気持ちイイ打ち方～ルパン一族の秘宝～

ラッシーパチスロワイルドサイド-脇役という生き方-

日当たりはさほど良くない。むしろ悪いとさえ言える。しかし、近くのビルに反射した朝日は、容赦なく両眼に痛みを与えていた。

ポーンと小さくエレベーターの音が鳴ると、一斉に清掃会社のおじさん・おばさんたちが編集部内に入って来た。もうそんな時間らしい。沈黙に耐え切れず声を出した。

――「どうかな?」
Sくん「もう少しです」

――「ね…眠い。ちょっと寝ていい?」
Sくん「いやダメっスよ！家帰って寝てください」

――「そうしたいけど、もうHPが…」
Sくん「コラコラ、横にならない！もう少しですから」

――「う゛～ん…」

Sくんは同じ編集部の後輩にあたる。とはいえ入社時期は1年ほどの差しかないから、ほぼ同期と言っていい。歳も同じだから気がラクだ。

Sくん「はい、出ました！」
――「おお！では発表をお願いします」

Sくん「設定看破6連戦の結果は……」

手応え。

――「頼むっ!!」
Sくん「6台中………3台正解！」

――「えっ？正解率低くない？」
Sくん「そんなことないっスよ！」

このとき俺が挑戦していたのは、「ルパン三世～ルパン一族の秘宝～」の設定推測実戦だ。

▲5号機「ルパン三世～ルパン一族の秘宝～」(平和)

※機種の詳細については20年12月08日更新「初めてのFlash導入」をご覧ください。

6台を約3,500Gずつプレイし、ピンポイントでの設定当てを目指すというもの。さすがに一晩や二晩では終わらないため、実戦は数日に分けて行った。

従来の設定推測でも十分戦える感触はあったが、それに加えケータイサイト班に作ってもらった「REGからのSH突入率算出ツール」もある。自信はあったが……。

Sくん「では全6台の設定を発表します」
――「お願いします！」

Sくん「では1台目から…」

実際の設定
5・1・5・6・2・6

ラッシーの予想設定
6・1・5・6・1・5

――「ぐわ～、惜っしい!!」
Sくん「そうなんスよ。ピンポイント正解は3つですが」

――「不正解も高低は完璧に見抜けてる」
Sくん「そうスね！これならヤメor続行の判断も完璧でしょう」

たしかにSくんの言う通りだ。2を1と予想しても、どうせヤメるのだから正確な設定など当てる必要がない。5と6も然り。6を5と予想しても、どうせ閉店近くまで粘るのだから関係ない。

重要なのは設定の高低をどれだけ正確に見抜けるかだ。

ルパン一族には「設定確定演出」など存在せず、設定の偶奇による挙動の違いもなかった。それゆえ設定の偶奇を正確に見抜くのは難しいのである。

――「正解率は50％だけど…」
Sくん「全部正解と言っていいぐらい」

――「それは言いすぎ」
Sくん「いや、十分ですよ！お疲れ様でした」

――「Sくんもお疲れ。じゃあ帰って寝るよ」
Sくん「僕はこのまま夜までページ作りますけど」

――「は？鉄人かよ！そんな切羽詰ってるの？」
Sくん「ルパンだけで10P、他の機種も20Pあるので」

月間30ページの編集は、かなり多いほうと言える。パチスロ攻略誌は一般的な雑誌より1Pあたりの手間が多いためだ。

――「ええ…死んじゃうじゃん」
Sくん「いやいや、全然。あ、そうだ！」

――「ん？どうした？」
Sくん「なんか面白い打ち方ないスかね？一族の秘宝で」

――「面白い打ち方……？」
Sくん「アツいときに繰り出すような」

――「う～ん、ゴリゴリのペナ機だからなぁ」
Sくん「たしかにそうスけど…」

一族の秘宝の通常時は左第1停止がマストで、変則打ちにはペナルティーが科せられる。このペナルティーが、パチスロ史上類を見ないほど重いものだった。

ペナルティーの内容
通常時のリプレイ成立時に変則押しをすると、一定期間ART抽選が冷遇される。ペナルティーリプレイが入賞すれば最長200G間、突入リプレイが入賞した際は3択プラム取りこぼしまでが「一定期間」だ。つまり運が悪いと200Gの間、ほぼART抽選ナシとなる

