SENZIN伝：第1話「リングのSENZIN」

タイルまん SENZIN伝

4月某日。

編集長とカタギリさんと秋葉原で打ち合わせ後のお話。

編集長と別れ、カタギリさんと打ちに行く事になった。

どうやら都内で人間まおさんがホル調しているらしい。

カタギリ「どうする？行く？」

俺「ホル調って行った事ないんで行きたいです！」

ホル調しているホールに着き、スロットコーナーを見回すと…いた。

漫才コンビの銀シ○リよろしくの青いブレザーに肩に怪しいぬいぐるみを乗せたブリーフマスク…。

なんだろうか…ぬいぐるみが怪しいのでは無いな。

あの人物が怪しいんだな。
街歩いてたらポリスに事情聴取される程の怪しさ。

改めて冷静にちゃんと見ると…ダサいですね。

人間まおさんがダサいんじゃなくて、あの姿をしたら誰でもダサくなれる。

お洒落も糞もない。

とりあえず人間まおさんに挨拶する。

因みに人間まおさんには1度お会いしている。

同じ人間か？と嫌悪感に陥る位の美人だった。

こんな美人がパチンコするのか…。

それよりこんな美人が良い意味で狂った漫画描いてるのか…。

何が彼女をそうさせてしまったのか…。

そんな第一印象でした。

挨拶もした所でカタギリさんと別行動を取り、台の物色。

パチスロウルトラマン…1度も当てた事ないし…これでいいや。

回し始めると隣でリングを打っていた先人(高齢者)が話しかけてきた。

ジャイアンツの帽子を被り、
萎びた大根の様な顔がしわくちゃで華奢な体の推定年齢70歳前半の男性。

先人「お兄ちゃん…それ…打つの…？」

俺「えぇ…まぁ…」

先「僕それさっきまで打ってたんだよぉ！！」

喋り方の緩急が凄い！

俺「そうなんですか（笑）」

先「すぐね…当たったの…でもね…」

先人は手垢がベッタリついている、やり尽くされた幽霊のジェスチャーで、

先「こればっかりぃ！！」

こえーよ！
この人よくある怖い話のオチの「お前だぁ！！」ばりの緩急使ってくるんだけど！

そのジェスチャーはバケ(レギュラーボーナス)と分かってるけどさ…

俺「これですか？」

俺は知りつつ先人の座っているリングの役モノを指さした。

先人は俺の指さした先にある役モノをジーッと見てから俺に向き直り

先「…違うよぉ！！」

分かってるよ！
俺が悪かったって！だからその緩急やめてくれ！！

しかし…バケって単語知ってるんだからこの先人はパチスロが好きなんだろうなぁ。

先人達はリングとかシステムがよく分からんから座らないってイメージあるけど、

これも俺の固定観念なんだろうな。

そう思いながらウルトラマンを中押しで楽しんでいると、

いきなり先人が俺の肩を鷲掴みして揺らしてきた。

俺は驚いて先人の方を見ると

先「ねぇ…これ…」

先人は自分が打っていたリングを指さしている。

画面はペンションステージ。
高確に期待が持てるステージだ。

先「＊€%♪#¥○？」

俺「はい？」

声が小さくて全く聞き取れない…。

先「…ってるの？」

俺「え？」

先「これ当たってるのぉ！！？」

いや自分の声のボリューム機能が馬鹿かよ！
0か100しか無いじゃん！ 100でこられる度に俺ビクッてしてるから！

俺「まだ当たってませんよ？ちょっと当たりに近いステージですかね」

そう伝えると先人は心なしかシュンとしてしまった。

あれ？俺が悪いのか？当たってますなんて嘘つけねーし…。

そこはちゃんと教えなきゃいけないだろ。でも…なんか俺がイジメた感じになってるよな。
よく分からない罪悪感で胸いっぱいになった。

ウルトラマンも全然だなぁ…と、思い隣のまつりば！に移動した。

打ち始めてすぐにチャンスゾーン。

よしよし…ここは集中ですよ…。などと考えながら打っていると

先「お兄ちゃん！お兄ちゃん！」

リング、ウルトラマン、まつりば！という並びだったのだが
１つ間が空いてる俺に先程の先人がわざわざ声を掛けてきた。

すっかりこの先人に取り憑か…懐かれてしまったらしい。

俺「はい？」

先「これ！これ！」

画面は亡魂ZONE。自力チャンスゾーンだ。

俺「おぉ！あと少しで…ん？」

何故…一生懸命…貞子の手をさすってるのだろうか？
別にその貞子の血色の悪い手は寒いからじゃないですよ？

俺「…。」

先「…れば……るの？」

俺「え？」

先「どこ触れば当たるのぉ！！？」

俺「どこ触っても意味ないですよ！！」

先「え…？」

ヤバい！勢いよく言われたから同じ勢いで返答しちゃった！
泣かないで！お願い！

俺「いや…タッチセンサー機能無いので…
とりあえず小役揃えればチャンスですから！頑張って！」

数分後…。俺はボーナスを引いた。あー…でもバケか。

しかし…ここで押し順正解しまくればいい話だろ？やったるでぇ！！

先「駄目だったよぉ！！」

いきなり先人に後ろから泣きつかれた。
