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パチスロワイルドサイド-脇役という生き方-
2018.05.15
『岐路』~初代ミリオンゴッド
「おお、五十嵐くん! ちょっとヒマある?」
声を掛けてきたのは教務課の職員・Sさんだ。俺は「校友会」という校内の催し物を運営する学生組織の会長を務めていたため、教務課の職員からもしっかり顔を覚えられていた。
――「ええ、少しの時間なら」
Sさん「じゃあ、ちょっとそこのソファーに座って」
――「はぁ…なんでしょう」
ソファーに腰掛けたが落ち着かない。このソファーは来客者用の待合所兼、講師の休憩所となっているためだ。オロオロと周囲を見回していると、Sさんがお茶を持って現れた。いち学生の俺にお茶を? 長い話になるのだろうか。
Sさん「五十嵐くんさ、行き先決まってる?」
――「行き先…ですか?」
Sさん「就職先だよ。もう今年で卒業なんだから」
――「…いえ、まだです」
俺が通っていた専門学校の映像科は3年制。就職率は意外と高く、求人票は廊下にびっしりと貼り出される。それだけ映像スタッフの需要は絶えずあるのだろう。 かくいう俺は、あまり深く考えていなかった。映像現場のカメラマンや音声さんは、ほとんどがフリーランス。特定の企業に就職せず、フリーで仕事の依頼を受ける。撮影・照明系のスタッフを目指す友人のほとんどもフリーランスを希望していたので、俺もなんとなくフリーランスになるのだと思っていた。
Sさん「就職に興味はない?」
――「いえ、興味ないわけではナイですが」
Sさん「じゃあ面接を受けてみないか?」
――「え!? 僕がですか?」
Sさん「そう。ウチの卒業生、つまり君の先輩にあたる人が技術会社を立ち上げてね。そこが社員を探してて、学校に相談してきたんだ」
――「僕が技術会社の社員に…」
技術会社とは撮影・照明・音声といったスタッフが集う会社のこと。毎日いろんな撮影現場にスタッフを派遣する。
Sさん「その社長(卒業生)は、主に○○(大手TV局)の番組でカメラマンをしているんだ」
――「○○のカメラマン!? スゴいじゃないですか!」
Sさん「もちろん局の社員じゃない。その局と付き合いのある技術会社にいて、このたび独立することになったというわけさ」
――「その社員第1号というわけですか?」
Sさん「そう。悪い話ではないと思うんだが」
――「もったいないくらいです。ありがとうございます」
Sさん「いやね、撮影・照明ゼミか音声ゼミの誰を推薦すべきか考えて、職員の中で五十嵐くんが適任じゃないかなってなったんだよ」
――「ありがとうございます」
Sさん「校友会会長としてもよく頑張ってるし。卒制でも助監と音声で頑張ってるそうじゃないか」
――「いえいえ、そんな。卒制で忙しくて、すっかり就職のことなんて忘れてました」
Sさん「それはチカラになれて良かった。じゃあ社長と面接する日は追って連絡するよ」
――「ありがとうございます。では、失礼します」
まるで夢の中にいるような、少しフワフワした気持ちのまま教務課の部屋を出た。自分が就職!? あまり実感がない。しかし、人生は案外こうして決まっていくのかもしれない。敷かれたレールの上をただ走るだけ。社会経験が乏しい当時の俺は、そんな風に思っていた。もちろん社会を経験した今なら違うと断言できるのだが……。
月収6万円という恐怖
社長のR氏は想像より若かった。正確な年齢は覚えていないが、35歳くらいだったと記憶している。法人化せずフリーランスのまま40、50代を迎える人も多いというのに。
面接というにはあまりに簡単だった。俺はすぐにR氏が立ち上げた会社の社員となった。就活で大変な思いをした人からすれば恨めしく思われるかもしれないが、もちろん社会はそんなに甘くない。結論から言えば、この就職は間違いだった。
