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スロプロになった日
スロプロになった日
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ダストさん
- 投稿日:2021/12/12 22:33
※長文です
何事においてもその道を極める、所謂プロになる、というのは簡単なことではない。
例えば麻雀。はっきりいって、俺は麻雀が下手だ。スジ、カベは理解している。牌を切る時は場の捨て牌を見て、上がれる確率が低い方を切るようにしているし、基本は抑えていると思う。
しかし、役満などテンパろうもんなら、デラぺっぴんを前にした中学生くらい興奮を抑えることが出来ないし、なんならリャンシャンテンくらいからもう過呼吸気味になる。そこへ、トイメンから「ロン。平和。」と言われた日には、4号機の終わりを告げられたあの時と同じくらいがっかりするし、トイメンのクソ野郎には本気で殺意を覚える。
何度か後輩である雀荘の元メンバーと卓を囲んだことがあるのだが、それでもレベルが違う。一度役満を振ってしまった際、奴は顔色一つ変えず、「ロン。大三元。」と手牌を倒した。点棒を失ったことよりも、奴のクールな態度が気に入らず、「てめえ!もっと喜べよ!」と見当違いの説教を垂れてしまった。
きっと、麻雀においては感情など不要なのだろう。
スロプロにおいても同じ事が言える。
知識、技術を身につけるのはもちろんのこと、前日の下見から狙いを絞り、当日は朝早くから並ぶ。もし狙い台が取れなければ他の狙い台、もしくは店移動。二の矢、三の矢を放ちつつ、もしも勝てる台に出会えなければ、打つ事なく待機。
エンジョイ勢の俺にはとても真似できない。
狙い台などなく店に行き、本能の赴くままに爆裂AT、もしくは荒めのストック機に着席し、魂の勝負をする。財布の中身が尽きると銀行のATMに直行。たまに通帳記帳をすると、1日に3回ないしは4回、3万ずつ下ろした日が何度もあり、我が事ながらため息が出る。
吉宗との出会いは、そんな荒んだ生活を送っていたあの頃だった。何かのAT機でボロボロにやられ、死んだ目でホールを彷徨っていると、新台のシマに1台、空きがあった。それが吉宗だった。
液晶を見ると、丸顔で眉毛が輪郭からはみ出した、なんともかわいらしいお殿様がいらっしゃる。愛するシェイクの後継機であることは知っていたので、中身が可愛らしいわけがないのだが、今の傷ついた心を癒してくれそうだ、そんな気がしてすかさずタバコを放り込んだ。それが地獄の始まりだった。
クソジジイBIGのキーン。
あれに取り憑かれてしまったのだ。
一度あの音を浴びてからというもの、三日に一度は聴かないと禁断症状が出るようになった。仕事をしていても電車に乗っていても、フラウエムの幻聴が耳を離れない。そして、病人のようにフラフラとホールへ辿り着き、吉宗を叩く。そんな日々を過ごしていれば、金などいくらあっても足りない。
俺と同世代、もしくは年上の方はご存知だと思うが、当時は「学生でも気軽に作れる赤いカード」というものがあった。学生証を持っていれば、簡単にその百貨店のショッピングで使えるカードが作れたのだが、なんとそのカード、キャッシングも余裕で出来た。銀行で預金を卸す感覚でキャッシングをしていたため抵抗がなく、すぐに限度額が一杯になり、系列の消費者金融に手を出した。
根が几帳面に出来ている俺は、当然のように月々の返済期日を守っていて、そんな優等生のカモを業者が見逃すはずもなく、どんどん限度額が増えていった。
リボ払いの返済額をキャッシュディスペンサーに投入し、そこから利息分を抜いた金額をすぐに借り、吉宗へ斬りかかる。そんなことを毎月しているうちに、あっという間に限度額が70万に届いた。
「グレーゾーン金利」という言葉をご存知だろうか。
