あのときオレはクズだった　第25回　~第2部ガイド編~

田中（クズプロ田中→クズ田中→田中）あのときオレはクズだった~田中の回胴回顧録~

北の大地でハッスルするバカの運命はいかに

　二泊三日で北海道に行くから、スケジュール空けておいて。ていうか、お前にスケジュールなんてないか。ぎゃははは。　真冬なのに、黒光りするカブトムシのような顔をした塾長おじさんからそんな連絡があったのは、白夜書房に潜り込んで1年が経とうとする2003年1月下旬のことだった。

　このクソ寒い時期に、なにゆえ北海道に行くのか。一瞬そう思ったが、すぐに愚問だということに気がついた。パチスロバカが行く旅は、どこに行こうが必然的に旅打ちになるに決まっている。元JALパックで働いていた塾長おじさんの手配で、二泊三日で2万ちょいという格安ツアーを確保。バカどもは真冬の新千歳空港に降りたった。

　10年以上前の話なのでこれで参加者全員かどうかは記憶が怪しいのだけど、メンツは敬称略で塾長、ういち、山本コーラ、中武一日二膳、ポロリ、ひやまっち、濱マモル、まりも、田中に、まだガイドに入ったばかりのバイソン松本(リトルさんやゴトロニさんもいたっけなあ？)。10人以上の大所帯だったのだけど……それよりもバイソン松本くん。キミのその服装、どう考えても寒いよね？

　近所のコンビニにふらっと行くような薄手の上着を1枚だけ羽織ったバイソンが、ぶるぶると震えていた。というわけで暖を取ろうと近所のパチンコ屋に飛び込む。

　当時はまだ昔の台が残っているパチンコ屋も多く、駅前の店でリノを打ったり、保留連のフィーバーパワフルを打ったりしたのだけど、4号機世代の自分としては知らない台を打っても、いまいちピンとこない。とりあえず時間つぶしに(初代)ミリオンゴッドでも打つかな。そんなことを考えながら適当に打っていたら、気がついたら10万円負けていた。

　っざけんなよ。なんでわざわざ北海道まできて10万も、しかもどこでも打てるゴッドで負けなきゃいけないんだよ。そう嘆いても後の祭り。どう考えても自業自得なわけで、スロに関しては正直、この北海道旅行でロクな思い出がない。しかし、だ。だからといってホテルに戻って体育座りをしている場合ではない。ここは札幌、日本屈指の歓楽街すすきのである。

　知り合いと待ち合わせているからと、そそくさと夜の街に消えていった塾長とういちさんを残したメンバーでカニを食い、さてと、どうしたものか。そう考えていたら、まりもくんがそっとささやいた。ねえ、せっかく北海道まできたんだから、ナンパしようよ。

　ナナナ、ナンパ!?　人見知りの自分は面識のある人ですら慣れるまでうまく話せないのに、知らない女子に声をかけるなんて考えられない。普段なら絶対に断っていた。実際に、このときも断ろうと思った。だけど、考える。今日の10万負けをなかったことにするには、タダで女子といやらしいことをするしかない。それしか今日1日をチャラにする方法はない。景気づけに酒をがぶ飲みして、勢いよく街に飛び出した。

　N○KKAの看板があるすすきののメイン交差点。そこをいったい何往復しただろうか。酔いは覚め、体は芯から冷えている。いくらまりもくんが声をかけても、横でヤンキーチックな色メガネをかけた顔の長い変な男がもじもじしていたら、誰も不気味がってついてきやしない。どうしよっか……。二人で途方に暮れていたら、別行動していたスタッフから連絡が入った。

　なにしてんの？　早く行くよ。キャバクラ行くよ！

　キャバクラねえ。知らない人と話したくないんだよなあ。でも、しょうがない。やることもないし行ってみるか……。

　ハーーーッスルターーーーーーーイムッッッ‼‼‼‼

　札幌のキャバクラはハッスルタイムがある、それは素敵な社交場だった。もう、10万円なんてどうだっていいや。オレはこの乳房に埋もれて窒息死してしまおう。ああ、なんだか眠くなってきたよ……。

※編注
地域ごとにキャバクラが意味するところは異なったりします。関東で言うキャバクラは札幌で言うと「ニュークラブ」。札幌で言う「キャバクラ」は関東で言う「おっ○いパブorセクキャバ」という位置づけになります。ハッスルタイムがあるということから推測すると、田中氏が窒息死しようと思ったお店は恐らくおっ○いパブでしょう。

目が覚めたら、ホテルのベッドの上だった。同室のバイソン松本はすでにおらず、時間を見たら12時前。ああ、そういえばキャバクラの後に変なバーに行って、そこでもまた飲んだんだっけ。とりあえず、便器を抱きしめて軽くマーライオンを発射したあとに、探りの連絡を入れてみる。もしもし、いま起きたんですけど、どこにいますか？

「何人かはビッグシオのゴッドver.を打ちに車で行っちゃったけど、オレ達は朝から狸小路にある店でダイナマイト打っていて、いまはみんなで近くの店に移動したよ。ほら、早くこないと良い台埋まっちゃうよ‼」

　おいおい、あんだけ飲んどいて、きっちり朝イチから打ってんのかよ。いったいどれだけスロバカなんだ。そう考えると、なんだか嬉しくなってきた。自分の好きなものを、こんなにも好きでいる人間が集まっている。最高じゃないか。さあ、昨日の負けを取り戻すぞ‼

　取り返す気満々でゴッドを打って、さらに6万負けた。さて、この6万負けを、今日はどうやってチャラにしようかな……。

　すすきのの夜は、長い。

あのとき打っていた「ミリオンゴッド」

【メーカー】ミズホ　【販売年月日】2002年6月　【タイプ】Cタイプ（AT機）
2002年にミズホが世に送り出した爆裂マシン『ミリオンゴッド』。予備知識なく夕方から打ってあっという間に7万円負けたときは二度と打つかと思ったもんだが、朝イチの天国狙いが有効だと知ってからは、稼がせていただきました。一撃5000枚が確定するゴッド揃い。痺れたなあ。

クズの成績表：★★★★★（神の時間潰し-乳房ver.-）

神（ミリオンゴッド）を時間潰しに使うって、神（お金持ち）にだけ許された遊びですから。
「クズさ」も振り切れると神々の遊びに手を出すもんなんですね。

いやぁでも、ここ最近のクズっぷりは堂々たるもんですよ。
「オレはこの乳房に埋もれて窒息死しよう」なんてクズを通り越して、ちょっとハードボイルドっすもん。

田中氏の素晴らしき活動はコチラから！

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田中（クズプロ田中→クズ田中→田中）: 代表作：あのときオレはクズだった~田中の回胴回顧録~

パチスロ好きが高じて21歳の時にパチスロ必勝ガイドにてライターデビュー。若手時代は勝ちキャラだったものの徐々にクズっぷりを発揮し、昼はギャンブル、夜は酒をモットーに活動を行う。30歳で思い立ってフィリピンに英語留学へ行き、2012年の2月より世界の子ども支援を行うNPO法人セブンスピリットを設立。フィリピンのセブ島でNPO活動をしながら執筆も行っている。