入社からの半年間は「試用期間」になっていて、月収は手取りで6万円。昼食代は会社の経費で落ちるが、さすがに6万円では暮らせない。当時の部屋の家賃が6万5千円。卒業後は奨学金の返済もある。かといって他にバイトをするような時間的余裕もない。こうなると、もはややることは1つ。
パチスロでどうにかするしかない! 当然、会社勤めが始まるのは卒業後。それまでの間にパチスロで手堅く立ち回り、少しでも貯金を作っておかねば。
この頃、貯金を作るためによく打ったのが……
山佐の「キングパルサー(キンパル)」と、アリストクラートテクノロジーズの「巨人の星(巨人)」。
キンパルはAタイプで巨人はBタイプという違いはあれど、両機ともオーソドックスなストック機だ。前者は以前紹介した通り、ボーナスのストックさえあれば設定1でも十分戦える仕様。2002年末頃にはすっかり知識が浸透しており、導入直後ほど状況は良くなかったが、それでも狙えるホールは少なからずあった。
対する巨人は低設定だと厳しいスペックだが、キンパルに比べると知識浸透度が低く、天井狙いで重宝した。当時通っていたホールでは年配層にやけに人気で、信じられないようなゲーム数で落ちていることもしばしば。のちに巨人も知識が浸透し、徐々に立ち回りにくくなるのだが…。
真面目に学校に通いながらの稼働だったため、貯金は思うように増えなかった。卒業まで残り2ヶ月の段階で40万円ほど。これでは試用期間の半年を乗り越えられないかもしれない。そう思った俺は、1つの秘策を考え出した。これまで怖くて手を出せなかった、あのモンスターマシン。
「アレ」を攻めるしかない――。
鉄火場
目当てのシマに入ると、予想通りの光景が広がっていた。みな一様に千円札の束を下皿に置き、一心不乱にレバーを叩いている。常連客の顔は一通り覚えているが、知った顔は一人もおらず、誰一人として楽しんでいる様子はない。まるで「斬り合い」をしているような眼だ。これぞ鉄火場と呼ぶに相応しい。シマの所々には数千枚は入るであろう千両箱が積まれてあるが、その数は少ない。
そう、この機種こそ稀代の爆裂マシン「ミリオンゴッド」である。
▲4号機「ミリオンゴッド」
2002年の夏にミズホから登場。言わずと知れた回胴史上最強の爆裂AT機。AT「ゴッドゲーム(GG)」は1セット50Gで、1Gあたりの純増は約9.5枚。つまり1セットを消化すればおよそ500枚を獲得できる。ちなみに赤7揃い(SGG)で約1500枚、GOD揃い(PGG)なら約5000枚を獲得可能。
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GGの当選契機は下記の4つ。
① 逆押し15枚役成立時の抽選
② 内部的なリプレイ4連時
③ 赤7成立時(GG3連以上確定)
④ GOD揃い成立時(GG500G継続確定)
内部的には超高確率(約1/1.2)で6択の押し順15枚役が成立しており、逆押し15枚役が成立した際にGG抽選が行われる。ただし通常時には4つのモードが存在し、それによりGG当選率は大きく変化する。詳細を書くと長くなるので割愛するが、4つのモードのうち2つは実質的にGG当選を望めないため、上位モードの高確率モード・天国モード滞在中が勝負となる。まあ、俺は腰を据えて向き合ってないのだけれど。
この初代・ミリオンゴッドは、とにかくメダル持ちが悪い。50枚あたりの平均ゲーム数は驚愕の20.2G。リプレイも内部的には成立するが実際は揃わず、たまに順押し15枚役が揃う程度。千円で16Gしか回らないなんてこともザラにある。学生の俺はとてもじゃないけど真っ向勝負など不可能なので、自分なりに勝てそうなルールを考えた。
天井まで2万円以内の台にだけ座る。
