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インタビュー・ウィズ・スロッター(稀にパチンカー)
2016.10.31
俺は母ちゃんが好きだ! 謎に包まれたモジャ毛の男『アキバのまこさん』の半生に迫る!
さてパチスロに関わるあらゆる人々にインタビューしてその人生設定を探るこの企画。
三人目は俺の盟友「アキバのまこさん」でお馴染み小松原君です。彼との出会い。それは俺のブログを読んだ小松原君からのメールがきっかけでした。うさん臭いプロフィールが添えられてたのでそれを手がかりに彼のブログを見つけて顔写真を拝見したんですが、あきらかにオラついた感じの自撮り写真が気に食わなかったので「いやー最近忙しいんでなかなか連れ打ちとか行けないんですよね」とか言って言外に「会いたくねぇ」と伝え続けてたのですが、鉄のハートを持つ彼はしつこくメールし続けてきました。
んで三ヶ月くらいのらりくらりとかわし続けてたのですけども、そのたびにリスケジュールしてくる粘り気を前に、俺は最初彼のこと完全にホモだと思っておりました。これはもうサシであったら絶対ヤラれるなと。なんやかんやあって今では仕事の繋がりやらでドロドロになってますが、当時から考えると奇跡だと思います。
主な活躍場所がメタル関連とかアキバ系アイドル関連とか映像制作関連なんで、パチ7のファンの方にはあまり馴染みが無いかもしれませんが、パチノフとかでワイワイやってるフィクサーみたいなモジャ毛のオッサンといえばピンとくる御仁もおられるはず。というわけでいってみましょう。
果たしてアキバのまこさんの人生設定は? というかこいつ一体どんなやつなの? それじゃ本編! ヒア・ウィー・万枚!
■中華居酒屋にて。
某月某日。場所は御徒町の中華居酒屋。待ち合わせ場所の駅前に到着すると、金髪のモジャ毛がひとり、腕を組んだ状態で立っていた。小松原君だ。片手を上げて挨拶する。
「まこ、ちょっと痩せた?」
「糖質制限してっからね」 「そうか……」
挨拶はそれだけ。事あるごとに利用している格安の中華居酒屋の方へ、あうんの呼吸で向かう。ほとんど無言で席に付き、ビールとツマミを注文したあと、小松原君がひとつ咳払いした。インタビューを行う事は事前に伝えていたので、まずはこちらから軽く意図を説明する。
「……というわけで、お願いしたいんだが」
「別にいいけど、ちゃんとさん付けで書けよ?」
「わかった」
小松原へのインタビューはこうして始まった。
「てかさ。まこなにやってんの。普段」
「ツイッター見ろよ。お前の知りたい事はそこに全部あっから」
「ごめん、ビューティカメラの自撮りがイラつくからミュートしてるわ」
「奇遇だな。俺もお前のメンヘラツイートがイラつくからミュートしてるし」
席に運ばれてきたビール。無言で乾杯して続ける。
「そうだな……ホールに最初に行った時の事覚えてる?」
「覚えてる。小3とか小4だよ」
「一人で?」
「んなわけねぇだろ。親父とだよ」
「その時に記念にとったビューティカメラの自撮りとかねーの?」
「あー。あるある。あるけどお前には見せねぇ」
「別に見たくねぇけどな。……その時なに打った?」
「『花満開』だったかなぁ」(※西陣のパチンコ)
「面白かった?」
「つまんなかった。当たったんだけどさ、消化の方法とか知らねぇから、親父の所いってさ」
「大当たり中に?」
「そう。お父ちゃん当たったよーっつって。親父慌ててたなぁ。んで2人してダッシュで戻ったら、隣に座ってたオバちゃんがさ、こう……身を乗り出すようにしてハンドル握って必死に打ってくれてたね。自分のも握ってるからダブルよ。ダブルハンドル」
