何気ない一言がホールスタッフの人生を変えた話

マイホのスタッフであるお姉さんを町で見かけた時、いつもよりずっと綺麗に見える。


あると思います。どうも藤原です。


僕がホールスタッフだった頃、すでに身嗜みに関する規定は厳し目でして、男性はヒゲや染髪は勿論のこと丸坊主なんかも禁止でした。女性側はある程度のレベルまで染めることは認められてても、スッピンはNGだったりと、逆に女性の方がキツかったのかなーと思います。

特に髪や爪に関するオシャレが楽しめない事は女性陣への不服となっていたようで（まぁしゃーない）そんな中、当時僕より2ヶ月ほど先輩だったA子さんが上司達にとって一つ悩みの種となっておりました。

業務自体は不器用ながらも真面目にこなすA子さんだったんですが、

「何をどうやってもお化粧してくれなくて困ってる」

こんな相談を受けまして。まぁ困ったなと。とは言うものの、お化粧してる？と上司が聞くと断固としてＡ子さんは「してます！！！」と答えるのですが、これがどーもしてるように全く見えない。眉毛はバッチリとナチュラルに太く、唯でさえ和風な顔立ち（オタフクソースのロゴみたいな）にバッチリと拍車をかけ、尚且つ休憩のたんびにゴシゴシとおしぼりでオッサンが定食屋で如く顔を拭くもんだから、誰が見ても「いやいやスッピンっしょ？」ってのは明白だったんですよね。

まぁいろんな意味で「多少は困ったちゃん」だった訳です。でもお化粧が業務内容に含まれる以上、スッピンは看過出来ない問題として存在してまして、上司はとうとう業を煮やし、「もっとキチンとしてくれないと困る、それでは化粧をしていない様に見える！」と多少キツメにお説教をした訳ですね。するとどうでしょう。


次の日休憩所に明らかにお化粧をしているＡ子さんの姿が。


なんだ、やれば出来るじゃないか。正直言うとほんのりしてるなって感じだけど、うんうん大丈夫だよ。何故か眉毛だけは完全に俺より太いけどそこは譲れない拘りがあるんだろうね。うんうん。晴れて一見落着だよ。これには上司もニッコリだったので、僕は帰り際に彼女とすれ違った際に、「バッチリお化粧したんですね！素敵ですよ！」と声をかけて帰ったんです。
するとどうでしょう。


翌日これでもかと真っ赤な紅（べに）を唇にさしたＡ子さんの姿がそこに。


待て待て待て、何があったんだ。何に目覚めたんだ。まぁいいや、多少唇がいつもより真っ赤なＡ子さんがそこにいるだけだ。しかしなんだその色は、何が君にあったんだ。我々スタッフは（何かおかしい・・）とその日各々に心に抱きながらも業務を終えた。翌日はＡ子さんはおやすみ。そしてその翌日。


そこには上下の瞼にガッツリと真っ黒のアイラインを入れたＡ子さんの姿が。


いやいやいやいやおかしいおかしい、どうしたんだ本当にオタフクソースのロゴにでもなるつもりなのか君は。良く観察したらなんか肌にも塗りたくっててスケールの小さいデーモン小暮みたいになってんじゃん。今の時代なら確実に「ブルゾンちえみのコスプレですか？」って聞かれるぞ。35億の絶唱だー！ってやかましいわ。でも眉毛だけはスルーしてんのな。生え散らかしてんのな。やべぇよこれ拷問だまぁいいや働くぞ畜生。

と、働いてたんですね。

所でパチンコ屋さんのホールスタッフでベストみたいなの着てること多いでしょ？そのベストが黒地だった場合、夏場なんかに背側が少し白くなってるの見たことありませんか？あれね、汗なんですよ。忙しいパチンコ屋さんってそこに汗が浮くくらい走りまわるんです。僕が居たとこも余裕でそれくらい汗かくんですね。そんなピーク時にお客様から「甘デジにとんでもないのがいるぞ」って声かけられて見に行ったらね、

Ａ子さんの化粧が汗でえらいことになってんのよ。もうグッチャグチャになってんのよ。どこのとんでもねぇかと思ったらウチのとんでもねぇだった訳よ。いやお前拭いたなさてはお客様用のオシボリで。

すぐにホットラインとなるインカムチャンネルで上司に報告すると、そこには連行されていくオタフクソースの溶けかけたヤツが歩いててね。。。結果として僕達よりちょいと先に帰らされたみたいです。

その日の業務終了後上司に僕が呼ばれまして、「お前Ａ子さんに何か言った？」って言われたんですよね。全く思い当たる節がなくて、得に何も・・・と答えたんすが、

「Ａ子さんな、藤原さんが化粧誉めてくれてもっとするべきだと思ったって言うんだ」

ほ・・誉め・・？？？・・・たわ。誉めたわ。男の行儀として。

「ワシ誉めましたわ・・」その後上司からは「全て藤原が悪い」と結論付けされ、何故か結構な緊張を持って翌出勤のＡ子さんに「そこそこの化粧でいいよ」と伝えることに。結果としてはＡ子さんはそこそこの化粧で落ち着き事なきを得たんだけどね。

皆も何気ない一言には気をつけるんだよ。


そんな話。

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