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りゅうおう、そしてパチスロ必勝ガイドに狂わされました
りゅうおう、そしてパチスロ必勝ガイドに狂わされました
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ダストさん
- 投稿日:2024/03/28 14:17
ベジータの孫悟空、桜木花道の流川楓のように、俺にも絶対に負けたくない奴がいた。
それが、Kという男だ。
高校入学時に友人となったKは、いわゆる「陽キャ」というやつであり、さらには生まれついての天然でもあった。
街を歩けば電柱にぶつかるし、カラスはKを狙っているかのように奴のおろしたてのローファーにフンを落とした。
また、Kはバカなくせに目が悪く、ハードのコンタクトレンズを入れていた。少しでも異物が入ると激痛が走るらしく、常に風を気にしていたのだが、体育でサッカーをしている際、強風が吹き砂が奴の目を襲った。
「痛い!!」としゃがみ込んだ奴の後頭部に敵のクリアボールが直撃し、ゴールに吸い込まれていったその瞬間、地面が震えるような大爆笑が沸き起こった。
そこにいた全員、教師すらも膝から崩れ落ちていった。
俺も腹を抱えて笑っていたのだが、「こいつ…笑いの神にも愛されているのか…」と、それ以降Kに畏怖の念を抱くようになった。
おそらくKからしてみれば、俺など大勢いる友人の一人だったのだろう。しかし、俺は奴には屈するまいと、対抗心の塊となった。
奴がマイルドセブンを吸うならばタールがよりきついセブンスターを吸ったし、奴がZIGGYというバンドのCDを貸してくれたとき、「な、なんだこの最高の音は…たまらねえ」と思ったのだが、ここでそんなことを言ったら敗北を認めることになるので「俺、最近洋楽しか聴かねえから…良かったらこれ聴く?」と、本当はビーイング系の音楽が大好きだったにも関わらず、お兄ちゃんのイングヴェイマルムスティーンのCDを貸し、マウントをとろうとした。
高校卒業後もKとの付き合いは続き、俺たちは同じバイトをはじめた。
そんなある日、「ドラゴンクエストモンスターズ」という名作がゲームボーイで発売された。
仲間にしたモンスターを配合させることで新たなモンスターを生み出すというこのゲーム、今ではネットで簡単に配合を調べることができるのだが、当時はインターネット黎明期でネット環境がある家の方が少なく、俺もKも自力で色々な配合を試していた。
競い合うように配合を続けていたある日、Kとバイトのシフトが被った。ロッカー室で奴と出くわすと「まさかこいつが生まれるとはな…エニックスさんもやってくれるぜ」とゲームボーイを突き出してきた。画面を見ると、ナンバリングタイトルのボスキャラである「りゅうおう」の姿があるではないか。
震える俺に、Kは勝ち誇ったように「教えてやろうか?配合をよ…」とタバコの煙を吐きかけてきた。
このガキ…!!
「い、いらねえよ。こういうのは自力で見つけるのがおもしれえんだよ。ちょっとクソしてくるわ」
ロッカー室を飛び出してトイレの個室に飛び込んだ俺は、頭を抱えた。
クソが!クソが!クソが!クソが!クソが!
まさか、ドラクエでも奴に遅れをとるなんて!
動揺した俺は、その日のバイトでミスを重ねた。
それからしばらく経っても屈辱感は消えず、俺は奴を呪い続けた。
「どうかあいつの頭上にだけ隕石が落ちますように」と神様に祈り、奴に会う日は「メテオ…メテオ…」とブツブツ魔法を唱えていたが願いは叶わず、苛立ちは募るばかりだった。
奴に一泡噴かせるにはどうしたらいいか考え続けていたある日、気晴らしにパチンコでも打つか、と朝一からホールに出向くと、行列に並ぶ中学時代の同級生Mの姿を見つけた。
Mとはすっかり疎遠になっていたが、別の友人から立派なスロッターになったという噂を聞いており、あいつはスロットに行くのかな、と思ったところで、まるで雷が落ちてきたような感覚と共に、天啓を授かった。
これだ!
当時、俺とKはパチンコは打っていたのだが、パチスロのシマに足を踏み入れることが出来ないでいた。
老若男女が和気藹々と楽しんでいるのがパチンコなら、チーマーかヤクザか愚連隊しかいない、それが俺たちのパチスロに抱いていたイメージだったのだ。
しかしながら、心の奥で思っていたことがある。
パチスロ打ってる人って、なんかアンダーグラウンドなにおいがしてかっこいい…!!
