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パチスロワイルドサイド-脇役という生き方-
2017.07.25
『大海』~ハナビと遅れと攻略誌
ラッシー パチスロワイルドサイド-脇役という生き方- パチ7の『ハナビまとめ』~打ち方、楽しみ方、勝ち方、初心者まとめてドン!~
シャツはすっかり重みを増し、鮮やかな青はくすんだ紺に変わっていた。さながら滝にでも打たれたかのように。それを脱ぎ捨て、洗濯ボックスへ投げ入れる。エアコンが効いた店内でさえこれだ。ロッカー上の小窓から注ぐ光と壁越しに聞こえる蝉の声が、外の地獄を物語っている。
ホールでのバイトを始めて2週間が経った。業務内容はドル箱(出玉)運びや補給用のメダル運びがメインだが、吸い殻集めやトイレ掃除・ゴミ箱の回収など多岐にわたる。言わずもがなキツいのはドル箱運びだ。先輩曰く、社員なら1度は必ず腰を壊すらしい。店舗にいる社員のほとんどは20代で、幹部クラスでも30代。そんな若さでも腰を壊すというのだから、どれほどの激務かお分かり頂けるだろう。今では自動補給やパーソナルシステムも珍しくないが、当時、そんな贅沢な設備を採用しているホールはほとんどなかった。
更衣室を出ると、そこが事務所だ。マネージャーは防犯カメラを睨みつけ、副店長は眉間にシワを寄せプリントされた「何か」を見ている。おそらく前日・当日のin枚数・out枚数などを出力したデータだろう。そしてもう1人。あの「タイムクロスA」の制御の話をしてくれた紳士だ。ソファに腰掛け涼んでいた紳士の名は、仮に荒谷さんとしておこう。
荒谷さんは59歳で、まもなく定年退職を迎えるという。若い俺でさえキツいと感じるホールスタッフを、定年まで続けるとは驚きだ。ご結婚されているかは分からない。家庭の話は本人の口から一切出なかったので、訊く人もいなかった。現代はどうか分からないが、あの頃のホール店員は「ワケあり」が多く、家庭のことを深く詮索するのはタブーだった。
荒谷さんは俺を見つけると優しく微笑み、隣に座るよう手招きした。
荒谷さん「お疲れ様でした」
俺「お疲れ様です」
マネージャー「どうだ五十嵐、もう慣れたか?」
俺「はい、みなさんに優しくして頂いて」
荒谷さん「それはよかった」
マネージャー「今度俺の豪邸にも遊びに来いよ」
俺「…はは、ありがとうございます」
マネージャー「旨い酒飲ませてやるよ」
副店長「マネージャー、五十嵐くんは未成年ですよ」
マネージャー「ガハハ、そうだったな! 20歳になったら来いよ」
俺「ありがとうございます!」
バイト先をこのホールに決めたのは正解だった。みんな優しくてアットホーム。イヤなヤツは1人もいない。キレると怖い副店長も、普段はニコニコしている。
荒谷さん「五十嵐くん、今日はもう予定ないかな?」
俺「ええ、これから打ちに行こうかと」
荒谷さん「僕も打ちに行こうと思ってたんです。一緒にどうかな?」
俺「ご迷惑でなければ! ありがとうございます!」
荒谷さんと俺は最寄駅が一緒で、打ちに行くホールもカブっていた。おそらく過去にも何度となくホールで顔を合わせていただろう。俺は原付、荒谷さんは自転車で目的のホールへと向かった。
時刻は16時半。稼働が高くなり始める時間帯だが、目的のホールは客が少なく閑散としている。常連客が多いバイト先と比べると、かなり静かな印象だ。原付を停め店内をブラついていると、5分ほど遅れて荒谷さんがやってきた。
荒谷さん「お待たせしました。老体に坂道はキツくてね」
俺「いえいえ、全然待ってないので大丈夫です」
荒谷さん「やっぱり今日も空いてますな」
俺「そうですね。何を打ちましょう」
荒谷さん「僕はいつものハナビを打とうかと」