いや…俺今とっても大事な所なんだけど…え？なに？亡魂が駄目だったの？

俺「まぁまぁ…仕方ないですって」

先「お兄ちゃん…ありがとう…」

感謝された。
じゃあ俺は押し順に集中しま…

先「あの台お兄ちゃんにあげるよぉ！！」

そう言って自分の打っていたリングを俺に譲ってくれようとした。
違う違う！今俺ボーナス中！貰えないから！でも念の為にその譲ってくれるらしいデータを確認した。

ボーナス2回とも天井近くで当たりAT無し。
只今440ゲーム程。

いらねーわ！！謝礼になってないよ！！

そんなの打ったら俺天井まで止めれないじゃん！

先「貰ってよぉ！！」

顔が近いよ！何その押し売り！

俺「いや…ちょっとぉ…俺今ボーナス中だし…」

先「終わるまでいるからぁ！！」

困るよ！心を掻き乱され…押し順正解出来ず通常に戻った。
リングに待機する先人…。どうしよう…。

携帯を見ると…カタギリさんから着信きてた。
ナイスカタギリ！

俺「すみません！知り合いから連絡あったので貰えないです！」

先人はジャイアンツ帽を被り直し

先「それじゃ！」

そう言って何処かへ行ってしまった。え？すげーアッサリしてんだけど…。
私、失恋した気分です。

立つ鳥跡を濁さず…いや…先人跡を濁さず。
カタギリさんや人間まおさんとご飯を食べてホールに戻りフラフラしてるとドン！グイッ！！

後ろから思いっきり右腕を引っ張られた。
咄嗟に引っ張られた方向を見ると先程の先人だ…。

先「お願いぃ！！」

めっちゃ顔近いしお願いの理解が出来ない…。
困惑する俺を先人は引っ張って自分の打っているであろう偽物語の前に連れて来られ、

先「揃えてぇ！！」

相変わらず声量が凄いな！

それより俺の手引っ張って離さないよ。そして密着が半端ない！
ボーナスを揃えてあげると、

先「はい、ありがとう」

アッサリしてる！
そこはアッサリしてるんだよね！とにかく緩急が凄い！

帰り際に偽物語の島に行くとそこには先人の姿はなかった。

パチスロリングを打っている先人と話ししている時にも頭をよぎった疑問。

俺らは雑誌やサイトで機種情報を取得している。

大抵はどんな機種でどんなシステムかはおおよそで理解出来ている。

ここ数年の機種はパチンコもパチスロも昔と比べたら複雑な所が多いと思う。
例えばパチンコは潜伏などだ。

パチスロに関してもモードを理解してなければ泣きをみる事になる。

先人達は…本当に理解出来てるのかな？
きっと楽しそうと思ってるけど分からないから打てないってなってる人達も沢山いるんじゃないのか…。

先人達はどんな理由で機種選びをして打つ台を決めるのか？
俺達とは違う光景を見てるはず。

今日出会った先人はリングと偽物語打ってたけど…どう見えて何故それを打とうとしたんだろうな…。
ボーナスを揃えれないし、システムを理解出来ていなかった緩急の凄い先人が打っていた偽物語。
こいつを遠目に見ながら俺は先人の生態に興味を持ち始めた。

今となればもう緩急の凄い先人はいないので話は聞けない。
少し淋しい気持ちにはなったが…これもまた一期一会。

しかしなにより淋しかったのは…俺の財布の中身でした。

俺の財布の中身も緩急が凄い！

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この記事へのコメント（16 件）

タイルまん: 投稿日：2016/10/11; 銀チャさん
それは悪い緩急ですね…
牙狼の液晶あたりにハンコを押すんですね？(笑)

銀チャ: 投稿日：2016/10/11; 緩急かぁ…

当たってウハウハイケイケな時は元気いっぱいな人が、だんだん飲まれるにつれて口数も減り、遂には無言になり…

牙狼ﾊﾝ…

【ピンポーン】

おっと、誰か来たようだ…

タイルまん: 投稿日：2016/10/08; ひろ@養分さん
リングは何か引っ張ってくるのかな…やっぱり貞子の血色悪い手が心配だから撫でに来ちゃうのかな？

ひろ@: 投稿日：2016/10/08; ちなみにうちのリングも先人達に人気です。

タイルまん: 投稿日：2016/10/07; 鷹ふぁんとむさん
未だに缶コーヒー奢ってくれる人がいるのは嬉しいですね！鷹さんもなかなかの先人ニストです！俺なんかカタギリさんに呼ばれて昼休憩行っちゃいましたもん(笑)
いつも行ってるホールで急に見かけなくなると少し心配なるのも分かります…。

鷹ふぁんとむ: 投稿日：2016/10/07; おじいちゃん面白ろ可愛いな感じ(笑)

SENZIN読んでると、今年の始めに目押しをしてもらうために、わざわざ僕の隣で打ってたおじいちゃん思い出したよ。何の躊躇いもなくAT・ART機打ってたｗ。メッチャ缶コーヒー奢ってくれたんだけど、おじいちゃん独りにすると目押しが出来ないから、スゲェ昼休憩行きづらかったのを思い出した。

そういえば最近見かけてないんだけど、三途の川を渡ってなければいいなぁ…