オススメ機種と死のサンバカーニバル

【本編】家スロオススメ機とは

本人が好きな機種が一番だよという結論を含め、ここまで多くの実機保持者の方々が語られています。私もほぼ同意見で特に言うことは無いのですが、それでもあえて、岡井のオススメをということを考えて一機種ご紹介させていただきます。
なお音量をはじめとした注意事項は、他の方のコラムと同様なので割愛させていただきます。

◆プレイボーイ（山佐）

※左から『プレイボーイ』『同LImitedEdition』『同30φ』。ver.毎に仕様は異なるが、当コラムでは中央のLImitedEdition基準で記載。

2007年発売の完全告知のRT付きノーマルタイプ。上部ランプが光れば当たり、子役重複はブドウがメイン。

◆オススメポイント
・シンプルでわかりやすいゲーム性
　遊びに来たパチスロ未経験者にも紹介しやすい
・ストック切れの心配も無い
　久しぶりに遊びたくなっても安心
・100種以上の多彩な違和感告知演出
　コンプリート派にも手ごたえ十分
・液晶非搭載ゆえにハード面の強さがある
　替えがききづらい液晶問題とは無縁
・強力な一撃フラグは無く出過ぎない
　長大な特化ゾーン類も家では単調化してしまう
・逆押し等変則打ちも楽しめる
　告知と出目で一喜一憂できる
・インテリア性抜群の筐体デザイン
　ブドウや黒７といった図柄もハイセンス
・サウンド面も良好でセンスが光る
　揃えたラインで曲が変わるという凝りよう


ホールでみせる顔とは違い、家庭に導入すればそれは遊技機、いわば玩具です（厳密に言えばホールでも遊技機なのですが）。いかにお気に入りの玩具でも飽きはくるもので、前に電源を入れた日を忘れるような時が来るでしょう。

そんな時にハードとしての耐久性や取扱の簡便さ、インテリア性の高さも備えていれば邪魔に感じることも少ないと思います。そしてボーナスを揃えてコインを増やすという普遍性をもったゲーム性があれば、家スロとも長く付き合えるのではないでしょうか。

そして、ひそかにこの機種が持つ「見た目のオシャレさ」と「わかりやすいゲーム性」は、何かのきっかけで部屋を訪れた友人に紹介したり、自慢したりという趣味の広がりがイメージしやすいのではとも考えます。



以上の理由から、岡井はパチスロプレイボーイを家スロにオススメします。
欲を言えば技術介入要素がもっと多ければよかったと思いますが……

ともかく、キュピーンと兎が色付けば、私もプレイボーイ、キミもプレイボーイだ。










【余談】家スロがまねく恐怖

家スロといえば、学生時代の友人、今井君を思い出す。
大学近くにアパートを借りていた彼の部屋は、連日暇をもてあました連中のたまり場になっていた。ご多分にもれずパチスロに熱中していた彼が、家スロを購入するのはある意味自然な流れだったのかもしれない。

「岡井、リオ買ったから遊びにこいよ」

まさかの人身売買宣言かと思ったが、話をきくとネットの『スーパーブラックジャック』を購入したらしい。

「ネットオークションで安く出ててさ、ネットでネットの台を購入したワケよ」

そう言って一人ゲラゲラ笑ってる彼を見て、なぜコイツと友人なんだろうかと一瞬考える。

その日の夜、今井君の部屋に到着すると確かに家スロがあった。やや狭いアパートの部屋に鎮座する筐体は、ホールで見るよりも一層大きく感じた。確認するとボリューム調整やコイン不要機はついていない、正気か今井君。

「ネットでネットだよ、ハハハッ」

まだ言ってた、彼が正気じゃないことだけは伝わった。



多くの方が語られているように、家スロの音はそりゃあもう結構なボリューム。筐体のＢＧＭやＳＥだけでなく、リールやらホッパーやら、ホールでは気づきもしなかった彼等も相当なアピール力を保持し、コインをベロベロと吐き出してはガシャガシャ、はっきり言ってクッソうるさい。そのやかましさから今井君の部屋でサンバカーニバルが開催されているのかな、と疑うほどだ。

そんな今井デジャネイロでは今夜も仲間が集まりビール片手にカルナバル。
それぞれが思い思いのレジャーを楽しむアメリカンスタイル(ブラジルじゃねえのかよ)。
ある者はエヴァンゲリオンのＤＶＤを鑑賞し、またある者はサッカーゲームに興じている。

私と今井君は購入されたばかりの名機『スーパーブラックジャック』の前に座っている。申し訳程度に発砲スチロール製のブロックが敷かれているものの、ほぼ床に直置き状態。ほどよいアルコールも手伝って、演出や出目にキャッキャウフフする私と今井君、ＢＩＧを揃えてボーナス中のミニゲームの行く末を見守っていた、その時。