俺「エッ? シマに誰もいませんが…」
荒谷さん「大丈夫。ハナビは甘いから」
俺「たしかにそうですが」
荒谷さん「あ、今『こんな老人にハナビが打ちこなせるか』とか思いました?」
俺「い、いえ! とんでもない!」
荒谷さん「五十嵐くんは何を?」
俺「じゃあ僕もハナビを…」
荒谷さん「そうこなくちゃ」
俺が選んだのは、空き台の中で最もボーナス出現率の高い台。荒谷さんはその右隣に着席。台を選んだというより、俺の隣だから座ったように見えた。
俺「大丈夫ですか? その台、今日全然当たってないですけど」
荒谷さん「大丈夫。ハナビの機械割を知っていますか?」
俺「ええ、ざっくりとなら」
設定 | 適当打ち時 | フル攻略時 |
1 | 92.0% | 101.2% |
2 | 94.7% | 103.5% |
3 | 96.8% | 105.9% |
4 | 98.9% | 108.4% |
5 | 102.1% | 111.7% |
6 | 104.1% | 113.9% |
俺「フル攻略なら設定1でも100%を超えますね」
荒谷さん「そう。だから台選びが適当でも大丈夫」
俺「…(なかなかの自信だな)」
荒谷さん「それにハナビはどのホールに行っても設定1ですよ。イベント日でもない限りね」
俺「はぁ…」
何十年もホール店員を続けてきた荒谷さんが言うのだから、実際そうなのだろう。しかし、それを知ったうえでもハナビを打てるということは…。2人並んで打ち始めると、スグに俺の台で風鈴と氷のダブルテンパイハズレが出現。第3停止でリールフラッシュも発生した。
荒谷さん「おお! 早いですね」
俺「いや…その…」
明らかに中リールで氷をこぼした感触があった。一応1枚掛けでボーナスを狙ってみたが、予想通りボーナスは未成立。
俺「氷の取りこぼしです」
荒谷さん「いけませんね。ハナビの甘さはフル攻略でこそ発揮される」
俺「…はい」
荒谷さん「小役補正機能はありますが、いつBIGを引くか分からないし」
俺「そうですね」
編注:4号機「ハナビ」には小役補正機能(小役カウンター)が存在。
簡単に言えば小役を取りこぼし続けると小役高確率に移行し、
小役を取り続けると小役低確率へ移行する。
設定変更後・BIG終了後は小役補正が±0にリセットされる
荒谷さん「小役をきっちり狙わないとボーナス察知も遅くなる」
俺「おっしゃる通り。気をつけます…」
俺と話しながらも荒谷さんは淡々と正確な小役狙いを続けており、ハナビを打ち慣れていることがよく分かる。そのときだ。俺が左リールを止めると…
荒谷さん「エッ!? 何で左リールにBAR狙ったの?」
俺「はい? いやだって小役狙いを…」
荒谷さん「今、遅れましたよね」
俺「遅れた? 何がですか?」
荒谷さん「エエ!? まさか五十嵐くん『遅れ』知らないんですか?」
俺「はぁ…サッパリ」
荒谷さん「リールが回り始めるときにスタート音が鳴りますよね。それがいつもより少し遅れて鳴るのが『遅れ』です」
俺「…(サッパリ分からん)はあ、それが?」
荒谷さん「遅れが発生すればチェリーorボーナスですよ!」
俺「エッ…エエエ!?」
左リールの上段にはBARが止まっており、チェリーを否定している。
俺「チェリーを否定してますよ」
荒谷さん「その時点でボーナス1確です」
俺「ま、マジっすか!」
実際BIGが成立していた。低投資で当たったことを喜ぶべきシーンだが、俺の心中は穏やかでなかった。俺はハナビを打つうえで常識とも言える「遅れ」の存在を知らなかったのである。いや、正確に言えば聞きかじったことくらいはあったが、あまり重要ではナイと思い、深く知ろうとしていなかった。「遅れ」があろうがなかろうが、ボーナス確率は変わらない。そんな冷めた考え方をしていた。