法的には認められていないにも関わらず、なぜか年利27%を搾取してくるあれである。
27%の威力はなかなかに凄まじい。
その月もいつものようにディスペンサーに返済額の30000円を投入したところ、借りられる額は14000円だった。ここで、ふと、我に帰った。
え、30000円返して半分も借金減ってねえのかよ…。てゆーか、毎月当たり前のように限度額マックスまで借りてるけど、俺、今までいくら利息払ってんだろ…。
そんな事実をそれまで気づかなかったのも我ながらどうかしてると思うのだが、その辺りからああ、いま息をしている間にも借金は増えているのか、と不安を感じるようになり、以前のように吉宗を楽しむことができなくなった。
どうにかして借金返さねえとな…。
頭を悩ます日々が続いた。
そしてある日、答えを出した。
パチスロで出来た借金は、パチスロで返すしかねえ。
その日から厳しいルールを自らに課した。
AT機、大量獲得機、ノーマルなど設定に左右されるスロットは禁止。吉宗以外のストック機のゾーンのみを狙い、当たったらゾーン終了まで回し、いかなる枚数でも流す。吉宗は禁断症状が出るので、いかなる場合も禁止。
当時俺が働いていた山手線Y駅前には二件のボッタホールがあった。平均設定は間違いなく1。とにかくこの店で高設定に出会えたためしがない、それくらいやばい店だった。それを逆手に取った。
メインで狙う機種は初代の巨人の星。そしてマッハGoGoGo。これらのアリストクラートの台は設定変更されても前日からの回転数を引き継ぐ。つまり、店側が設定を変更していても天井までのゲーム数は変わらない。さらにストックを消すとそのゲーム性が失われるため、あの店といえど、万が一にもストックを消すことはない(正月に一度だけ消されていたことがあった…)。
店から職場までは、徒歩5分。当時は深夜帯で働いていたので店の閉店間際に休憩をとり、アリストクラート系のボーナス回数と回転数をチェック。勤務が明けると朝一で入店し、一番ボーナス期待度の高い台を打つ。他の客は土地柄か、昼の休憩に打ちに来たサラリーマンが大半を占めていたため、宵越し台を打ち終えた頃には、サラリーマンが打っていた台が食べ頃の回転数に育っている。
良い台がなければ店を移動。なければ打たずにじっと我慢し、ひたすら食える台を探す。
閉店まで打ち続け、またボーナス回数と回転数をメモ。翌日も朝から仕事が始まる夕方まで打つ。
そんな毎日を送る中、何度かキーンの禁断症状に襲われた。
俺はサンマのワタで日本酒をやるのが好きなのだが、アリストクラートとはそんな、いわゆる珍味台を作るのがうまいメーカーだった。初代の巨人は、回りっぱ黄ちゃぶ台やら即停止緑ちゃぶ台、レバーオンうふふなど打てば打つほど奥深い演出が目白押しだった。それでも、たまには豪快にステーキやハンバーグである吉宗をがっつきたい。キーンと鳴らしたい。
歯をくいしばり、ストイックにアリストクラートと戯れる日々を送った結果、珍しくヒキも味方して一月で50万もの勝利をおさめることができた。
あと一息だ…。
前進していることを確信し、その日も朝から巨人を何台か打った後、めぼしい台がないか見回っていたところ、驚くべき回転数で捨てられているお宝2台を発見した。
一台は1200超えの吉宗。もう一台は1000超えシンドバッドアドベンチャー。吉宗を禁止しているとはいえ、これは見過ごすわけにはいかない。
吉宗を打つ口実が出来た、と台をキープしようとしたその瞬間、横からマルボロを下皿に投げ込んできたチンピラに先を越された。クソ、ならばと返す刀でシンドバッドを確保した。
こいつ、俺より先に引くんじゃねえぞ…。チンピラを呪いながらレバーを叩くこと数ゲーム、
「キェー」
画面が固まり鳥が出てきた。
このフリーズ、2秒と17秒の2種類があるのだが、後者であれば爆裂必死の大航海モードが確定する。
そのままだ!そのままだ!
