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パチスロワイルドサイド-脇役という生き方-
2018.11.13
『人間信頼度』~初代・押忍!番長~
その日は朝から黙々と「分別」を続けていた。
普通紙はリサイクルへ、トレーシングペーパーは燃やせるゴミへ。
ほとんどの人には苦痛と感じる作業であろうが、俺はコレが好きだった。校了したこと、すなわち本作りが終了したことをこの上なく実感できるからだ。この分別作業さえ終えれば、明日から約1週間は自由の身。次の誌面作りが始まるまで、思い切り羽を伸ばそう! そう思うと、自然と鼻歌がこぼれた。
上機嫌で分別を続けていると、不意に肩を叩かれた。鼻歌を聞かれたことに赤面しつつ振り向くと、とある雑誌の副編集長(副編)が立っていた。
副編とは、いわば雑誌の実質的な責任者だ。その上に攻略誌2誌を束ねる編集長が存在し、さらにその上にパチスロ雑誌部門の統括責任者などがいる。我々編集は、実質的に副編集長の指揮のもと雑誌作りを進めていることになる。
副編「ゴキゲンのとこ申し訳ないけど」
――「は…はい」
副編「明日の夜って空いてる?」
――「はぁ…まあ…」
やっと激動の日々が終わったのだ。正直言えばしばらく働きたくないが、下積み中のフリー編集の分際で断ることなど許されない。
副編「じゃあ、深夜実戦手伝ってくれない?」
――「え!? もしや番長ですか?」
副編「そう、興味ある?」
――「もちろんです!」
話題の新機種「押忍!番長」の導入は明後日。明日の夜の入替作業終了後から導入初日の朝までの間、深夜実戦を行うという。「吉宗」が大好きだった俺に、断る理由はなかった。
――「ぜひよろしくお願いします!」
副編「良かった。じゃあG店に24時集合ね」
――「了解しました!」
▲4号機「押忍!番長」(大都技研)
2005年の夏にデビューした4号機末期の大ヒットマシン。A-400タイプのストック機で、今なお続く番長シリーズの記念すべき初代だ。ボーナス放出システムは、メガヒット機種「吉宗」を踏襲。ただし、スペック面は吉宗に比べ大幅にダウンしていた。
|
吉宗 | 押忍!番長 | |
BIGの獲得枚数 | ほぼ711枚 | 400枚程度 |
1G連ストック数 | 最大5個 | 最大1個 |
設定6の出玉率 | 119.99% | 107.70% |
吉宗は4.5号機で、押忍!番長は出玉を抑えられた4.7号機だから、スペック面で劣るのは仕方がない。単純に劣化版吉宗との見方もあったが、正統後継機ということで注目度は極めて高かった。とあるホールは導入の1週間前から「押忍!番長(以下、番長)」を十数台設置していたほどである。当然遊技はできないが、デモとしてBIG中や前兆ステージ「特訓」中などを公開していた。もちろん導入へ向けた「煽り」が狙いである。十数台×1週間の稼働を捨ててでも、導入後の番長に客を集めたい。ホールにそう思わせるほどの注目度だった。
事前情報の乏しい俺は、翌日の夜までに猛勉強。解析数値は一切明らかになっていなかったが、基本的なゲームの流れや実戦上の設定差を頭に叩き込んだ。
★番長の第一印象。
翌日の夜――
24時少し前にG店前へ行くと、すでに人だかりができていた。その全員が、我が編集部の編集・ライターである。深夜実戦は幾度も経験しているが、人数は多いときでも10人程度。にもかかわらず、今回は20人を超えている。番長へ寄せる期待の大きさを物語っていた。
ホール内に入れたのは24時を少し過ぎた頃。中に入るや、現場を指揮する副編集長から紙とバインダーが配られた。メモする内容は…
ゲーム数 役 解除契機 備考
特訓の突入・終了や、対決演出の内容も詳細にメモする。また、レア役による解除があるため、成立したレア役も全て記入するよう指示があった。
通常時のゲーム性は、概ね吉宗に似ている。主なRT解除(=ボーナス放出)契機は規定ゲーム数消化だ。通常時には複数のモードが存在し、滞在モードによりゾーンや天井ゲーム数が変化する。なお、吉宗の最大天井は1921Gだが、番長は1280Gだ。また、連チャンモードの天井は吉宗が193G、番長は128G。イメージ的には「マイルド版吉宗」と言ったところか。
設定1から6までを4台ずつ回し、さらに設定6だけは追加で4台回すことに。かくして計28台でのデータ採りがスタートした。第一線で活躍するライター陣とベテラン編集が高設定、新人編集が低設定を担当。無論これは高設定狙いに役立つ挙動を見落とさないためだ。俺に割り当てられた設定は「2」。編集部に入って1年半が経過したとはいえ、まだまだ「ひよっこ」の俺には妥当な設定だったと思う。
実戦開始から4時間――
俺は眠気と戦っていた。
(62) チェリー
(91) 弁当
(132) チェリー
(161) チェリー
(201) チャンス目
(203) 弁当
(248) チェリー …
ひたすら成立したレア役を書き込む作業。さきほど800Gほどハマった果てに青BBを放出したが、1G連は非当選で天国のゾーンもスルー。また長い旅が始まった。
吉宗同様、RT振り分けの濃いゾーンで前兆ステージへ移行する。フェイク前兆の発生ゲーム数から滞在モードを予想することも可能そうだ。それは徐々に分かってきたが、俺が打つ設定2は延々300G台・600G台でのフェイク前兆を繰り返すばかりで、反撃の糸口はまるで見えない。やはり天国モードに捻じ込むか、BIG中に1G連を射止めないと勝機はないのだろう。
退屈に耐えかね、先輩ライターが打つ設定6のデータ表示器を横目でチラリ。
――「…はぁ~」
思わず溜め息が漏れた。
俺が打つ設定2とまるで変わらない! ハマリゲーム数を示すツブは、さながら六本木ヒルズのごとく立ち並んでいる。到底高設定とは思えない展開なのだ。設定を打ち間違えているのか? それとも初期出荷状態でストックが切れている…?
