクラ大戦3』まで手が回らなかったのです。

攻略法といっても大したことはなかったように思えました。設定1でも利益が取れない程度のもの。出玉率100%程度です。大昔の『ビーナスライン』（4号機時代）は設定1でも変則押しを駆使すれば140%。順押し小役狙いだけでも108%だったっけかな。それや、3号機以前の大当り直撃と比べれば生温い。なんなら『ひぐらしのなく頃に祭』のほうが出玉率は上です。目押しを失敗するから利益が出るだけで。

それなのに補償問題に発展しました。代替機（3月の『装甲騎兵ボトムズ』）と無償交換。1月中は1台につき1日3000円の営業補填だっけかな。時代の流れを感じました。これくらいで大騒ぎになるの？って。

解せなかったのは、インターネットでホールの利益に繋がらない機種を売ってしまったメーカーに対して厳しい論調が多かったこと。ユーザーからしてみれば、より遊べる機種にしようとして、ちょっと計算が狂って甘くなってしまっただけの話ではないですか。怒って大きな声を出して、補償問題に発展させてしまうことで、メーカーは遊びやすいスペック＆実験的なスペックを作りにくくなってしまいます。ユーザーの立場としては、自分で自分の首を絞めるようなことだと思いました。

というか、私がパチスロを打って生活する現役を終えたのがこの時だったのかもしれません。雑誌の仕事をしだしてから、とっくに引退をしていたように感じられるかもしれませんが。仕事がなくなっても昔に戻るだけのことと思っていました。なんやかやピンでやっていく自信もありましたし、それ相応の情報も集めていました。『ハーレムエース2』だって、少しでも設定を見込めるように、都内で4台以上設置されていたホールはすべて把握していましたよ。

所詮、パチンコホールなんてグレーな存在だと思っていました。私がパチスロを覚えた2号機や3号機の頃は、ユーザーにも「どうにかホールを出し抜いて勝ってやろう」という気概がありました。裏モノと分かれば、それなりの攻略法だったり勝ち方があると観察できます。そのため、どれが合法でどれが違法なのか、それを知るために遊技機規則を勉強してきたつもりです。すべては、ホールを出し抜くためです。

昔のホールは豪快というか、適当でした。良くも悪くも。攻略法で抜かれた機種も「見せ玉効果になった」くらいに笑っていました。だからこそ付け入る隙もあると思えたのですが……。それが何よ。ちょっと利益が出ないくらいで補償問題？客には勝負を強いるくせに自分達は勝負しないのかと。

利益が出ない台を掴ませられるのも実力なんです。自分でスペックを把握していないのに、ホイホイ買うのがいけないんです。小役ナビなどでよく分からない？そういう方向に誘導したのは誰なのか。そのよく分からないものをユーザーに勝負させているのはホールでしょ？

それなのに補償問題に発展させ、絶対に負け戦をしないのが当たり前なのは違うな……と。少なくとも私が知っている大昔のホールとは。ここらで気持ちが折れたと言いますか、勝つことに冷めたと申しますか。勝つことよりも、楽しむため知識を使う方向によりシフトしていった気がします。

★東日本大震災。

2011年の上半期は密かにノーマル天国でした。『ハーレムエース2』と『シスタークエスト2』前述の2機種だけではなく、2月には巨人の星のスピンオフ作品である『頑固一徹』が導入。3月にはボーナス確率が超軽い『ぼのぼの～スウィートver.～』も登場します。そして、あの日がやってきます。その前日の3月10日は、ぼのぼのを打ったっけ。

東日本大地震。その日、私は朝まで原稿を書いていて家におりました。寝ていました。「こんな時に限って、なぜホールにいなかったんだろう」という気持ちがなかったといえば嘘になります。電車は動かず、エコな自転車移動などが推奨されていました。翌日以降、自転車で向かったのは繁華街にあるホールでした。

電車は動いていないのに、住んでいる人口も少ない街なのに、開いているホールは満席でした。不謹慎とは違います。打っている人の表情が冴えないのです。きっと彼らは衝撃的な映像を見ないで済むためにここに来ているんだろう。

パチスロ関係の仕事はストップしました。当日の朝まで書いていた原稿もパーです。「こんな時に」という不謹慎狩りには持ってこいのジャンルです。当時はブログが全盛期で多くのライターが開設していました。その彼らの書き込みは3月11日を境に大きく変わります。避難所の情報であったり、計画停電の情報であったり。誰もパチスロの話を書かないようになっていました。

この当時から私は座学方向で。打つことに左右されないネタばかりを書いていました。他のライターさんよりは書きやすい方向です。なので、周りからの書けよという圧はまあまあありましたね（笑）。実際、パチスロ関係の話題を再開させたのはかなり早いほうでした。

しかし、仕事はストップしたままです。3月一杯は何もせずに、日々心を痛める映像を見ていたでしょうか。ホールも見てはいましたけどね。店休して社員さんが正面玄関で義援金を募っていたところとか。電力の関係で18時までといった都遊協の申し合わせを無視して、それ以降の時間も営業を続けるホールもありました。たまたまリニューアルを予定していて、その店休から営業再開できなくなってしまったホールも。

いや、3月だけではないんですよ。部品の調達や流通も難しくなって、新機種発表会は軒並み延期。震災後に初めて発表会に行ったのは4月の終わり頃だったような気がします。

▲ハネスロリラックマ（オーイズミ：2011年5月）・エイリヤンビギンズ（サミー：2011年5月）

確か最初は『ハネスロリラックマ』だったような気がします。設定1でもボーナス確率が1/100を切る超遊びやすいタイプ。パチ7の5号機差枚王決定戦で選んだように安定感は抜群。ボーナス確率の高さもあって、実は演出が抜群に面白いのです。どの演出からも当たりますし、どの演出からもハズれます。目が離せません。

2011年の上半期といえば『エイリヤンビギンズ』も登場しました。ご時世柄、消費電力の少なさをアピールするカタログだったような。ただ、このノーマル天国もここまで。アクロス系のヒットまでノーマル機は冬の時代を迎えることになります。

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佐々木真: 代表作：パチスロ攻略ライターの思考ルーチン

裏モノ全盛期に“ギャンブル”としてパチスロを始めたが、技術介入機時代に最適手順を模索するなど“遊技”としての魅力にはまり、履歴書に大きな穴をあけてしまう。2000年よりパチスロ雑誌などで編集兼ライターの活動を開始。現在は、ほぼすべての機種の発表会や取材に参加。法律・規則などの知識をもとに、根幹システムの推測をライフワークとしている。