「うはは。ちょっと面白いなそれ。親父さんはなに打ってたの」
「タケヤのモンハウ(※『モンスターハウス』)だな。詰んでたよドル箱タワー。まあ俺親父の別のタワー見たことあるけど。ふふ。これ書いてね」
「そういうシモネタいらねぇから……。えー……と。親父さんについて聞こうか。どうよ、親父さん。ハゲてた?」
「俺の頭見ながら言うなよ。あのな、言っとくけどお前の方がハゲてっからな?」
「分かってるよ。俺は俺の事をハゲてないなんて一言も言ってない。俺はだいぶ前に認めてるからね。高校くらいから自覚あったもん」
「バカ。俺もだよ。まだハゲてねぇ」
「分かってる。まこはまだ大丈夫」
「……ホントに?」
「うん。大丈夫だよ。まだフサ寄りだよ。……俺もだよな?」
「あしのもギリギリ大丈夫。土俵際だけど粘ってる」
「ありがとう。お互いハゲこなしてこ……。ちなみにリアップってさ……」
前からハゲかけてる小松原。 後ろからハゲかけてる俺。 二人してしばし育毛剤について語りつつ飲む。
「で、我々の悩みの元凶である遺伝子のプロバイダ──親父について。俺の親父は大工なんだが、まこの親父さんは何をやってんの?」
「父ちゃんは生きるのが仕事だね。年金のために生きてる」
「サラッと酷い事いうね。元々は何の人?」
「メガネコンサルだよ。うさん臭ぇだろ?」
「別にうさん臭くはねぇけど……。父ちゃんメガネかけてる?」
「うん」
「似合ってる?」
「似合ってるね」
「有能じゃん」
「いやどうだろね。見慣れたってのもあるんじゃない? 俺父ちゃんがメガネ外したら、父ちゃんって分からないし」
「いや有能だろうそれ。メガネコンサルとしては一番の仕事じゃん。顔面の印象をメガネが食ってるわけだし。肉親が顔を分かんねぇレベルって、たぶん強盗してもメガネ外したら捕まんねぇとか、そういう域に達してるぜ。ルパンとか買いにいくるよ。尊敬しようぜ。親父さん」
「そうかなぁ……。でもハゲ散らかしてるしなぁ──」
「ハゲはもういいじゃないか……。許そう……。俺も親父を許してるし……」
右が盟友アキバのまこ
■初スロについて。
どうやら魔術師レベルのメガネコンサル屋らしい父。
その父からハゲの遺伝子を受け継ぎし運命の子、マコトがスロと出会ったのはいつだったのだろう。
「最初に打った台は何だったの?」
「クラコンだね」(※ユニバーサルの『クランキーコンテスト』の事)
「うわ、俺打ったことねーや。何歳よ当時」
「15だね。学校行ったフリしてホール行ってさ。バレたからね。店員に」
「学生だろって?」
「そう。お前何歳だよって聞かれてさ」
「なんて答えたのよ」
「『いくつに見える?』って」
「合コンかよ。それで?」
「『17!』って」
「当てに来てんな。そんで?」
「『残念ッ!』って」
「馬鹿かよ! なんだよそのクソみたいな話は。作ってるだろ!」
「いやホントだって! あったんだよそんなことが。んで正直に15ですって答えたら、菩薩みたいな笑顔で『ほどほどにしろよ?』って言われたもんね」
「……まあ確かに。ゆるい時代だったろうなぁ」
ちなみに筆者のパチスロデビューは2001年前後。悔しいが、デビューは小松原の方が早いらしい。正直いって意外だった。なんで意外なのだろう。何かが引っかかった。何が引っかかってるのか分からないまま流そうとしたが、その違和感の正体は、次の瞬間にすぐわかった。好きな台だ。小松原の好きな台を、俺は以前聞いたことがある。彼が今までで一番好きだった台。それは──。
「大都の『忍魂』だろ? まこのベストスロ台って」
「うん。そうだよ」
「四号機から打ってて、一番好きな台がニンタマなのか」