2秒間、サイレンススズカを応援するときくらい全身全霊で応援し続けた結果、祈りが天に通じたのか、台はそのままフリーズを続けた。
大航海モード。BIG17連。おまけにゾーン内でさらに2発。生まれて初めての万枚を、一撃で、こんな店で達成した。
ゾーン後即ヤメし、換金するとその足で消費者金融へと向かった。Y駅のガード下、俺の脳裏にはゆずの「栄光の架け橋」が流れていた。
入店し、店員に全額返済し、カードを解約する旨を伝えると、こんなカモを逃してなるものか、と必死に説得をされた。
それを途中でさえぎり、店員にハサミを借りると俺は自らの手で呪われたカードを裁断した。
「二度と、お世話になることはないと思います。」
あんなに苦しめられたのに、丁寧に別れの挨拶を済ませた俺は店を出ると、最寄りのコンビニで奮発してエビスを購入した。道端で一気に飲み干したあのビール、生涯最高のうまさだった。
たった一ヶ月ではあるが、俺はやれた。
しかし、自信に繋がる一歩を踏み出した俺だったが、スロプロにはなれなかった。
綺麗な体になった俺は、翌日には吉宗を打っていたのだから。
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ダストさんの
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このコラムへのコメント(8 件)
読んで頂いてありがとうございます。
ヤルヲの燃えカス#422、編集長とのコラボ動画見ながら飲む酒は最高です。何回も見ました笑
一緒にお酒が飲みたくてたまりません
根がストイックにできていないもので、一ヶ月でギブでした。
スロプロに限らずギャンブルでプロになれる人って、普通に働いていても一流になれるような気がします。
吉宗は愛しすぎたあまり嫌いになった稀有な台であります。
他にも番長とか、秘宝伝とか…あれ、大都の台ばっかりだ。
あまり理解されないんですが、大都の台ってレバーの玉が他のメーカーより固いんですよね(個人の感想です)
叩きどころで何回も腕を痛めました。
お金返していくと限度額上がるの、罠ですよねw金融コワイ。
吉宗は相性最悪なAlisa。初打ちで鷹狩→帰りますぞをくらい、後々解析を見て壊したくなりました。
利息を払いまくった自分のどこが羨ましいのか是非お伺いしたいところですw
モードとちがってテーブルのストック機って設定不問の誤爆が多くないですか?
まじでストイックな立ち回りをしておりましたが、運の要素も相当大きかったと思います。
あと、その地のサラリーマンの方々、そんなに時間ないなら巨人はやめたほうがいいですよ、っていうほどボーナス後即やめとかしてくれました。
あれはきっと、ネクタイをしめた天使だったんじゃないかと思います。
それとエノカナ、ショートフリーズは何回か引いたけど、ロンフリは未体験だなぁ。
確か大航海へのルートは他にもあって、BIG中に7を3回くらい揃えると行けた気がするけど(うろ覚え)、それもわずかに届かず、無理でした。
羨ましいなぁチクショウ!
吉宗で貯金できた時期があったなんて…さてはスロプロですね!?w
吉宗だけはホント、脳がやられてだめでした…むきになって3万円一気に両替とかしてましたもんw
ま、吉宗だけじゃなくて北斗とかもだめでしたけど…
サンマのワタと日本酒、最高ですよね!
まだ居酒屋で安く食べられた頃、うまくておかわりしまくるという粋じゃない食い方をしてしまったのですが、四匹めくらいから口が苦味で痺れてきました…
ありがたいことに前半に貯金出来たので、撤去の日まで打ち切ることが出来たのが救いだったなあ。
悔いが残るのが、ビッグ中のハズレを結局引けなかったのはほんと残念。
まあ最後にゴル爺引けたのは大満足だった。
巨人の星>あのナイター中にリプ連して、特訓2発目が出て来た時の、これ1+1?それとも3連?なんて思ってると、またまたリプ連して4発目出て来ると、何が何だか状態になるのが好きだったなあ。
エノカナ大航海>結局ショートフリーズしか引けなかったなあ
この頃の話しは尽きないねえ
サンマのワタで日本酒>わかる!自分なら山廃か生酛の純米で。