あのときオレはクズだった　第19回

田中（クズプロ田中→クズ田中→田中）あのときオレはクズだった~田中の回胴回顧録~

攻略と飽きを繰り返すクズ人間の、あしたはどっちだ
　

　ババメナイトへ行き、泥酔して道端で寝たのが12月上旬のこと。そのときに塾長が、忘年会で編集長に田中のことを話してやると、そう言ってはくれたものの、年を越えても別段変わったことはなく、正月気分を引きずったまま、だらだらとパチンコ、パチスロをなんとなく打つだけの日々を送っていた。

　当時通っていたH店は相変わらず優良店で、設定変更のクセもいままでどおりだったから勝てることは勝てたのだけど、打つ前から8割方高設定だとわかっている台を朝から晩まで黙々と打つことが、工場のラインに乗っているようでバカらしく思えてきた。お金は手に入るかもしれないけれどドキドキがまったくないわけで、その日はなんとなく、いままで行ったことのなかった隣駅まで足を伸ばしてみたのだった。

　駅前にある店にフラッと入ってみると、そこは小ぢんまりとしたスロット専門店、B店だった。1機種8台ほどのちょうどいい台数で、機種ラインナップも少し前の、たとえばH店にはない大花火やオオガメラが主力機種となっており、大量獲得タイプ好きの自分にはもってこい。さらに5.5枚交換という、ちょっと設定にも期待が持てそうな交換率が自分の心をくすぐった。すでに高設定が透けて見えるようなH店で打つよりも、こっちで新たに開拓したほうがよっぽど面白い。というわけで、翌日からは毎朝電車に乗って、隣駅まで通う生活が始まったのだった。

　通い始めてすぐわかったのだけど、B店には設定6は恐らくない。だけど、オオガメラや大花火には間違いなく1台、設定5が入っていて、それを狙った若者数人が朝からやってくるという、超優良店とまではいかないけれど、地元ではまずまず…というレベルの店だった。

　ただ、H店のようにしばらく上がっていない台が定期的に高設定になるという簡単なクセではなく、B店は上げと据え置きが入り混じり、さらにはそのタイミングもバラバラ。狙いが非常に絞りづらく、据え置きを狙えば上げ。上げを狙えば据え置きとかわされて、なかなか結果が出ない。いくらデータをとってもかっちりとしたクセが見えてこないわけで、これはもう、店長の気まぐれでしかないのかなと、なかば諦めかけていた。

　その日も朝からダメ台をつかまされ、早々に撤退。家で夜まで爆睡したあとに、一応データだけ取ろうと閉店間際のB店へ行き、そのまま家に帰るつもりだったのだけど、たまたま駅の改札に入るタイミングで地元の友人から電話がかかってきたため、駅前に座り込んで話し始めたのだった。

　今日、獣王を打って5000枚出した。そんな地元のツレからの自慢話を、うんうんと適当に聞き流していたのだけど、駅前にひとりで立っていた女性。そこに、急ぐように駆け寄ってきた男がいた。B店の店長だった。

「ごめんごめん、待った？　お腹すいたよね。早く行こうか」

　そんな言葉を女性にかけて、そそくさと夜の街に消えていく店長。それを見て、ピンときた。閉店からたった30分で出てきたってことは、恐らく設定変更はしていないはず。さらに、あの規模の店だと店長のかわりに設定をイジれそうな奴もいない。今日はこのまま彼女と酒でも飲んでしっぽりするはずだから、明日の朝に設定を変えるというのも……ないな。

　翌日は、いつもより30分早く並んで、オオガメラの設定5、その据え置きを狙ってみると……ビンゴ。ビッグ中のハズレ出現率から設定5を確信した結果、閉店まで打って、5000枚のコインを叩きだした。そして、そのまま駅前に直行して、例の女が店長を待っているか確認。その日はいなかったため、翌日は設定変更と確信したわけだ。

　それからは、夜に駅前に女が立っているかだけを確認して、女が立っていた翌日にのみ大量獲得機の据え置きを狙うという戦略で、ほぼ100％の確率で設定5を打ち続けた。店にすら入らず、駅前の女をチェックするだけで高設定が見える最強の設定推測術が完成したのである。

　ただ……簡単に勝てるようになるとイヤになるのは自分の悪いところ。数週間もするとB店で打つことを作業と感じるようになり、飽きた結果、近所の店でCRあしたのジョーを打って金を減らす毎日を送るようになった。金に余裕ができると、とたんにツマらなくなって金を減らしたくなる。いつかはギャンブルで失敗して野垂れ死にたいなあ。そんなことを考えながらハンドルを握っていると、ちょうど大当り中に電話が鳴った。ディスプレイに表示された文字を見ると……!!!!!!!

「パチスロ必勝ガイド編集部」

　あしたのジョーの大当りを放り投げて、全速力で外に飛び出した。

「もしもし田中くん？　パチスロ必勝ガイドの吉良ですけど」

　いったいこの先、自分の人生はどんな展開を迎えるのだろうか。興奮状態の頭の中で、あしたのジョーのオープニングテーマを尾藤イサオが全力で歌っていた。

　あしたは、どぉっちだぁ～。

あのとき打っていた「オオガメラ」

【メーカー】ロデオ　【販売年月日】2001年5月　【タイプ】Aタイプ（大量獲得）
【田中氏のコメント】
2001年の5月に導入を開始したロデオの大量獲得機『オオガメラ』。先に発売された｢ガメラ｣の後継機で、ビッグ中のシフト持ち越し機能によりJACインを持ち越しすることによって、平均650枚程度のコインを獲得することができた。ビッグ中のハズレ確率に大きな設定差が設けられていたので(設定1で31.55分の1、設定6は978.9分の1)、ビッグ数回で高設定を見極めることができ、当時の機種の中でも破壊力と立ち回りやすさを兼ね備えた機種だった。

クズの成績表：★★★☆☆（察するクズ）

高い観察力と洞察力はどこから生まれるのでしょう。まぁヒマだからなんでしょうね（爆笑）

とはいえ、店長のプライベートの行動パターンから設定変更を見抜くってのはなかなか関心させられますよ。でも飽きちゃうんだよね。

その攻略心を他のものに向けられないかなぁ。そうだなぁ、自分の人生攻略に向けてみたらどうだ？ん？

次回20話から「第2部ガイド編」スタート予定！

次回からガイドさんのお仕事を始める内容になりますし、丁度年も変わります。というわけで、次回からいよいよ「ガイド編」がスタートしますので、お楽しみに！

田中氏の素晴らしき活動はコチラから！

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田中（クズプロ田中→クズ田中→田中）: 代表作：あのときオレはクズだった~田中の回胴回顧録~

パチスロ好きが高じて21歳の時にパチスロ必勝ガイドにてライターデビュー。若手時代は勝ちキャラだったものの徐々にクズっぷりを発揮し、昼はギャンブル、夜は酒をモットーに活動を行う。30歳で思い立ってフィリピンに英語留学へ行き、2012年の2月より世界の子ども支援を行うNPO法人セブンスピリットを設立。フィリピンのセブ島でNPO活動をしながら執筆も行っている。