ピンポーン♪

「押し順成功？」
「いや違う、ウチの呼び鈴だわ」

馬鹿な学生が馬鹿な会話を交わし、家主である今井君が玄関に進む。ドアが開けられると、そこには顔色の悪い小柄な青年が立ってた。

「今井君、ちょっと……音が……」

どうやら下の部屋の住人で、今井君とは顔見知りの様子、聞くと同じ大学に通う後輩のようだ。ごめんね、気をつけるよ、赤ら顔でそんなことを言いながら再び部屋に戻る今井君。筐体の下に座布団が追加され、防音を試みた。

「ようし、これで安心だ」

なんの根拠もなく安心宣言をする男、今井。先程よりはマシになったとは思うものの、根本的に部屋全体がうるさいのだ。ウイイレをプレイ中の加藤は興奮して床をバンバン叩いてる、おいやめろ。

ピンポーン♪

そうらおいでなすった、後輩君の登場だ。

「今井君、マジで勘弁して、オレ明日早いから寝たいんスよ……」

彼は先程よりもいくらが強めの口調で言う。
悪い悪い、こっちもももう寝るからさ。悪びれも無く言う今井君。部屋を見渡すと数人の酔っ払いが床で寝ている、確かにみんなが寝れば自然と部屋も静寂をとりもどし、後輩君も安眠できるはずだ。

ホントお願いしますよ、そう言い残し再びドアが閉められる。
さすがに反省したのか、今井君は下皿やスピーカー付近に防音対策だと、そのへんに投げ捨てられていた雑巾をガムテープで貼り付けだした、なんか汚い。ぼろ雑巾を身にまとったリオは、見た目はともかくかなり静かに動くようになった。

ウイイレで大騒ぎしていた加藤もいつの間にか腹を出して寝ている、どうでもいいが加藤は一応女だ、それも漫画ドラゴンボールに登場したセルの第二形態に似ている。



このくらいなら許容範囲だろう、私もそう思い、今井君がプレイするブラックジャック演出を見守った。

ストックターイムッ！！

こもりまくった声とともに、本機の見せ場ストックタイムが発動、静かに親指を立ててこちらを見る今井君がなんかムカつく。彼がしまりのない表情でレバーを叩き続けると、ほどなくして激アツのリオカットイン演出が流れる。

「イエッス！イエスイエェッス！」

ハーバルエッセンスで髪のツヤがよみがえった欧米女性のようなリアクションをする今井君。
いいから早くまわせ、そう言おうとした矢先、興奮した今井君の力強いレバーオンによって、
雑巾でくるまれ座布団に載せられた筐体はバランスを失い、思いきり転倒した。





ものすごい音がした。

重量感のある筐体が床に叩きつけられ、おまけにコインが散乱。
部屋で寝ていた酔っ払い達もさすがにとび起きる、これがサンバカーニバルならばもはや最高潮で、興奮しすぎた参加者達も失神するレベルだ。ちなみにセル第二形態でおなじみの加藤だけはイビキをかいて寝続けていた、どういう神経してるんだコイツ。

茫然とする私と今井君の背後のドアが、今度は合図も無く開け放たれた。

「てめえらいい加減にしろォ！！！」

金属バットを手にした、後輩君とおぼしき男が部屋に突入してきた。先程までの顔色の悪い小柄な青年はもういない、そこにいるのは激昂して耳まで赤くなった鬼神だ。

本場ブラジルでのサンバカーニバル開催時期には、間接的なものを含め少なくない死人が出るという、ここ今井宅のサンバカーニバルでも死人がでるのだ、それも今夜。

「コイツかぁ！！」

横たわる『スーパーブラックジャック』を発見した鬼神は、その勢いでバットを振りかぶる。
筐体から吐き出されるストックタイムのＢＧＭが、私には蛍の光のようにも感じられた。

「リオっ！」

今井君が鬼神に飛びかかる、それはリオへの愛情からか、購入したばかりの筐体の金額を考えてか。理由ははっきりしないまま二人はもつれて転倒する、倒れ込んだ先にはセル第二形態そのものの加藤が寝ていた。

「ンゴッ！？」

男二人が覆いかぶさるかたちになり、流石のセル第二形態も野生の猪のような声と共に目を覚ます。事態をのみこむまでに顔を見合わせる二人とセル、状況把握が進むにしたがい怒りに震えはじめるセル、

「ぶるうああ！　このドすけべ野郎ども、寝込みを襲うなんて最低！」

セル渾身の張り手が炸裂し、男二人は部屋の反対側まで吹っとばされボロ雑巾と化した。





その後の今井君は、「寝込みを襲われた」と大学で拡散エネルギー弾を発射したセルによって、女子に白い目で見られることとなり社会的に死んだ。
ちなみに男子からはセル第二形態に立ち向かい死んでいった男、と敬意をこめて「天さん」と呼ばれるようになった。



死のサンバカーニバルが繰り広げられた今井宅。
後にネットより『リオ・デ・カーニバル』が出た時私は、奇妙な縁を感じずにはいられなかった。

どうか気を付けて欲しい、家スロとはかくも危険なものなのだ。

10