「変か?」
「うん。少し変わってるかも。いや、ニンタマが名機なのは認めるけどさ。大抵の人って、スロットを打ち始めたばっかりの頃の台がやっぱり一番思い出に残ってたり、面白がって打ったりすると思うんだよね。お前クラコンとか打ってたんなら、当然技術介入機とか大量獲得機とかAT機とかストック機とか知ってるわけだし、その辺でなんか出てくるんじゃねーかなぁって」
「俺の場合、スロットってよりも母ちゃんが好きなんだよね」
「お。なんだそれ」
「ええとね。俺の母ちゃん──チヨコって言うんだけどね。元々パチンカーだったんだけども、50過ぎていきなりスロり始めてさ。その時チヨコがハマってたのがニンタマなのよ」
「……あれたしかARTのメイン小役、色ナビだったよな。目押し大丈夫だったの」
「お前な、チヨコはすごいよ? ニンタマプロだから。目押しどころか設定看破までしてたからね」
「すげえな! 俺の周りの五十代女性、店長が大当たりのタイミング決めてると思ってるよ」
2人で並んでスロットを打つ小松原親子。やれ高設定だ低設定だ。やれ超高確でのチャンス目だ。やれ忍の一字だフリーズだ……。わいわい言いながら楽しそうに打つ姿が、なんとなく目に浮かんだ。
「そう。だから俺はね、ニンタマが一番すきなの。ニンタマってか、母ちゃんが好きなのよ」
「父ちゃんは?」
「トシオ? トシオはいいや」
「──なるほどなぁ……」
■まこさんの中身。
気づいたら店に来てから一時間以上が経過していた。まだ父ちゃんがハゲてる事と母ちゃんがニンタマプロである事しか聞いていない。 ここからは小松原自身について掘り下げてみよう。
「まこにとってスロって何?」
「呼吸」
「今適当に言ったろ」
「いやマジだよ。呼吸ってか……そうだね。生活の一部だから。スロは。あしのもタバコ吸うじゃん。あれと一緒だよ。俺もう、食後とかにとりあえずスロ打ちたくなるもん」
「……ちょっと分かるよそれ」
「な? もう勝ち負けとかあんまり関係なくなって来てない? バジの設定がどうのとか。ああいうのもう興味ない。お金と切り離した所にスロがあって、それは生きる事の延長線上にある感じ」
「でもお前負けたらすげーキレてるよね」
「キレるね。そこはすげーキレる。あしのも負けたらキレるよね」
「キレる。設定関係ねぇって言いながら負けたらめっちゃキレる」
「分かるだろ? そういう感じなんだよ」 「ああ。悔しいけど超分かる」
「要は、メシが不味かったら怒るのと一緒だよ。食うんだよ。残さず。『森の中で食べるおむすびは美味しいなぁ……』って言いながら」
「藤岡隊長……!」
「でもね、不味かったらちゃんと完食したあとでキレるからね」
要するに設定推測とか面倒くさいのだ。我々みたいなゆるいスロッターは。でも打ちたいから打つ。そして負けて怒る。そりゃ本気で勝たねばならない状況になったらちゃんと期待値とか追いかけたりする事もある。が、基本のスタンスが違うのだ。我々──あしのとマコさんの共通点はハゲ以外にもう一つあった。それは「ゆるいスロッターである事」だ。
「まこ、もし生まれ変わるとしたらパチスロ打つ?」
「打たねぇ。俺はパチスロ以外に楽しい事があるのを知ってる。どうせ生まれ変わるなら違う事やりたい」
「例えば?」
「分かんない。分かんないけど、もっとちゃんとやる。何もなかった日ってのを無くしたい」
「何もなかった日……ってのは、要するに『無駄な日』って事か?」
