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パチ7虎の穴
2024.10.08
【ロマンティックパチンカー】No.1 The Second SLAM DUNK
空の青さを疎ましく感じるのは、きっと心が病んでいるからなのだろう。
ここのところ、胸に不安がこびりついて離れない。その原因が、財布の一万円札にあることは、なんとなくわかっている。
子供を授かってから、まるでそれが義務であるかのように毎日通っていたパチンコ屋から足が遠のき、金を無駄に浪費することもなくなり、財布には一万円札があれば充分、という慎ましい暮らしを送ってきた。
しかしながら、近年かつて経験したことのないペースで物価は上昇を続けている。コロナやウクライナ侵攻、気温上昇による農作物の不作によるところが原因とあれば、それもまた仕方ないということは、充分に理解しているつもりだ。
それでも、と思う。
一万円札を持っていても心細さを感じるような現状に、俺はやり場のない歯痒さを感じるのだ。
かつて、俺の中で一万円札は無敵だった。
初めて一万円札を手に入れたときのことを、今でも鮮明に覚えている。
早生まれのため同級生よりも少し遅く10歳になったその年の正月、今は亡き祖父からもらったお年玉のポチ袋に、丁寧に折り畳まれた新札の一万円札が入っていた。
「お前ももう、半分大人だからな」
そう言ってニヤリと笑った祖父は、輝いて見えた。世界で一番かっこいい大人だと思った。
そして、こんなチャンスは二度とない、そう感じた俺は、和気藹々としている親戚の集まりを一人抜け出し、イトーヨーカドーのおもちゃ売り場へと向かった。狙いは、当時大人気だった聖闘士星矢の黄金聖闘士のプラモデルだった。確か、一体600円だったと記憶している(双子座と天秤座だけ若干高かった)。
我が家は子供に金を与えることを良しとしない教育方針だったため、その頃1週間の小遣いは50円だった。キン消しのガチャガチャをやるにも2週間の我慢を強いられる暮らしを送っていた俺にとって、黄金聖闘士など夢のまた夢の存在だった。
ここだ!ここで決めるんだ!
キャプテン翼の松山君の決め言葉が、脳に響き渡った。
俺は、迷わず黄金聖闘士のプラモを12体抱え、レジへと向かった。
帰宅すると、玄関には仁王立ちした母親がおり、「バカ!!無駄遣いして!!」と、全力のビンタを食らった。首がもげるかと思った。
それでも俺は、その痛みと引き換えに、黄金聖闘士をコンプリートすることができたのだった。そして、思った。一万円札があれば、夢は叶うんだ。
翌年からお年玉はもらった瞬間親が回収する、というシステムが確立し、俺が再び一万円札を手にするのはだいぶ先になるのだが、その間も欲しいものは増え続け、一万円札への想いは募るばかりだった。
「ああ!今この手に一万円札があれば!!」
何度、そう思ったことだろう。
それ故か、俺の一万円札に対する憧れは、常人の3倍程度にまで膨れ上がっていった。
そんな、無敵だったはずの一万円札が、危機に瀕している。
なんとか一万円札の窮地を救わねば、そう思った俺は、立ち上がった。
灯台下暗し、とはよく言ったものだ。
時代とともにあらゆる物価が上昇を続けている中、まるでそこだけが時間に置き去りにされているような場所が、身近にあった。
調べたところによると、パチンコ屋における「貸玉料金1玉4円」というのは、1978年から変わっていないそうだ。
1983年に開業したディズニーランドのパスポートが倍以上の値段になったにも関わらず、である。
もしかしたら、パチンコ屋こそが真の夢の国なのかもしれない。そう思った俺は、その事実を確認すべく、7年ぶりに戦いに出る決意を固めた。
熟考を重ねた結果、実戦する台は「ニュートキオハカマタイプ」とした。
ハネモノで勝負、決して日和ったわけではない。
かつて俺は、日本一といったらさすがに言い過ぎだが、市内一というくらいにトキオデラックスを打ち込んでいた。
現在ホールにデラックスはないが、後継機の「ニュートキオハカマタイプ」ならば、設置があるようだ。
台の画像を確認したが、役物はほとんど変わっていない。これならば、ブランクのある俺でも経験をもとに戦える、そう判断したのだ。
その後、妻に交渉し「どうしても一万円札にかつての輝きを取り戻して欲しいのだ」と、血走った目で訴えると、渋々と言った感じではあるが、「まあ、一万円ならいいよ」と、許しを得ることができた。
決戦の日、俺はあえて洗い物中の妻に声をかけた。
「それじゃ、行ってくるから一万円くれよ」
「財布に入ってるから持っていって」
俺はニヤリと笑った。
狙い通りだ。
もちろん一万円以上使う気はなかったのだが、念のため、本当に念のため「大は小を兼ねると言うしな」と一人呟き、三枚の一万円札を抜き取きとり、財布に収めた。
電車を乗り継ぎ辿り着いたその店には、ニュートキオが6台と、自宅から30キロ圏内で最も多くの設置があることを、あらかじめピーワールドで確認してあった。
設置が多いほど、良い台に期待できるというものだ。
早めに家を出て、開店と同時に入店した俺は、少しでも神のご加護を得ようとお経を呟きながらトキオのシマへ向かい、端台をキープした。
千円ずつカニ歩き、一番優秀な台に残金を全てぶち込もう、そう思った直後、次々と猛者たちが着席し、あっという間にトキオのシマは満席となった。
朝からトキオを狙うなど、マジのプロか、俺のような熱心なトキオファンしかいないはずだ。
まさかこの店、優良店なのか…?
