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パチスロワイルドサイド-脇役という生き方-
2018.09.18
『5%の恐怖』~悲鳴を上げた身体~
――「痛…痛たたたたた…」
目を開けると、見慣れた天井が広がっていた。グレーのそれは黄色く薄汚れ、所々塗装も剥げている。イスから起き上がり、大きく伸びをした。次いで肩と腰をさする。慣れたとはいえ、やはりイスで寝るのは気持ちがいいものではない。時計を見ると、午前2時を少し回ったところだった。
紙パックのお茶をひと口飲み冷静さを取り戻すと、カタカタとタイプする音に気が付いた。新人のHくんがパソコンに向かっている。こんな深夜だというのに。
★深夜の戦い
俺が徹夜をしているのは仕方がない。やっとアルバイトからフリー編集になったばかりで、自分の力量を少し超える程度の仕事を貰っていたからだ。無理は承知で大量のページ数を受け持った。対してHくんは徹夜をするほどではないハズだが…。
さりげなく進行表を確認すると、Hくんはすでに校正段階の予定だった。しかし彼は難しい顔で解析数値の表を作っている。まだ素材(写真や表)が集まっていないのだろう。
――「お疲れさま。進行、大丈夫?」
Hくん「…大丈夫です」
Hくんは口数が少ない。後輩ではあるが、歳は俺より3つ4つ上だったと記憶している。
――「写真はもうデザイン会社に送ったの?」
Hくん「…まだです」
――「朝までには全部送らないと…」
Hくん「分かってますけど、もう寝ます」
――「ええ!? なんで?」
Hくん「お腹痛いんでムリです。寝ます」
――「え? いや、お腹が痛いのは仕方ないけど…」
Hくん「おやすみなさい」
――「え、ちょっと…」
そう言ってHくんは休憩所に消えていった。これはマズいことになった。
「なあ? お前が付いていながら、なんで進んでねーんだ? お前が責任持って見てやるのが筋だろ? 違うか?」
明日、編集長が言うであろうセリフが脳内にこだまする。コレは俺がやるしかない! 俺も人を手伝っている余裕はナイが、このままではHくんがページを落としてしまう。誌面作りにおいて、それだけはあってはならないことだ。
俺はひとり洗面所に向かい、顔を洗って気合いを入れた。
今は1時間だって惜しい。しかし彼のページの写真など、たかだか数十点だ。新人なら数時間を要するが、慣れた俺なら1時間くらいだろう。俺が代わりにやるしかねえ!!
俺はHくんのラフ(ページの設計図のようなもの)を見ながら入るであろう写真を予想し、デスクトップのフォルダに必要な写真を集めていった。ただ集めただけではない。余分なところをトリミングしたり、リールを合成したりと、簡単な加工も施した。この作業が新人には難しい。当然、俺のページの作業時間を圧迫したが、これも先輩の務め。滞りなく雑誌を完成させるためには仕方ないことなのだ!
数時間後――
「おい、いつまで寝てんだ! 起きろ!」
編集長の声で目が覚めた。どうやら机に突っ伏したまま寝落ちしたらしい。
編集長「お前のページは出来てんな?」
――「はい、チェックお願いします」
編集長「おう。で…彼は何でまだ写真集めてんの?」
――「へ!?」
飛び起きて共用のパソコンに目をやると、Hくんが写真を集めているではないか!!