「そうだね。パチスロは勝ったらプラスだけど、負けたらやっぱり無駄じゃん。そりゃ打って楽しかった、とかはプライスレスだけど、もっとなんかあんじゃねーかって。勝った日のパチスロほど面白いものはないけど、負けた日のパチスロより面白いものはいくらでもあると思うんだよね。ギャンブルだから勝ち負けがどうしてもあるから、常に勝つのは無理じゃん? 負ける日もある。その負けた日に『他に何か出来たんじゃねーかな』って思うのが嫌だから、生まれ変わったらスロ禁だよ。打たないね」
「ほぇー……。深いな意外と」
「だろ?」
「じゃあ、今のパチスロ業界について言いたいことは?」
「国のルールに従うべきだね。あらゆるシガラミを無視していうけど、淘汰されるなら淘汰されたで構わない。地下とか潜っても全然打つけど」
「好きなサラブレッドは?」
「マツリダゴッホ。不細工な馬だった」
「不細工好き?」
「不細工が頑張ってるの好き」
「巨乳と貧乳どっちが好き?」
「どっちでもいい。頑張ってる不細工が巨乳だったら巨乳」
「父ちゃんと母ちゃんはどっちが好き?」
「母ちゃん!」
「以上! ありがとうございました!」
■いざ設定推測。
小松原。見た目はららぽーとでディズニー映画みながらポップコーン食ってそうなヤンキーなのだが、中身は割りとしっかりしていた。
知り合った頃はやりたいことがいまいち定まって無いけどやり遂げてやるという正体不明の自信みたいなのだけムンムンと立ち上る感じが微笑ましい野郎だったが、その後彼は青春時代より続けるバンド活動の繋がりでプロミュージシャンとの絆を強め、今は彼らと番組制作なんかをやってるらしい。大出世である。口の周りをバターだらけにしてリロ・アンド・スティッチとか見てた時代から比べると、もはやエヴォリューション(進化)といっていい。
ちなみに筆者も何度か彼の番組に出演させて貰ったことがある。楽しかった。なお余談になるが、彼の所属するバンドは「まんせぃ」という。今度アルバムが出るらしい。超出世である。魚卵からいきなりブリの照り焼きが生まれた感じだ。近くで見てる身としては感無量である。まあ俺は多分買わないけど、皆さんが投げ銭のつもりで冷やかすのを、俺は止めはしない。デモを聴かせて貰ったけど普通にカッコよかったんで感想は言ってない。ハラが立つからだ。
で、そんな彼のインタビューだが、分かった事は3つ。
父ちゃんがハゲ散らかしてる事。母ちゃんがニンタマプロであること。そして小松原はマザコンであることだ。 それを踏まえた上で、人生設定推測。やってみよう。
多分こいつの人生はギャンブル性が非常に高い。安定とは無縁の博打台である。確実に奇数。それもブチ込みさえすれば設定不問で出るやつだ。ただ通常時は死ぬほど辛い。リプも揃わない。死んだ魚のような目で投資に耐え、宮大工がしつらえたようなピタッと閉じた門を突破していきなり輝きだす。そんな性質が見える。
よし決めた。これだ。
初代「ミリオンゴッド」の3。ただしストックモードスタート。オマケにサブ基盤が謎のバグを起こしていて、SGGは揃わないものとする。天井とゴッド絵柄だけで頑張れ!
以上、まこありがとう!
んで次週はいよいよ「天草ヤスヲ」先生だ。先生って呼ぶとムズ痒そうな顔するのでこう呼ぼう。よろしくオナシャス、やっさん。シーユーネクスト万枚! チャオ!
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- あしの
- 代表作:インタビュー・ウィズ・スロッター(稀にパチンカー)
あしのマスクの中の人。インタビューウィズスロッター連載中。元『セブンラッシュ』『ニコナナ』『ギャンブルジャーナル』ライター。今は『ナナテイ』『ななプレス』でも書いてます。
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