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パチスロワイルドサイド-脇役という生き方-
2017.10.03
『地の獄』-中編- ~推定クロ
学校でオバちゃんと別れ、俺はバイト先のホールへと向かった。その日は夕方からの「遅番」。事務所に入ると、すでに制服に着替えたブンちゃんが煙草を吸っていた。マネージャーと副店長は、いつもどおり黙々と仕事をこなしている。
俺「おはようございます」
ブンちゃん「ラッシーおはよ~」
ホールスタッフ間の挨拶は、朝も夕も関係なく「おはよう」だ。ウチのホール特有の「ハウスルール」かもしれないが。
ブンちゃん「今日のスロットフロアはラッシーとお兄ちゃんの2人だから、一緒に頑張ろうね~」
俺「はあ、頑張ります」
ブンちゃん「まあ、今日出てるのはドン2くらいだから楽チンだけど」
俺「ドン2? そういえば知り合いのオバさんが」
ブンちゃん「オバさん? 何歳くらいの?」
俺「う~ん、60くらいですかね」
ブンちゃん「ラッシ~、年上好きとは聞いてたけど限度があるでしょ(笑)」
俺「いや、そういうんじゃなくて!」
ブンちゃん「で、オバさんがどうしたって?」
俺「常連から『そのサンダーとドン2、そろそろ出るよ』って言われて、メチャメチャ負けたらしいんですよ」
ブンちゃん「ハハッ、よくあるオカルト。このへんのホール?」
俺「○○にあるLってホールです」
ビクンと反応し、煙草の灰をポロリと落とすブンちゃん。仕事に集中していたマネージャーと副店長も、一斉に俺を見る。
ブンちゃん「…副店長、Lですって(笑)」
俺「は? 俺なんか変なこと言いました?」
副店長「学生の五十嵐くんは知らないほうがいい」
俺「エッ? なんですか?」
ブンちゃん「その常連が言ってることは正しいね」
俺「は? 正しい?」
副店長「ブン、ヤメとけって」
ブンちゃん「副店長~、そんな怖い顔で見ないでくださいよ~。ヤダな~も~」
俺「正しいってどういうことすか?」
ブンちゃん「前に一緒にドン2打ったとき『もっと上手くなったら連れて行きたいホールがある』って言ったろ? それがL」
俺「マジすか? なんかあるんすか?」
副店長「五十嵐くん、早く着替えて準備!」
俺「は、ハイ。すみません」
ブンちゃんはニヤニヤと笑っている。あの顔はイタズラするときの顔だ。当然バイトの間やバイト終わりに何度もLについて問いただしたが、ブンちゃんはただ「面白い店だよ」とはぐらかすだけだった。
数日後――
ブンちゃん「おう、ラッシー! おはよ~」
俺「おはようございます」
時刻は13時だが、やはりここでも「おはようございます」だ。改札前で待っていたブンちゃんは、ひと目で分かるほど上機嫌だった。遠足前の子どものように目を輝かせている。
俺「なんで朝からじゃなく昼からなんです?」
ブンちゃん「フフ…まだナイショ」
この日は日曜で、学校もバイトも休みだった。社員のブンちゃんは不定休だが、このときたまたま日曜が休みになったらしく、Lで一緒に打つことに。
ブンちゃん「お金いっぱい持ってきた?」
俺「10万くらいは…」
ブンちゃん「ヨシヨシ」
しきりに俺の所持金を気にしているところが引っ掛かる。
俺「まさか10万はなくならないっすよね?」
ブンちゃん「フフ…どうだか」
俺「笑いごとじゃないって!」
ブンちゃん「なくなったらヤバいの?」
俺「あと数日で奨学金入るんで、死にはしませんが…」
ブンちゃん「うん、お兄ちゃんは安心したよ」
俺「怖いんですけど…。この前の話から察するに、獣王やインディーを打つわけじゃナイですよね?」
ブンちゃん「そう、まずはドン2かな」
俺「さすがにドン2でそこまで負けないですって」
ブンちゃん「まあ、店に入れば分かるよ」
俺(エッ? 店に入れば…?)