俄然興奮してきた俺は、震えながらサンドに一万円札をぶちこんだ。
ここで、トキオマスターとして「ハネモノは液晶がなくて退屈」という方に、トキオシリーズの楽しみ方をお伝えしたいと思う。
確かにトキオには、保留変化も疑似連もストーリーリーチもない。
だがトキオを極めると、心を無にし、玉の流れを眺めているだけで、その動きから無限のストーリーを紡ぎ出すことができるようになるのだ。
ある時は関ヶ原の戦いが浮かび上がるし、ある時は広大な宇宙戦争が展開されるだろう。
その日、最初の羽根の開放で、これはちょっと無理かな…そんな場所にあった玉が羽根の先端に拾われ、役物へと到達した。
これは幸先がいい。
微笑みながら打ち続けていると、その後5回の開放全てで、羽根は懸命に玉を拾った。
その動きを見て、俺は思わず呟いた。
「リバウンド王、桜木…」
そう、その日のトキオの動きはかの名作「スラムダンク」そのものだった。
ハカマ釘をくぐり抜けスルーパスを供給する宮城リョータ、ノーマルルートからの素早い動きは流川のカットインを彷彿とさせ、SPルートからVを狙うのは、精密機械と言われた三井のスリーポイントだ。
そして、桜木がリバウンドを取り続けた結果、わずか1K、12回目の開放で、電光石火のような流川のカットインが鮮やかに決まり、最初の大当たりを仕留めた。
トキオデラックスでは、ノーマルルートからの当たりが非常に重要だった。
おそらくニュートキオでも同様だろう。
次の当たりも早めに流川が決め、その後しばらくはまったが、桜木の活躍により追加投資は少なめに抑えることができた。
もしや、この台が当たりなのか?
そう思い周りを見渡すと、いつの間にか満席だったはずのトキオのシマからは人が消えており、残されたのは俺と、好きな食べ物を聞いたら「生肉」と答えそうなワイルドなルックスの男性だけだった。
ハネモノは釘と寝かせが命なので、他のプロたちはそうそうに見切りをつけたのだろう。
全台が回収調整とは考えにくい。
当たりは俺か、それとも奴か…。
負けねえぞ。
心の中でその男性に「生ちゃん」とあだ名をつけた俺は、力強くハンドルを握った。
その後、大当たりには結びつかずとも、流川は鋭いドライブを何度も仕掛けたし、桜木はリバウンドをむしり取り続けた。
しかし、投資は抑えられているものの、当たりが3Rと5Rばかりでは一向に出玉 は増えず、カードの残金は500円となった。
ここで、迷いが生じた。
トキオに限らず、ハネモノの注意点を述べると、残りの500円を打ち込むのは、絶対にやめておいたほうがいい。何故ならば、ハネモノという機種は、最後の一玉が不思議と落としに入りやすいのだ(経験上)。
そして、返し玉が払い出され慌てて打ち出すも時すでに遅し、羽根はとうに開放を終えている。ムキになって新たな札をサンドに突っ込むが、その後はうんともすんとも言わず、結果傷口を広げるだけ、という経験をしたことのある方が、俺以外にも多数おられるはずだ。
しょうがねえ、やめるか…。そう思い、席を立とうとした、その瞬間だった。
「諦めたら、そこで試合終了ですよ」
幻聴かもしれないが、俺の耳はニュートキオの囁きを、確かに捉えていた。
そうだよな。
この台の落としと羽根は、抜群にいい。
体感的に、スロットで言うならば設定8はあるだろう。
ラウンドの振り分け確率が収束すれば、大勝ちは間違いない。
ここでやめるのは、愚の骨頂といえよう。
もはや一万円札を輝かせたいとか言ってる場合じゃねえ。
俺は力強く、貸玉ボタンを押した。
その後もラウンド振り分けには負け続けたが、俺の意思はダイヤモンドよりも硬く、闘志は熱く燃え続けた。
そんな俺の想いに呼応するように、ついに確率は収束を始めて、3連続で10ラウンドをゲットし、出玉も2500発をこえた。予想通りだ。やはり、この台はいい。
しかし、好事魔多しとはよく言ったもので、勝負を決めにかかった俺に、またしても試練が襲いかかってきた。
前半あれだけ決まっていた宮城のスルーパスが、ことごとくカットされるのだ。
「ゾーンプレスか…山王も勝負をかけてきたな」
ここで心が折れるようならば、それは素人だ。
これまでの人生で得たトキオの経験値が、俺の背中を押す。
こんな展開、何度も喰らってきたじゃないか。
このはまりを乗り越えた先にある甘美な勝利こそ、俺が求めるものなのだ。