――「まあ、ヤレるとしたらART中かな」
Sくん「ですね」

――「じゃあ今日…はムリとして、明日でも探して来るよ」
Sくん「お願いします！」

――「でもあんま期待しないでよ。ではお先で～す」
Sくん「お疲れ様でした。おやすみなさい」

こうしてフラフラになりながら家路につき、帰宅後は爆睡。翌日は遠征し、ART中の面白い打ち方を探ることにした。

生みの苦しみ。

――「マジ…なんなんだよ…」

力なく呟きながら1万円札をサンドに投じた。まだ正午すぎだというのに3枚目の1万円札である。明らかな低設定挙動。あっても2、普通に考えれば1といった状況である。

全機種対象のイベントを狙い遠征したが、開店から3時間の動きを見る限り、一族の秘宝に5・6は1台もない。地元のホールへ移動することも考えたが、通常営業でも高設定が使われるような時期はとうに過ぎた。

今から移動したとて、高設定に辿り着ける可能性は低い。こうしている間にも、Sくんのページ作りは進行している。負けると分かっていても、ここで粘るほかない！ネタのためならカネを捨てる。その覚悟がライターには必要なのだ。

しかし、3時間が経過しても上位ART「SH(スーパーヒーロー)」は0回。これでは肝心のネタが探せない。甘めのルパンでココまでこっぴどくヤラれるとは……。

まあ、長く打てばそんな日もある。そう自分に言い聞かせていると、数百ゲームぶりに引いた3連チェリーから連続演出に発展。ボーナス・ZT(ゼニガタイム、弱いほうのART)ともに期待できるICPO演出だ！

――「頼むぞ、そろそろ」

ZTが当たっても、ほとんどは単発。ZTからSHへの昇格もあるが、簡単に射止められるほど甘くはない。ここで願うべきはスーパーBIG。252枚を獲得し、かつZT or SHへの突入も約束されるスーパーBIGが望ましい。

すると、連続演出中にリプレイが頻出！ボーナス成立後はリプレイ確率が1/2.2までアップする。ボーナスは当たっていそうだが、重要なのはその種類。そしてルパンがお宝をゲットし、出てきたボーナス告知は……

――「…ですよね」

期待外れのノーマルBIG。まあ、REGでなかっただけヨシとするしかない。まず間違いなく低設定なのだ。REGからのSH突入は望めない。せめてZTだけでも当たってくれよ。そう願いながらノーマルBIGを消化し始めると……

「カシャカシャカシャカシャ…カシャ！」
――「キターーーッ！」

開始から4Gでお馴染みのタイプライター演出が発生！内容は「セブンを盗め！」だ。背景はデフォルトの黒。赤なら7揃い＝ART確定だったが…。ちなみに黒背景＋セブンを盗め！の7揃い期待度は約46％。

――「く～、ZTくださいッ!!」

違和感。

第3停止の瞬間、ギュッと目を瞑った。そして目を開けると…

――「ええ!?　だ…ダブルじゃん」

まさかのダブル7揃い！これにて上位ART「SH」が確定。ちなみにノーマルBIG中のダブル7揃い確率は約1/327.7。

――「く～、ラッキー！助かった～」

こうして念願のSHがスタート！すると、SH開始から5Gほどで液晶に不二子が出現。SH中の登場キャラには、それぞれに対応役が存在する。

SH中のキャラ別対応役
不二子…単チェリー
次元…リプレイ・共通プラム
五ェ門…ベル
ルパン…上乗せorボーナス

対応役を否定すれば上乗せorボーナス濃厚！無論、対応役でも上乗せのチャンスあり

こんな局面こそ変則押しのチャンス。まず単チェリー(いわゆる弱チェリー)とみて間違いないが、ベルが揃って上乗せという可能性も。まずは中or右リールでベルがある箇所を狙う必要がある。

とりあえず中リール枠上2コマ～上段付近に青7を狙った。青7の上にベルが付いているためである。すると、青7が枠外までスベって上からプラム・リプレイ・チェリーの形に。

――「んん!?　普通に単チェかな…」

しかし、予想に反し左リールでチェリーを否定！結果、リール上ではリプレイが揃った。不二子＋単チェ否定なので上乗せするハズだが…

上乗せはナシ！

――「なるほど。対応役否定じゃないということは…」

リプレイが揃ったが、内部的には単チェだったと予想できる。一族の秘宝ではチェリーフラグもリプレイフラグ一種だからだ。つまり、この打ち方ではリプレイと単チェを判別できないらしい。

これは少々イヤな傾向だ。SH中の状態は開始・中間・天国の3種類で、天国中の単チェなら10G以上の上乗せが約束される。それを見抜けないのはイタい。が、もう少し探ってみよう。そう思い検証を続けると、今度はレバーON時に五ェ門が出現！