ブンちゃん「あ、今日のこと副店長にはナイショな」
俺「はぁ…」
ブンちゃんはニヤリと笑う。あのときと同じ笑い方だ。しかし、わざわざ低設定のドン2を打つために来たわけではないだろう。
駅からLまではさほど遠くなかった。外観こそ今風でシャレているが、中に入ると床は板張りで、いかにも個人経営といったおもむきである。
さて、パチスロのラインナップはどうだろう。シマ図を見てみると……
■サンダーV
■ニューパルサー
■ハナビ
■ドン2
■花火の親方
■獣王
山佐の流行の機種は1つもナイが、割と普通のラインナップだ。が……
■ハイハイシオサイ-30
■バイパー
■リズムボーイズ
ん!? なんだコレ。ハイハイシオサイ-30なら名前くらい聞いたことあるけど、ほかの2つは見たことも聞いたこともナイ。パチスロ攻略誌を読んでいるのに、それでも知らない機種があるとは! ブンちゃんはさっさとシマの中へ。それに続き俺も入ってみると…その異様さに足が止まった。
タルが積んである!!
イスの後ろにタルを積んでいる台が複数ある! もちろん人が入れるほど大きなタルではない。強いて近しいサイズのモノを挙げるなら、一般的なランドセルくらいだろうか。胸に抱きかかえられる程度の大きさだ。メダルがギッシリ入ったソレが、通路のいたるところに積まれてある。 1つのタルに何枚入るかは分からないが、ドル箱2~3箱ぶんといったところだろう。しかも現代のドル箱ではなく「当時のドル箱で」だ。適当に入れても3000枚は入るだろう。
そしてもう1つ気になる点がある。5台設置の「獣王」が1台も稼働していない。どのホールでもフル稼働の超人気機種「獣王」がだ! これだけ店内に客がいて稼働しないとは!! かつてない光景に興奮と困惑を覚えつつデータ表示器を見て回ると、BIG30回前後の台がチラホラある。開店から4時間強でBIGが30回!? 対して不調台はとことん当たっておらず、700G以上の特大ハマリもゴロゴロしている。つまりコレは……
すでにブンちゃんはドン2に着席しており、サンドに1000円札を入れるところだった。
俺「ブンちゃん、コレって…(小声)」
ブンちゃん「さあ、なんのことでしょう(笑)」
俺「だってこの時間でもうBIG30回とか、1000Gハマリも複数あるし…」
ブンちゃん「フハハ、さすがにイヤでも気付くか」
俺(やっぱり! これがウワサの『裏モノ』ってヤツか!!)
裏モノ(Bモノ) ――
正規の台(ノーマル機)を違法改造した台のこと。意図的な連チャン性を備えているため一撃性は高いが、そのぶん通常時のベースや初当たりが抑えられており、ノーマル機より遥かにギャンブル性が高い。とはいえ裏モノは作成者(通称:カバン屋)やホールによって仕様が全く違うため、必ずしも先に挙げた特徴が当てはまるとは限らない。なお、裏モノを設置することは言うまでもなく違法である。
編注:裏モノとメーカーは一切関係ありません! メーカーが正規でリリースした台を、勝手に違法改造したのが裏モノ。今回、作中に登場する機種は、いずれも第3者が許可なく違法改造した台であり、メーカーとは一切関係ありません。 |
裏モノの話は聞きかじった程度。たまに攻略誌にも載っていたが、自分には関係のない記事だと思い真剣には読んでいない。「とにかく恐ろしい台」という漠然としたイメージしか持ち合わせていなかった。おそらく「ボーナス合算出現率の優秀な台を打つ」という正攻法も通用しないのだろう。そもそも裏モノなんて打って良いのだろうか…。
俺「コレ打っても大丈夫なの?」
ブンちゃん「ん? なんで?」
俺「違法でしょ?」
ブンちゃん「これが裏だという証拠は?」
俺「だって、どう見ても普通じゃないし…」
ブンちゃん「台開けて基板をチェックしないと『裏だ!』とは断定できない。つまり俺たち客が断定する術はナイ。違う?」
俺「ぐぬぬ…」
ブンちゃん「もし本当に裏だとしても、客側にお咎めはないよ。店は当然パクられるけど」
俺「そうなんすね」
ブンちゃん「そらそうよ。イキナリ『アナタが打ってる台は裏です。はい逮捕』とか言われたら困るだろ」
俺「たしかに困りますね」
ブンちゃん「俺だってココの台は裏だと思ってるけど『ノーマルで絶対に起こり得ない挙動』とは言い切れないし」