GG間で1500Gハマると1セット以上のGGが確定し、その後、順押し15枚役が成立するとGGが発動する。セット数振り分けは1500Gの間にGGをストックしたか否かで変わるが、ほぼ単発と思っていい。GG1セットで約500枚だから、2万円を使っても半分は返ってくる計算になる。
もちろん天井到達前にGGが当選することもあれば、天井到達前や天井のGG消化中に赤7かGOD揃いを引く可能性もある。期待収支など不明だが、やみくもに打つより幾分マシなハズだ。
ミリオンゴッドのシマの面々は、ある意味で兵(つわもの)揃いだった。もはやパチスロを打ちに来ているのではない。ミリオンゴッドだけを打ちに来ていた。このホールは高級住宅街にあったため、ミリオンゴッドは暇と金を持て余したセレブにとって恰好の玩具だったのだろう。
みな全くと言っていいほど知識はナイが、とにかく粘り強い。どんな展開になってもなかなかヤメない。しかし俺も就職後の生活が懸かっている。台選びに妥協はできない。 条件に見合った台は、1日に1台拾えるかどうか。もちろん拾えたとしても天井単発がほとんど。
連日の敗北で、徐々に貯蓄が削られていく。やはりミリオンゴッドに必勝の立ち回りなどないのか。高設定をツモる以外に……。 そう思い始めた頃。ついにその瞬間は訪れた――。
天井まで残り80G。次の千円をサンドに入れつつレバーを叩いた瞬間
「パ~ォ♪」
今ではすっかりお馴染みとなったあのブラックアウトが発生!
隣の男「おお、兄ちゃんやったな!」
隣の夫人「おめでとう!」
――「あ、ありがとうございます」
押し順をミスしたら全てがパーだ。 震えを抑えつつ、慎重に左からリールを止める。
この瞬間をどれだけ待ち望んだことか。
右リールを止め中段にGODが揃うと、大きな溜め息が漏れた。歓喜よりも安堵。これでまだ戦える。このシマは、本来俺がいるべき場所じゃない。身分不相応だ。でもまだまだ、この狂気に満ちたシマに身を任せていたい。既存のパチスロの枠を超えた化物のシマに。
この日はPGG消化中に赤7も降臨。これまでの負け分を一気に取り戻した。 この日のあとも同様の実戦を繰り返し、勝率は低いものの、少しだけ勝ち分を上乗せ。50万円強の蓄えを作り、専門学校の卒業式を迎えた。
引いたGOD揃いはトータルで3回のみ。当時ミリオンゴッドを打っていた人からすれば笑われるようなショボさだが、それでも俺にとっては大きな思い出となった。
この実戦ルールの期待収支がいくらかは分からない。誰もやっていなかったから、おそらくマイナスだったのだろう。でも自分なりに工夫しルールを設けたことは、いい経験になったと思う。PGGと赤7のヒキに助けられただけだとしても。
ちなみに押し順ペナルティが発生すると、そのぶん天井までのゲーム数カウントがストップする。ペナルティの有無はデータ表示器から分からないので、天井GGがなかなか発動せず焦ったこともしばしば。パチスロを打ちなれていない人がよく打っていたため、押し順ミスも多かったのだろう。あの恐怖は今でも忘れられない。
稚拙な実戦ルールだったかもしれないが、「機種ごとに向き合い方を考える」という点で大きな一歩になったように思う。
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- ラッシー
- 代表作:パチスロワイルドサイド -脇役という生き方-
山形県出身。アルバイトでCSのパチンコ・パチスロ番組スタッフを経験し、その後、パチスロ攻略誌編集部へ。2年半ほど編集部員としての下積みを経て、23歳でライターに転身。現在は「パチスロ必勝本&DX」や「パチスロ極&Z」を中心に執筆。DVD・CS番組・無料動画などに出演しつつ、動画のディレクションや編集も担当。好きなパチスロはハナビシリーズ・ドンちゃんシリーズ、他多数。
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