誤字とコーラの深い関係。

どんなジャンルのジョブにも「仕事道具」というのがあって、筆者みたいな胡散臭い物書きにとってはそれが「キーボード」になる。基本的に貧乏だしケチな男なので日用品にはあまり金を掛けないようにしてるんだけど、こればっかりは高級品を使いたい。

というわけで3年前に嫁のはるちゃんから「誕生日プレゼントなにがいい？」と聞かれた時、筆者は超速でこう答えた。

「一番良いキーボードが欲しい！」

筆者がそれまで使ってたのはロジクールのゲーミングキーボードだった。これはこれで結構高いんだけども、どうも打感が気に食わない。キー高が高く誤入力しにくいのは良いのだけども、やや強めにストロークしないといかんので疲れちゃう。あと音がパチパチ言う。パチパチ言うのはパチンコ記事書くのにいいかもしれんが、なにげに夜間の作業にはうるさいので向かない。

したがってキー高が低く、疲れにくくて音もしないアイソレーションキーボードを別に購入し、作業量や時間帯に応じて使い分けておったのである。

「キーボード？」
「うん。東プレのやつ買って」
「いいけど……そんなんでいいの？」
「高いよ？」
「え、高いの？」

東プレ。これは全てのライターにとって憧れのキーボードだ。お値段3万4千円。たかだか3万と思うなかれ。キーボードは基本的にすぐぶっ壊れるものなのだ。キーボードの寿命はだいたいボタンあたり1000万打鍵くらい。そんだけありゃ一生持つべと思っちゃうけど、全然足りないのである。例えば1万文字くらいの原稿は日常的に書くわけで、AIUEOの5つの母音が均等に出現すると考えると最低限2000回は触るわけだ。当然文字起こしやら書き直し、誤入力による再入力もあるわけだから、なにげに実際の打鍵回数は倍くらいになると思う。ボロっちいやつは超速でアボンだ。

もう一度いう。キーボードは消耗品なのである。ここまで説明した上で、筆者は嫁ハンにこう続けた。

「ところがだ！　この東プレさんのキーボードは特殊な構造をしていてだな、通常のキーボードの3倍の耐久性を持っているのだ。これを静電なんとか方式といって、その信頼性の高さから、かのセブンイレブンのレジやらATMにも採用されておるのだよ」
「へぇ。じゃあこれ買ったら、長持ちするのね」
「そう！　しかも一度押し込んだらその後は指の重みでトンと打鍵できる省エネ構造だし、疲れづらく音も静か。理想のキーボードなんだ！」
「そっか……、じゃあこれ買ってあげる」
「やったァァァ！！！」

かくして手に入れた東プレキーボード。2年と少し使ったあたりでその上にコーラこぼした。

慌てて分解して掃除したものの、よりによって「A」の所がへっこんだまま戻ってこなくなるという現象（？）が多発するようになってしまった。糖分恐るべし。でも折角買ってもらった手前「コーラこぼした」とは言えない。これはもう経年劣化によりこうなった、というしかないので黙ってつかっておったのだが、最近自分の原稿でやたら「A」にまつわる誤字が増えた。そりゃそうだ。へっこんだまま戻ってきてねぇから押せてないし。

他の媒体とかだとそういうのを勝手に直してくれたりするのだけども、パチ7の場合は編集長が「ピーマンの次に誤字が嫌い」と公言してはばからない男ゆえ、「あしの最近誤字ひでーな！」としっかり仰ってくださる次第。「いや実はコーラが……」とはいえず。現在に至る。

んで今、二度目のキーボード分解掃除を終え、ちょっと打感を試すのにこのコラムをしたためてみましたとさ。

うーん、まだ「A」がひっかかる……。

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