いや、おそらくこれが現実。 これこそ4.7号機の現実なのだ。 設定6の出玉率は107.7%だが、ノーマルタイプの107.7%とはワケが違う。番長の場合、天国ループや1G連ループも加味しての107.7%なのだ。そのぶん、吸い込みは激しくて当然。天国・1G連のループに見放されると、設定6でも必然こうなるのだろう。
これが4.7号機か……
俺は明日以降、実際のホールで番長を打つだろうか。少なくとも吉宗・北斗・銭形が現役のうちは…。もし、この大量導入された番長がコケたら…!? 正直に書こう。番長の「第一印象」は良くなかった。 吉宗のデキがあまりに良かったため、 余計に悪く見えた可能性もある。ただし、これは第一印象にすぎない。 モード推測からの設定推測、BIG中の1G連システム、連続演出の法則性…などなど、真の面白さに気付くのは、まだまだ先のことになる。
あくびを噛み殺しながら、ひたすらレア役をメモする。
(346) チャンス目
(379) 弁当
(382) チェリー
(389) チェリー
(403) チャンス目
(408) チャンス目
シャッターが頻繁に動き、にわかに演出が騒がしくなる。チャンス目を引いたため、前兆が始まっても不思議ではない。実戦データ用のメモ紙をめくり、対決演出用のメモ紙へとチェンジする。が、直後に再びチャンス目が出現。小さく舌打ちし、また実戦データ用のメモ紙に戻した。
(413) チャンス目
記入を終えると、すぐさま対決演出用のメモ紙へ。が、またしても左リールがズルっとスベって手が止まった。
――「何かがオカシイ…」
★特殊制御への気付き。
予感した通り、またしてもチャンス目だった。確率は不明だが、ここまで偏るだろうか? その出現条件も明らかになっていないが、吉宗同様、内部ボーナス成立時の一部と予想される。たまたま内部ボーナスを頻繁に引いたのか…!?
いや、待て! 2つ前の初当たりは、チャンス目きっかけの前兆だったハズ。実戦データ用のメモ紙を遡ると…
(782) チャンス目
(789) チャンス目
(795) チャンス目
(797) 対決勝利→ボーナス告知
798 青BB チャンス目解除?
やはり! チャンス目頻発から青BBに繋がっている! これは偶然じゃナイのでは!?
吉宗には揃うリプレイの一部から突入する「内部的なチャンスゾーン」が存在した。チャンスゾーン中にRTを解除できれば、次回連チャン(193G以内のボーナス放出)が約束される。チャンスゾーン滞在は外見から見抜きづらいが、その間は特殊制御となり、リプレイや俵(10枚役)成立時にスベリを伴いやすくなる。
またこのチャンス目頻発からボーナスを放出したら……。
固唾を飲んで前兆を見守ると、ノリオとの卓球対決に発展。すでに何度も負けている対決カードだ。チャンス目の頻発は、ただの偶然なのだろうか…。半ば諦めムードで対決の行方を見守っていると、タイトル画面の次ゲームから数え3G目でノリオの攻撃。万事休す――。そう覚悟したが、轟が弾き返し見事勝利! そして放出されたボーナスは…
434 青BB チャンス目解除?
またしても青BB! 間違いない、番長にも特殊制御が存在する! 条件の詳細は分からないが、チャンス目解除時の一部で特殊制御になるんだ!!