編集長「お前、昨日泊まったんだよな?」
――「はい…」
編集長「見てやんなかったの?」
――「見ましたよ! でもお腹が痛いから寝ると…」
編集長「で、写真がまだ揃ってないと…」
――「いや、どうしても寝るって言うから、代わりに俺が全部写真を集めてあげたんです」
編集長「ほう…じゃあどうして彼は写真を集めてんだ?」
――「何ででしょ…」
恐る恐るHくんに声を掛けた。
――「え~と、写真を集めてるの?」
Hくん「…そうです」
――「俺が集めた写真は? デスクトップに分かりやすく置いて、キミの机にも付箋を貼っておいたよね?」
H「ああ、捨てました」
――「は? す…捨てた?」
H「ええ、僕がイメージした写真と1つも合ってなかったんで、全部捨てました」
――「え…ウソ…」
編集長「はは! 大物だな」
――「笑ってる場合すか! 俺の1時間が…」
当時はこんなことも多かった。入って3日目の後輩から、ページのデザインをボロクソに言われたこともあったなぁ。編集部は、つい先日までパチスロで生活していたような連中の集まりだ。謎の強いこだわりを持つ新人も少なくなかった。今では昔ほどの曲者は減り、かなり真っ当になったけれど。
★死の予感
紆余曲折を経て、無事に校了を迎えた。「校了」とは、印刷会社に全てのページデータを納品し終えた状況、つまり編集作業の完了を指す。この解放感が凄まじい。おそらく刑期を終え、シャバに出る感覚に近いだろう。
編集長「よっしゃ、みんなで打ちに行くぜ!」
編集一同「行きましょう!」
校了を迎えたのは正午過ぎ。そのまま班のみんなと近所のホールへ雪崩れ込んだ。校了明けの我々に、立ち回りなどナイ。およそ1週間抑圧されていた反動で、ただ打ちたい機種を貪るように打つだけだ。無論、勢いで数万円負けることも珍しくない。
俺は適当な「吉宗」に腰を下ろした。あの高確率(前兆ステージ)を味わいたい! ただデカ家紋さえ見られればいい! 血走った眼で打ち始めると、わずか投資2000円で手が止まった。
あれ、なんかお腹が痛い――!?
俺は元より胃腸が弱いため、腹痛など日常茶飯事。よって「お腹が痛くて仕事ができない」などといったことはナイ。お腹は痛いのがデフォルトなのだ。お腹が痛くとも腕さえ動けばパチスロは打てる。仕事もできる。
いや…待て、痛い…
痛いというか…
漏れる!!
腹痛の上級者だからこそ分かる。これは我慢できないヤツだ! 止めようと思っても止められないパターンだ!! 一刻の猶予もない。急いでトイレに行かなくては!
だが、そんなときに限ってなかなか空かないのがホールのトイレ。悶えながら3分ほど待ったが、個室が空きそうな気配は一向にない。俺の限界はすぐそこまで来ている。たまらずトイレを出て店員に声を掛けた。
――「しゅ、しゅいましぇん…個室が空かなくて」
店員「え? 男子トイレここしかないし…限界ですか?」
――「はい、もう我慢できしょうもないでしゅ…」
店員は一瞬思案したのち、決意したように頷いた。そして、女子トイレの前に立ちはだかった。さながら門番のように。
店員「僕がココを守ります! 女子トイレを使ってください」
――「ええっ!? 大丈夫でしゅか?」
店員「ちょっと中を確認しますね…うん、大丈夫です!」
――「ま…マジしゅか? このご恩は必ずや…」
店員「さあ、急いでください。間に合わなくなる前に」
――「ありがとうございましゅ」
※お食事中の方、繊細な方は読まないでください。
個室に入るや否やズボンを降ろし、便器に座った瞬間…
シャーーーーーッ!!
どうやら相当くだしていたらしい。
危機は去った。早く拭いて女子トイレから出ねば。早く…
ん? な、何コレ…
真っ赤じゃん!!!
そう、それは「BIG」ではなく鮮血だった。俺は狼狽した。下血など初めてだ。死ぬヤツじゃん。これ、死ぬヤツじゃん!
