あのときオレはクズだった　第30回　~第2部ガイド編~

田中（クズプロ田中→クズ田中→田中）あのときオレはクズだった~田中の回胴回顧録~

　

伝説の機種がぶっ壊れた、その先に見た景色とはいったい……

　放浪癖のあるヒゲ園長のおかげで機種ページの原稿仕事がコンスタントに入ってくるようになり、仕事は順調そのもの。流れのいい時というのはあるもので、なんと、それから数ヶ月もしないうちにパチスロ必勝ガイドにおける人気企画、91時間バトルへ出場することになるなど、仕事がもっとも楽しいと思っていたのがこの時代だった。そして、そんなときにパチスロの歴史を塗り替えた、あの機種が登場したのである。

　北斗の拳。

　過去の販売記録をあっさりと上回る62万台という記録を達成した、伝説のパチスロ。2003年の10月に登場したこの機種のデータ取りへ行くことになった。

　話題の機種ということで当日はガイドスタッフが都内に散り、いろんな店舗でデータ取りを行ったのだが、自分はキムさんこと木村魚拓さんとともに新宿の某店で打つことになった。正直、このときは一切の数値や解析結果が出ていなかったので、予備知識もほとんどないまま打ち始めることになったのだった。

　はじめてのバトルボーナスは白オーラで2連。そのつぎが黄色オーラで3連。出ては飲まれて、飲まれては出て。そんな感じで夕方前までダラダラやっていたのだけど、赤7揃いで初めて赤オーラが出たそのバトルボーナスが終わらないのである。

　5連を越えて10連を越えて、愛を取り戻せにBGMが変化しても、まだ終わらない。それどころか20連、30連と続いて、あっという間に出玉が5000枚を超えた。えーと、連チャンの仕組みもよくわかんないし、なんか怖くなってきたんですけど。

　思わず外に飛び出して、編集部に電話をかけてこう言った。

　すみません、台が壊れたんですけど、どうしたらいいですか？

　結局、そのバトルボーナスは67連まで続いて、出玉は一撃で万枚オーバー。都合20数万円も勝ったわけだが、勝ちの金額云々を抜きにして、この台の面白さは別格だと感じた。各チャンス役の絶妙な期待感に前兆ゲーム中の煽り方。ステージ移行をはじめとする各法則や出玉に対する期待感と、非常にバランスが取れていてマイナスポイントが見当たらない。こりゃ、スゴい台が出ましたね。すでにクソ負けして後ろで見ていた木村さんにそう言おうと振り返ったら、そこにはバイソン松本とひやまっちの姿があった。

　もう気づかれたか……。

　一緒にデータ取りをしたあとに晩メシを食うことはよくあるが、当時はデータ取りで大勝した人間がその日のメシ代を払うというのが一種の通例となっていた。そもそも自分が勝った台は朝イチに木村さんに譲ってもらった台だし、もちろん木村さんとのメシは自分が払うつもりだったのだけど、万枚情報をどこからか嗅ぎ付けたハイエナたちが、別の地域での実戦を終えて集まってきたというわけである。

　まあいい、これだけ勝ったんだからメシ代くらい出しますよ。肉ですか？　肉を焼けばいいんですか？　そう問いかけたら、こんな答えが返ってきた。

　いや、とりあえずメシはそのへんの普通の居酒屋でいいんじゃない。

　とりあえずという言葉に引っかかりながらも居酒屋に行き、北斗の話で盛り上がりながら酒をかっくらう。これぞデータ取りの醍醐味というのを味わっていた。いやー、ガイドスタッフになってよかった。あらためてそんなことを噛みしめていたら、木村さんが立ち上がってこういった。

　よし、そろそろ行くか。

　行ったその先は、歌舞伎町でもっとも有名なセクキャバ。ひらたく言うと、おっぱいパブだった。え～と、ここの支払いは誰が……。

　ごちそうさまでーす。

　ガイドスタッフになんてなるんじゃなかったと、そう思った。

　とはいえ、こうやってスタッフ歴や年齢を抜きにして一緒に仲間として遊べるのは、とにかく楽しい。仕様もわからない北斗の20万なんてあぶく銭だし、まあいいや。今日はとことんいきましょうよ。ねえ、木村さん。そう言って左を見たら、1メートルも離れていない距離で木村さんは上半身裸の女の子を膝の上に乗せ、その娘の髪の毛を執拗になでながら、｢可愛いね～、可愛いね～｣と、自分にもぎりぎり聞こえるくらいのボリュームで、猫のような甘えた声を出していた。

　正直、気持ち悪かった。

　そして居酒屋のお金と合せて14万円を支払って、この日の夜会はお開きになったわけだけど、忘れられないのである。14万失ったのは翌日には忘れてしまったけれど、11年半が経ったいまでも、あのときの木村さんの姿が、いまだに忘れられないのである。

あのとき打っていた「北斗の拳」

【メーカー】サミー　【販売年月日】2003年10月　【タイプ】Cタイプ
2003年の10月に発売された、歴代ナンバー1の62万台という導入を誇るモンスターマシン。バトルボーナスという小さなボーナスが警戒に連チャンするさま、また、バトルボーナス中におけるケンシロウとラオウの闘いにおけるハラハラ感がプレイヤーの心を釘づけにして、圧倒的な人気を誇った。高継続率確定の北斗揃いなのに、いきなりラオウが剛掌波を繰り出したあのときの絶望感。そしてケーンで復活したときの安堵感。いやー、あんだけ売れたのも納得です。

（C）武論尊・原哲夫（C）Sammy

クズの成績表：★★★★★（木村氏に捧ぐ）

遂に木村魚拓氏が登場しましたね。このお方が登場した時点で★×5は確定です。

直接お会いしたのは一度だけですが、「可愛いねー、可愛いねー」の姿は容易に目に浮かびます。むしろ、似合ってます。

14万円でそれが見れたんなら儲けもんですよ。

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田中（クズプロ田中→クズ田中→田中）: 代表作：あのときオレはクズだった~田中の回胴回顧録~

パチスロ好きが高じて21歳の時にパチスロ必勝ガイドにてライターデビュー。若手時代は勝ちキャラだったものの徐々にクズっぷりを発揮し、昼はギャンブル、夜は酒をモットーに活動を行う。30歳で思い立ってフィリピンに英語留学へ行き、2012年の2月より世界の子ども支援を行うNPO法人セブンスピリットを設立。フィリピンのセブ島でNPO活動をしながら執筆も行っている。

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