責任転嫁のフルーツチャンス

今朝も時計代わりに流している朝のニュース番組で占いコーナーが始まる。

誕生星座によって今日の運勢が決まるとの謳い文句で、12の運勢が宣言されていくのを歯を磨きながら眺める。

「なんで人間の運勢が12種類しかないの？　ダメ占い、この世の中に何人の人間がいると思ってるの？」

キャリアウーマンみたいな口調で、テレビ画面にツッコミを入れる。
まったくくだらない、興味ないぜ、ラッキーアイテムは旬のフルーツ？　それもうラッキーとかじゃなくただ美味しいモノだろ、うまいフルーツを食べれば誰でもハッピーでラッキーだ。
悪態をついてはいるがしっかり自分のラッキーアイテムを聞いていた、あてにはしていないが興味はある、つまりそういうことだ。

テレビ番組の占いコーナー等も勝負に出る理由となると、身近なゲンかつぎの一種と言えます。「もともとそうするつもりだった」というものでも誰かが推奨・賛同していたということになるとそれが後押しとなって行動につながっていき、それは物事をポジティブに進めるうえで有効な手段だと考えられます。

反面、自分が行動する理由を他に求めている、「誰にこう言われたからこうした」ということは、裏を返せば失敗した時にあたかも自分に責任が無いようにふるまう言い訳にもなります。このあたりは占い師や預言者、祈祷師の類と時の権力者の関係を調べてみると面白いと思いますが、今回は脱線し過ぎるので別の機会に。



ホールを徘徊していると3000G回っていて設定6もあるんじゃないかというデータ数値を示している空き台を発見し、お宝ゲットだぜとばかりに着席した直後に信じられないほどハマる、というのはスロッターならば誰しも経験する現象ではないでしょうか。高設定の『サンダーVリボルト』だと思っていたらまさかのビッグサンダーマウンテンだった、スランプグラフも大迫力の急降下でスリル満点だよ、ってやかましいわ。

私は基本的にゲンかつぎやオカルト的なものはあまり気にしないタイプですが、キツいハマりが繰り返されると一旦席を立つようにしています、少しタイミングを外して仕切り直しというつもりで店内を巡回し、飲み物等を買って席に戻ります。考えてみればこれも「ハマった時には席を外して流れを変える」というゲンかつぎと言えるでしょう。

ふぅ、600ハマりだけどまぁこのくらいなんてことはない、ちょいとBIG連をかませばすぐに取り戻せるさ。

想定の範囲内ですというような余裕を作った顔で席を立つ。店内の自動販売機が聞いたことのないメーカーのもので、不安になりながら買ったコーヒーが妙に薬品臭くてテンションも急降下のビッグサンダーマウンテンだけど私はクールに再度席に戻る、なんせ合算が1/110でREGも1/280以上で推移している台、私が打ちだしてからは1000GでBIG一回という設定マイナス8くらいに豹変してるけれど信じて打ち続けるべきだ。

隣の男がデータランプをチラチラ見ている、私が撤退すればすぐにでも移ってきそうな雰囲気、残念ながらそうはいかないぜと機械的な動作でサンドに現金を投入し続け、感情を忘れたレバオンマシンと化した岡井。光を失った瞳でなおも小役を取りこぼさない、REG中のビタ押しも一発成功でバシッと決める私の迫力に、隣の男も「コイツ……修羅だぜ」と今にも椅子から転げ落ちて失禁しそうだ。それはそうとさっきREG引いたはいいけどまた700もハマっている、ショックとあいまって失禁しそうなのは私の方だ。

まずい、このままでは「おもらし修羅」としてホールの伝説となってしまう恐れがある、そう考えた私は仕切り直しを兼ねてトイレに入り用を足し、備え付けの石鹸で入念に手を洗う、界面活性剤よ、私の穢れを浄化しあのサンダーＶが設定6だった頃の記憶を取り戻してくれ。さぁ、石鹸の香りも爽やかなクール岡井が気持ちも新たに勝負再開、隣の男も目に焼き付けるがいい、修羅の戦を。





ビッグサンダーマウンテンのスランプグラフコースターは地下3階くらいが終着点となった。

うん、仕方ない、立ち回りとしては悪く無いさ、あの時点で期待値はかなりあった台だよ。問題があったとすれば深追し過ぎたことかもしれないけれど、これはめざ◯し占いで今日は勝負運が絶好調って言われたからなんだよね、あれには騙されたよ、適当なこと言ってくれてね、うん、だから私のせいではないよ、占いが悪いんだ、占いの責任だよ、明日は、明日こそは……

そうして人は今日を慰めるのです。5月からはさくらんぼが旬だそうです。

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