女子トイレを出てると、店員が心配そうに声を掛けてきた。
店員「間に合いましたか」
――「はい…ありがとうございました(小声)」
店員「…掃除はしておきますね」
――「ほんとに間に合ったんです(小声)」
店員「はぁ…」
もちろん、もうパチスロどころではない。連日の徹夜が祟り、身体が悲鳴を上げているのだ。帰ろう。せめて最期は我が城(アパート)で…。
――「編集長、帰ります」
編集長「どした? まだ来たばっかじゃねーか」
――「ちょっと体調が…」
編集長「そうか、ゆっくり休めよ」
――「はい…お世話に…お世話になりました」
編集長「お…おう…」
帰宅途中、俺はすでに悟っていた。この道を歩くのも、この電車に揺られるのも、おそらく今日が最後だろう。帰宅後は粥を食べ、そっと布団に入った。もう目を覚ますことはないかもしれない。ああ、一人暮らしはなんと孤独なのだろう。おやすみ、我が人生――。
★5%の恐怖
カーテンの隙間から漏れた陽光に射られ目が覚めた。時計の針はすでに正午を回っている。20時間ほど寝ていたらしい。生きている喜びをひとしきり噛みしめ、スグに原付に跨った。行き先は言うまでもなく大きな病院である。
医師「なるほど、大量の下血ですね」
――「ええ、死ぬのでしょうか?」
医師「はは、大丈夫ですよ。下血の95%はレッコウです」
レッコウ? 聞き慣れない言葉だ。
医師「裂ける肛門と書いて裂肛。要するに切れ痔です」
――「ああ、なるほど」
医師「残る5%はガンです」
――「!!! が…ガン?」
医師「ええ、大腸ガンです」
――「そんな…俺まだ23なのに」
医師「大丈夫、たった5%ですから」
5%でガン…
5%…
1/20…
引けますよ。
20分の1なんて簡単に引けますよ!
――「先生…5%て…先生…」
医師「心配ないですよ」
――「5%て…」
医師「一応検査をしてみましょう」
――「5%て…お願いしますぅ」
医師「そこに横になって、お尻を出してください」
――「いきなり? …優しくしてください」
医師「うん、触った感じは大丈夫そう」
――「ほんとですか?」
医師「念のため明日、内視鏡で見てみましょう」
――「ありがとうございます」
医師「明日の朝、腸内をキレイにする薬を飲んでもらいます」
――「はい…」
医師「2リットルあるんで頑張ってください」
――「2リットルも!?」
医師「しょっぱくて不味いから、よく冷やして飲んでくださいね」
――「…頑張ります」
検査結果は言うまでもなく、無事に95%の方でした。 まさか23で切れ痔になるとは。 仕事も趣味も座りっぱなしだから仕方ないけど。
先生、スロッターにとって5%は大きすぎますよ。 1/20なんて、簡単に引ける確率ですもん。
診断が出た翌日――
勢いよくカーテンを開け放ち、俺は陽光を浴びながら大きく伸びをした。ああ、こうやって無事に朝を迎えられるなんて、なんて幸せなんだ! 晴れ晴れとした気分でTVをつけると、ちょうど朝のニュースの時間だった。
アナウンサー「続いてのニュースです。大腸の内視鏡検査に用いる下剤により、死者が複数出た問題で、昨夜、製薬会社が会見を開きました…」
――「昨日飲んだ薬じゃん!!」
※実話です
この仕事をしていると、やはり痔になりやすいんでしょうね。編集部でもホールでも座りっぱなしですから。憧れのイケメンライターも、あの美人ライターも、みんな痔かもしれませんよ。パチンコ・パチスロを嗜むみなさんも、他人事ではありません。くれぐれも裂肛にはご注意を。
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- ラッシー
- 代表作:パチスロワイルドサイド -脇役という生き方-
山形県出身。アルバイトでCSのパチンコ・パチスロ番組スタッフを経験し、その後、パチスロ攻略誌編集部へ。2年半ほど編集部員としての下積みを経て、23歳でライターに転身。現在は「パチスロ必勝本&DX」や「パチスロ極&Z」を中心に執筆。DVD・CS番組・無料動画などに出演しつつ、動画のディレクションや編集も担当。好きなパチスロはハナビシリーズ・ドンちゃんシリーズ、他多数。
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