くじけそうな自分に激しく鞭を入れハンドルを握りつづけるも、「台の中に透明な妖精がいて、気付かないように0コンマ数ミリずつ釘を叩いているのではなかろうか」と、サイコ系の妄想をしてしまうほどスルーパスは通らなくなり、もしや桜木は負傷しているのか、と心配になるくらい、羽根の拾いも悪くなってきた。
まさに、山王戦そのものの展開が、ニュートキオハカマタイプで繰り広げられていた。
そして、出玉が呑まれ、総投資が19.5Kといよいよ追い込まれた時のことだった。
さすがに逆転は不可能か。
諦めかけた視線の先で、この試合最高のスルーパスが、糸を引くようにセンターチャッカーへと吸い込まれていった。
最後のチャンスだ。
そこで、俺は確かに見た。
1回目の開放で何も出来ずに立ち尽くしていた桜木の後方から、赤木キャプテンが駆けつけてきたのを…。
そして、運命を左右する2回目の開放の瞬間が訪れた。
「フン!!」
バシッ
ここで、まさかのハエ叩きが炸裂だ。
羽根に弾かれた玉があさっての方向に飛んでいく姿を見て、俺はこの試合の幕を下ろすことに決めた。
以下、実戦データである。
総開放数 825回
大当たり回数 19回
内訳 3R 6回 5R 6回 10R 7回
投資 19.5K
確率は、見事に収束した。それどころか、一回10Rが多いにも関わらず、このザマだ。
ぐうの音も出ないくらいの、負け試合である。
わずかに残された上皿の玉をカウンターに持ち込み「おやつカルパス」と交換した俺は、帰り際に生ちゃんの様子を確認した。データを見る限り、俺以上に負けていた。
プロかと思ってすっかり騙されたが、生ちゃんも俺と同様に、ただの熱心なトキオファンだったようだ。
今日は、全台回収か…。
完全なるトドメをさされ、俺は店を後にした。
結局、一万円札を輝かせることはできなかった。
時の流れは、何もかもを変えてしまったのだ。
戻らないあの頃に想いを馳せ、涙を流しそうになっていた俺を救ったのは、カードに入っていた残金500円で購入した麒麟特製という名の、きつめのチューハイだった。
おやつカルパスをかじりながら、これを2本一気呑みするとほどよく酔い、帰宅する頃には2万円を失ったことなどすっかり忘れ、いい気分になっていた。
最高の試合だったなあ。
上機嫌で玄関のドアを開けると、そこには勝手に3万円を持ち出され、修羅と化した妻が、仁王立ちで俺を待ち構えていた。
ああ…俺だけはあの頃と何一つ変わってねえんだなあ…。
そう思った俺は、若干自分に呆れ、その後少し笑った。
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- ダスト
- 代表作:ロマンティックパチンカー
ルパンでパチンコを覚え、アステカでパチスロを覚え、ミリオンゴッドでギャンブルを覚えました。子供が生まれた時に一旦現役から退きましたが、先日7年ぶりにパチンコ屋に行き、再び悪い心に火がつきました。リハビリ感覚で、ハネモノ、遊パチから始めようと思います。
プレイスタイルはロマン打ち、愛があれば確率なんて超越できると信じています。嫌いな言葉は下ブレです。
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その言葉、すごい名言だと思うのですが
負けたことしかない私にはどれほどの財産が溜まっているのだろうか、と震えてしまいますw
そのシーン、ぜひ使おうと思っていたのですが使いどころがなかったですw
てゆーかまじで名機ですよ、あれ
読んで頂いてありがとうございます!
抑えめにいいましたが、ホントは設定10はあるな、と思っていました
30000発は出る予定だったのですが…
アルデバランの首をもぎとってシャカの胴体にくっつけて辱めてやったり、たっぷり一年くらいは楽しめたのでいい買い物でした笑
と奥様に願うシーンが浮かびました
まる
そして修羅となった奥様から首がもげるくらいのビンタを、2万円だったら修羅にはならなかったかもしれなかったかもしれない
いつも嬉しいコメント頂き、本当に感謝しております!
お返しといっては何ですが、14日の府中牝馬ステークスでマスクトディーヴァって馬が出るんですが、現役で唯一この僕に勝ち金をくれているとだけ言っておきます…
「じゃあ使った一万円は消えたのか?」
というところかと思います。
多くを手放し、多くを手にした
そゆなダストさんを育て、築き上げたのは、紛れもなく散って行った彼らだったのではないか、
そんな風に思わされました。
ゴリがまさか違うチームのプレイヤーだったとはね。予想外デス。