荒谷さん「遅れこそハナビの醍醐味。淡々と小役狙いなんてもってのほかです」
俺「はぁ…」
荒谷さん「僕が遅れの楽しみ方を教えてあげましょう」
俺「あ、ありがとうございます」
10分後――
荒谷さん「ほら、遅れた!」
俺「…(空耳じゃなくて?)」
今度は荒谷さんの台で遅れが発生…したらしい。
荒谷さん「色んな打ち方があるけど僕はココ」
そういうと荒谷さんは逆押しし、右リールを止めた瞬間に仰け反った。
荒谷さん「くぅ~、気持ちイイ! ボーナス1確です」
右リール中段にドンちゃんが止まっている。
荒谷さん「今、右リール枠上・上段あたりにドンを狙ったんですよ」
俺「はあ…」
荒谷さん「中段ドン停止+消灯アリはボーナス確定です!」
俺「エッ!? マジすか!」
そんな楽しみ方があったなんて! その頃の俺は「変則打ち」などほとんどしたことがなく、左リール第1停止で淡々と打つのが当たり前。変則打ちを実践するのはCT消化中くらいだった。 さらに10分後――
荒谷さん「あ! 今、五十嵐くんの台遅れたね!」
俺「エッ? そうですか?」
荒谷さん「スタート音が少し引っ掛かるような感覚なんだ」
俺「はあ…」
荒谷さん「逆押しで枠上・上段に七かドン狙ってごらん」
俺「はい」
枠上・上段あたりに狙ったドンはズルッとスベって下段に停止。
ドンはズルッとスベって下段に停止した。
荒谷さん「おめでとう! ボーナス1確です!」
俺「ホントですか?」
荒谷さん「まあ、その形だとバケが多いけど」
俺「あ、ホントにバケだ」
その後も2人で20時過ぎまで打ち続け…
上段七orドンは消灯ナシならボーナス確定。消灯アリなら4枚チェリーorボーナス
中段七orドンは消灯アリならボーナス確定。消灯ナシならほぼ2枚チェリー
…という法則性を教わった。 この日は2人とも負けたが、勝ったと錯覚するほど俺の心は満たされていた。これまで「覚えるのが面倒くさそう」という理由で避けてきた変則打ち、そしてハナビを語るうえで欠かせない「遅れ」。その楽しみ方を、この1日で教えて頂いたわけだ。
ちなみに「遅れ」は4号機「ハナビ」が元祖。あまりに有名な話だが、演出として意図的にプログラムされたわけでなく、バグから生まれた偶然の産物である。もちろん昨今の機種の「遅れ」は、意図的にプログラムされた演出だ。
色々教えて頂いたお礼にご飯を…と思ったのだが、丁重にお断りされた。「さすがに40も下の子にお礼などされるわけにいかない」とのこと。俺も齢を重ねた今なら「たしかにそうだろうな」と思う。
別れ際、荒谷さんは「パチスロ攻略誌は絶対に読んだほうがいい」と教えてくれた。攻略ネタを拾う意味だけでなく、深い楽しみかたも身に付くからと。荒谷さんは毎月3冊以上購入しているヘビー読者らしい。
パチスロ攻略誌か…。
さっそく俺は帰りにコンビニへ寄り、1冊の攻略誌を購入。それがのちに自分が作ることになる「攻略誌」だった。
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- ラッシー
- 代表作:パチスロワイルドサイド -脇役という生き方-
山形県出身。アルバイトでCSのパチンコ・パチスロ番組スタッフを経験し、その後、パチスロ攻略誌編集部へ。2年半ほど編集部員としての下積みを経て、23歳でライターに転身。現在は「パチスロ必勝本&DX」や「パチスロ極&Z」を中心に執筆。DVD・CS番組・無料動画などに出演しつつ、動画のディレクションや編集も担当。好きなパチスロはハナビシリーズ・ドンちゃんシリーズ、他多数。
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