同じく中リール枠上2コマ～上段に青7を狙うと、上からベル・青7・プラムが停止。どうやらコレがベルの停止形のようだ。さて、左・右リールでどうベルをフォローすべきか……

――「いや、待てよ」

左リールにはベルが6個。右リールは5個で、取りこぼしポイントはナイ。右リールは通常時でも目押しの必要がない。

要するに左・右リールをフリー打ちしてもベルのこぼしがないのでは？高速で左→右の順にフリー打ちすると……

――「やっぱり！」

上段でベルが揃って液晶に＋30表示が出現！ベルによる30Gの上乗せである。

――「気持ちイイ!!」

唯一ベルの取りこぼしがある中リールを先に止めることで、左・右リールをフリー打ちしてもベルが揃う。「得する打ち方」ではないが、なにより見映えがいい。ラクなうえに動画映えする打ち方だ！

左リールでチェリーを狙い、中リールでもベルを狙う普段の打ち方より断然早い。そしてよそ見をしていてもベルが揃う。そこがイイ。

――「これは悪くない」

そして打ち続けていると、またもやレバーONで不二子が出現。先ほどの単チェで天国へ上がった可能性もあるが――

案の定、青7が枠外までスベっていき上からプラム・リプレイ・チェリーの形に。こうなるとリプレイor単チェを見抜けないが、念のため左リールにチェリーを狙うと……

――「んん!?　あれ…さっきと形が違うような」

リプレイのテンパイラインがさっきと違う。これが単チェでなくリプレイであれば、リプレイと単チェをテンパイラインで見抜けるが…。恐る恐る第3停止を止めると、やはりリール上ではリプレイが揃った。しかし――

次ゲームのレバーONでルパンが登場！上乗せorボーナスだ。リールを止めるとリプレイが揃い、液晶には「BONUS」の文字が出現した。これは……

――「おそらく成立ゲームは…」

怪しいのは1G前。不二子出現時の、あの違和感を覚えたリプレイテンパイだ。その前の単チェとは停止形が違った。これはもしや――

確信。

数時間後――
中→左の順にリールを止め、リプレイの変則テンパイを見た瞬間に拳をギュッと握った。

――「く～、気持ちイイ！」

一族の秘宝のART中は、基本的に2～3連チェリーが出現しない。出現した際は、例外なくボーナス確定となる。これは通常時とはRT状態が異なるため、リプレイフラグの一種であるチェリーの停止形も変化するためである。

数時間打ち続けるうちに、「変則リプレイテンパイ」の正体が2連or3連チェリーだと分かった。無論、テンパイ時点でボーナス確定！ 周りから見ればなんてことないリプレイテンパイだが、それでもボーナス2確なのである!!

その後、出現キャラと出目の矛盾による上乗せorボーナス1確も続々判明。

出目＋キャラの法則崩れパターン
ベル・青7・プラム
→五ェ門以外で上乗せorボーナス

プラム・リプレイ・チェリー
→五ェ門なら上乗せorボーナス

青7・プラム・リプレイ
→次元以外で上乗せorボーナス

――「ヤバ！中押しアツすぎるッ!!」

結局この日は閉店近くまで粘り、総投資は46,000円に達した。回収は約600枚なので、なかなかの大敗である。しかし、後悔など1つも無かった。たしかにカネは失ったが、カネよりも遥かに重要なモノを得た感触があった。

その後の実戦により、中押し手順をより発展させた1枚役獲得術も発覚。さらに豊富なボーナス1確目を楽しめる逆押し2連赤7狙いも発見。誌面への掲載はもちろんのこと、CS番組でも積極的に手順を紹介していった。

かくして俺は「ルパンの人」というイメージを持たれるまでに。そしてこの「ルパンごり推し」が、のちに様々な幸運をもたらすことになる――。

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ラッシー: 代表作：パチスロワイルドサイド -脇役という生き方-

山形県出身。アルバイトでCSのパチンコ・パチスロ番組スタッフを経験し、その後、パチスロ攻略誌編集部へ。2年半ほど編集部員としての下積みを経て、23歳でライターに転身。現在は「パチスロ必勝本＆DX」や「パチスロ極＆Z」を中心に執筆。DVD・CS番組・無料動画などに出演しつつ、動画のディレクションや編集も担当。好きなパチスロはハナビシリーズ・ドンちゃんシリーズ、他多数。