俺「まあ完全には言い切れないですね」
完全確率のノーマル機でも、信じがたい連チャンやドハマリが起こる可能性はある。いや、あるけども…。
ブンちゃん「で、どうすんの? 帰る?」
俺「…じゃあ俺もドン2を」
裏かもしれない台を打つのは怖かったが、それよりも「得体の知れない台を打つ」という好奇心が勝った。仮に裏だったとして、物理的に死ぬわけではナイ。危険を察知したらヤメればいい。
俺「でもどんな台を選べば…」
ブンちゃん「設定はナイと考えていい」
俺「エッ!? 設定ナイんスか?」
ブンちゃん「いや、裏にも設定はある」
俺(ハッキリ裏って言ってるじゃん)
ブンちゃん「ここのドン2の設定は16段階ってウワサだ」
俺「16段階!? な…なにそれ」
ブンちゃん「もちろん解析したわけじゃないから分からんけど」
俺「はぁ…」
ブンちゃん「だから設定狙いなんてムリ。でも立ち回れないことはない」
俺「マジすか? ちょ、お兄ちゃん教えてよ」
ブンちゃん「いや教わったら面白くないでしょ。周りの台を見てみ?」
俺「周りの台…?」
ドン2・ハナビ・サンダーVのデータ表示器を見て回ると、空き台の「現在のゲーム数」は50~600Gだ。650G以上ハマっている台は全て稼働しており、みな一様に血眼でブン回している。
ブンちゃん「俺の選んだ台もヒントになるね」
俺「ブンちゃんの台も?」
ブンちゃんの台はノーボーナスで約750Gハマリ。そういえば…オバちゃんは常連の兄ちゃんから「そろそろ出る」と言われたらしい。そしてブンちゃんも「常連の言ってることは正しい」と言っていた。つまり、ハマリが深いほど当たりが近くなる!?
ストック機やAT・ART機を経験した今なら当然「天井」を意識するが、まだAT機が登場して間もないアノ頃はその発想がなかった。日常的に裏モノを打っている人なら違っただろうが、ノーマルAタイプやCT機しか打っていない俺には「ハマるほど当たりが近づく」という考え方がなかったのである。
空き台で強いて打てそうなのは…ドン2の左角2。ノーボーナスで602Gハマリだ。その台を確保しブンちゃんを見ると、ウンウンと頷いている。やはりこの台選びで間違ってナイようだ。打ち始めると…演出は普通。演出法則もノーマル機と変わらなそうだ。だが――
回らない!
1000円で20Gも回らない!! いやもうコレ、完全にクロ(裏)じゃないか! とにかくメイン役の風鈴が落ちない。ごくごく稀に落ちる程度。ちなみにチェリーはたまに落ちるので、攻略誌の裏モノページで見た「チェリーver.」というヤツではなさそうだ。俺があまりの投資スピードに驚愕していると、ブンちゃんが俺の元にやって来た。
ブンちゃん「言うの忘れてたけど、リプレイハズシは禁止ね」
俺「は? ハズしちゃダメなんスか?」
ブンちゃん「めちゃめちゃ損する可能性あるから」
俺「ええ…なにそれコワい」
ブンちゃん「詳しくはあとで教えるよ。あ、複合14枚獲得手順はやりなよ」
俺「はぁ…完璧にはできないっスけど」
リプレイハズシをすると損をする!? ノーマル機に比べJACイン確率が極端に低く、パンクの恐れが高まるのだろうか。このとき俺は、そんな風に予想していた。しかし実際は…。
長くなったので、つづきは後編で。この推定「裏モノ」の仕様についてや、裏モノに対する私見も次回更新に譲ります。最後に重ね重ねでクドいようですが、メーカーと裏モノは一切関係ありません。これについても後編で語らせて頂きます。
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- ラッシー
- 代表作:パチスロワイルドサイド -脇役という生き方-
山形県出身。アルバイトでCSのパチンコ・パチスロ番組スタッフを経験し、その後、パチスロ攻略誌編集部へ。2年半ほど編集部員としての下積みを経て、23歳でライターに転身。現在は「パチスロ必勝本&DX」や「パチスロ極&Z」を中心に執筆。DVD・CS番組・無料動画などに出演しつつ、動画のディレクションや編集も担当。好きなパチスロはハナビシリーズ・ドンちゃんシリーズ、他多数。
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