パチスロライターに“なってしまって”episode.31（AT機バブル崩壊）

佐々木真パチスロ攻略ライターの思考ルーチン

4号機時代の爆裂AT機やストック機もそうでしたが、これだという完成形が見つかると、どのメーカーもそれ一辺倒ばかり作るようになっていきます。

AT機は、近所の商店街にあるような中小店には向きません。ジャグ系よろしく、どこからでも打ちやすくて勝ったり負けたりするーどちらかと言えばー穏やかな機種のほうが中小店には向いています。

逆に、繁華街の大型店舗にはAT機のような激し目の機種が向いていると思っています。「設定6が打てるかもしれない」と、わざわざ2時間とかかけて穏やかな機種を打ちに行きますか？どうせ時間をかけて行くなら、10万円勝てるような激し目の機種を打ちたいと思うことでしょう。つまり、繁華街の大型店が求めるのは、遠くから人を呼べるド派手な機種ということです。

ただ、そんなヒリヒリする勝負を毎日のようにするのは疲れますし、目が血走っているようなところを近所の人に見られたくもないでしょう。だから近所の中小店にはーどちらかと言えばー穏やかな機種のほうが向いていると思っております。稼働意欲としては“勝率の高さ”ですかね。毎日のようにみることによって、狙い台を作りやすいというか。毎日見られるほど、ホールが近くになくてはならないんですけど。

向いている機種が違うんです。では、どちらのほうが新台を買うかというと繁華街の大型店です。メーカーとしては、作ったところで買ってもらえない中小ホール向きの機種よりも、大型店に検討してもらえる機種を作るほかありません。その流れで、中小店には不向きな機種が多くなって、ますます中小店が苦戦をしていったように思えます。

ユーザーもそうですね。近くの中小店よりも繁華街の大型店のほうが資金力に余裕があって噴く台にも設定を入れられる可能性があるということで、近所の中小店で打つのではなく大型店にまで足を伸ばすようになりました。

そう。誰も悪くないんです。繁華街の大型店は、遠くから人を呼べるド派手な機種を求める。メーカーは、買ってもらえる機種を作る。ユーザーは、より勝てる環境を探す。それぞれの立場ではベストを尽くしています。

身近にあって遊べたから始めたという古い世代も多いですが、まったくそのような方向とはかけ離れたものになってしまいましたけどね。ただ、誰も悪くないのです。もうこれが時代の流れなのだと観念せざるを得ません。

と、脱線しているように見えますが、古い世代にこう観念させたのが“アクセルAT機の功績”なのかもしれません。

★AT機の終わり。

2014年の夏場にかけて、どのメーカーもアクセルATをシステムに似た機種ばかり発表していくようになりました。先に書いておきますが、藤商事さんが悪いわけではありません。戦犯といえるようなメーカーはなかったと思います。それだけどこも“一辺倒になりそうだった”と感じていました。

▲『アレジン』（藤商事：2014年11月）

2014年8月。とある機種の発表会が開催されました。『アレジン』です。私は率直に思いました。「藤商事も作れるのなら、どこもアクセルATだらけになるだろうな」と。語弊のある物言いになってしまいましたが、藤商事の開発力が乏しいと言いたいのではありません。『RAVE』とか面白かったです。

ただ、パチンコのメーカーという印象が強く。そこが作れるということは、パチスロが本職のメーカーは確実に作れることだろう。そう思ったのでした。そして、もう1つ気になることがありました。導入予定は11月と、まだまだ先だったのです。

それから数日後。保安通信協会（＝保通協）での出玉試験の方法が変更される旨、通知されました。押し順ペナルティの禁止、どの押し順でも高ベース化に。すなわち、アクセルAT機を作る意味をなくさせる規制の発表でした（俗にいう5.5号機）。この前に駆け込みで発表しておきたかったんでしょうね。今から思えば。

押し順ペナルティのあるそれまでの旧基準機の新規設置は2015年11月までとされました。それまでは、出玉試験の方法が変更される前に型式試験に適合している機種に限り設置は続けられました。新しい基準の5.5号機は出てこず、それ以前のものの在庫処分のようなリリースが続くこととなりました。4号機の終焉期と同じですね。

★ニフティの終了。パチ7との出会い。

この頃、私は大きな転機を迎えることとなりました。2015年、9年間お世話になった777@niftyの内部体制の終了です。まあ、いろいろドタバタがありまして。ニフティ株式会社が富士通ではなくほかの傘下となったんですね。その新親会社が欲しかったのはニフティのインフラであり、777@nifytのようなポータルサイトでないことは明白でした。かくして、9年間続けていたコラムも終了。徐々に縮小していき、私が携わる余地もなくなっていきました。

4号機の終わりに雑誌というメインに活動していた場がなくなり、5号機の規制が始まってまた活動の場がなくなっていく。時代は繰り返しますな。

その頃、とあるサイトが1周年を迎え勢いを増していきます。パチ7です。P-martさんのオフ会で知り合った一般の人が、何やらコラムを書いているらしい。いや、正確には正式なコラムではなく勝手に自由帳に書いていただけでしたが（笑）。

ともあれ、活動の場を失っていたわけです。その彼に連絡します。「編集長に会わせてちょ」。なんとなくスカウトされるまま、ここまで来てしまった私にとって、初めての就職活動というか売り込みでした。「こういうことができます。こういうことがやりたいです」という考えを持っていったら、逆に「こういうことってできます？」という提案をいただけまして。そうして続けさせていただいているのがこの場ということになります。うん、懐かしい。

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佐々木真: 代表作：パチスロ攻略ライターの思考ルーチン

裏モノ全盛期に“ギャンブル”としてパチスロを始めたが、技術介入機時代に最適手順を模索するなど“遊技”としての魅力にはまり、履歴書に大きな穴をあけてしまう。2000年よりパチスロ雑誌などで編集兼ライターの活動を開始。現在は、ほぼすべての機種の発表会や取材に参加。法律・規則などの知識をもとに、根幹システムの推測をライフワークとしている。