さっきまでの眠気は吹き飛び、俺はこの「気付き」に興奮していた。まだ番長において特殊制御の話題は出ていない。実戦時間は残りわずかなので今日中の立証は難しいが、明日以降も検証を重ねれば、次の誌面に間に合うだろう。勝ちに繋がる情報ではナイが、知っていればよりアツく打てるハズ。なによりライバル他誌より先に特殊制御の存在を伝えられることがデカい! こういう情報の早さこそが、雑誌の信頼度を高めるのだ。
★人間信頼度。
深夜実戦の結果は散々だった。設定6でも大幅なマイナス差枚数が多数。かと思えば、低設定で3千枚を超えている台も複数あった。解析数値が明らかにならない限り、設定判別は相当難しそう。そんな印象だった。
俺が打った設定2も、見せ場と言えば2回の青BBくらい。なお、2度とも1G連非当選で駆け抜け、天国ループによる連チャンも2回のみ。-2000枚超の大負けだった。
それでも収穫はあった。特殊制御が疑われる挙動を確認できたのだ! 俺は実戦データを手渡す際、現場を仕切っていた副編に報告した。
――「すみません、ココなんですが」
副編「ん? どうしたの?」
――「チャンス目が不自然に頻発しまして」
副編「ふんふん…それで?」
――「チャンス目頻発後に当たってるんですよ」
副編「そうだね」
――「チャンス目解除後は特殊制御になるんじゃないですかね」
副編「は? 吉宗のチャンスゾーンみたいな?」
――「そうです! チャンス目確率が上がるんじゃないかと」
副編「オカルト」
――「えっ?」
副編「チャンス目確率変わるとかオカルトっしょ」
――「え? いや、チャンス目出現条件が…」
副編「たまたま連続で引いただけじゃん?」
――「でも2回も確認でき…」
副編「みんな疲れてるからさ、今日はもう帰ろうよ」
――「は…はい…」
全く相手にされなかった。まさかオカルトと一蹴されるとは。しかし、それも無理はない。副編から見れば、編集歴1年半の俺などただの小僧なのだ。ついこの前まで素人だった小僧が、何かネタを見つけるなど思っちゃいない。
先輩ライター「やっぱり前兆をカウントすると面白そうだな」
副編「と、言いますと?」
先輩ライター「1消灯+ハズレから数えはじめて…」
副編「いや~、さすがっすね!」
そう、俺にはまだ「信頼」が欠けていたのだ。
★特殊制御の有無。
しばらくして解析が進むと、案の定、特殊制御の存在が明らかに。
【特殊制御への変化条件】
■内部BIG解除時
(チャンス目解除の一部)
■完全ハズレ解除時の1/5
■弁当解除時
上記条件後の前兆RT中は特殊制御となり、チャンス目やスベリ小役が頻発すると判明。俺の予感はオカルトでないと証明された。チャンス目頻発のメカニズムは以下の通り。
【基本的なチャンス目出現条件】
①内部REG成立時の100%
②内部BIG成立時の50%
③内部リプレイ成立時の0.06%
特殊制御中は③の条件が大きく変化
③内部リプレイ成立時の14.9%
特殊制御中は内部リプレイ成立時の約1/6.7でチャンス目が出現! なお、特殊制御中は揃うリプレイとベルの制御も変化する。
通常制御中 | 特殊制御中 | |
揃うリプレイ | 10%でスベる | 75%でスベる |
ベル |
チャンス目頻発だけでなく、スベリ小役の頻発もアツかったのだ。
俺がもっと信頼されていれば、より早くスベリのアツさを発信できていた…かも!? そう残念にも思うけれど、今となっては副編の気持ちも十分すぎるほど理解できる。
SNSが発達した現代は、誰もが気軽に情報を発信できる。しかし、メディアの人間はそうはいかない。もし不確かな情報を発信し、それが誤報だった場合、メディアの信頼が揺らぐからだ。だからこそ、慎重すぎる程度がちょうどいい。「確証が得られるまでは発信しない」という決断は当然なのだ。
編集やライターは、単純にネタを見つけるだけではダメ。上司や同僚を納得させられるだけの「人間信頼度」も重要なのだ。
のちに我が編集部の先輩ライターが、前兆演出の法則性や、1G連を左右するBIG中のベルの制御の違いを発見。それらは解析から判明したのでなく、何度も重ねたホール実戦から発見したという。これが広く知られるや、番長の人気はさらに加熱。俺は今でも大先輩の発見こそが、番長人気に火を点けたと思っている。
『攻略ライターはこうあるべき』
まるで、そう教えられたような気がした。この大先輩の「パチスロと向き合う姿勢」は、未だ俺の中で攻略のバイブルとなっている。解析資料とにらめっこするだけではダメ。実戦こそがネタを生み出し、ムーブメントを作るのだ。
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- ラッシー
- 代表作:パチスロワイルドサイド -脇役という生き方-
山形県出身。アルバイトでCSのパチンコ・パチスロ番組スタッフを経験し、その後、パチスロ攻略誌編集部へ。2年半ほど編集部員としての下積みを経て、23歳でライターに転身。現在は「パチスロ必勝本&DX」や「パチスロ極&Z」を中心に執筆。DVD・CS番組・無料動画などに出演しつつ、動画のディレクションや編集も担当。好きなパチスロはハナビシリーズ・ドンちゃんシリーズ、他多数。
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