Kもそう思っていたはずだ。
「だいたい液晶もないのに楽しいわけねーよ」
「確変なしで勝てる意味がわかんねえ」
「店が決めた設定で勝ち負けが決まるのはおかしい」
「パチスロ好きって、サンマのワタが好きとかいう通ぶったバカと一緒」
などなど、打ちもしていないのに散々悪口を並べており、溢れ出す好奇心が見え見えだった。
奴にカマすには、これしかねえ!
Mをつかまえ久々の挨拶もほどほどに、俺は腰が折れるほど頭を下げた。
「頼む!スロット教えてくれ!」
「え、な、何?どうしたの一体?」
気のいいMには、押しの一手が有効だ。
一連の流れを説明し「どうしても奴を倒したい」と言うと、Mは世界で一番どうでもいい話を聞いてしまった、というような表情を浮かべたが、「じゃあとりあえず一緒に打ってみる?」と言ってくれた。
「この台7絵柄が大きいし、当たったらこのランプ点くし、わかりやすいと思うよ」
Mが紹介してくれたのが、アステカだった。
Mがメダルを投入し、レバーを叩きボタンを止めると帽子が揃った。
「うお、まじかおめえ。プロかよ」
「えーとね、帽子が揃うフラグがたったときは適当に押しても揃うんだよ。てか、パチンコってチャッカーに球が入った時に大当たり抽選してるじゃん。パチスロはレバーで当たりとか外れとか小役って決まるんだよ」
抽選してるじゃん、と言われても谷村ひとし信者であった俺に、その説明は小学生に因数分解の解説をするようなものだった。
明らかに「ふう…そこからか」という顔をしたM先生であったが、持ち前の人の良さで優しくパチスロの仕組みと谷村はペテン師である、ということを教えてくれた。俺はメキメキ成長し、その日のうちにランプが点灯すれば、なんとか7を揃えられるようになった。
「ありがとう!これで、奴を倒してくるぜ!」
礼を告げると、Mは疲れたように裏モノのキングガルフのシマに消えていった。
そして、その機会はすぐに訪れた。
バイトの夜勤が終わり、Kと俺は流れるようにパチンコ屋へ移動した。
「なあ、今日何打つ?ブリバリ原始人?バトルヒーロー?」
鼻息荒く言うKに、
「俺?俺、最近パチスロ打ってるんだよな…お前もやってみるか?」
Kの顔に驚愕が貼り付いた。狙い通りだ。
奴は幼子のように俺に誘われ、パチスロのシマに足を踏み入れた。
「このアステカって台がわかりやすいと思うぜ…?」
立ち尽くすKを尻目に、レバーを叩きボタンを止め、帽子を揃えた。
「うお、まじか!プロかてめえ!」
「帽子はよ、勝手に揃うんだよ…」
そして、程なくブリッブリッという音からアステカルーレットが始まり、告知ランプが点灯した。
「これで今から7が揃うぜ…」
息を飲むK。
俺も緊張で手が震えてきた。
揃えられるようになったとはいえ、ボーナスの目押しの成功率は6割程度だった。
ここで、ミスは許されない。
ままよ!
一枚掛けし、レバーを叩いた。
神よ、お願いします!今だけ力を貸してください!
その祈りが届いたのか、中段に白7が揃った。
「見たか、おらああああああああ!」
「うおおおおおおお!すげえええええええ!!」
Kの羨望を帯びた眼差しを浴びながら消化したボーナスは、今まで味わったことのない快感を俺にもたらした。
「こりゃ、パチスロおもしれえわ…」
これがパチスロにハマった瞬間だった。
そして、ハマったポイント。
その日、アステカを夕方まで打った俺とKは、新しい世界に足を踏み入れたことを肴に飲もうと居酒屋へ向かった。
「実は俺、つい最近中学のダチに教えてもらったんだよ。いやー、一発で7が揃ってよかったぜ」
と種明かしをする俺に、
「実は俺もりゅうおう、友達の家のパソコンで検索して配合知ったんだよな」
というので、いやお前それはどつくぞ、と思ったのだが、スロットの楽しさを知った興奮がその想いをかき消した。
「何より自分で揃えんのが楽しいよな!パチンコってただ打ってるだけじゃん」
「そうそう、あとリプレイ外しっつーのがあるらしいぜ!それやるとメダルが増えるんだってよ!」
「まじかよ、確かパチスロの雑誌あったよな?買いに行こうぜ!」
居酒屋を出てほろ酔いで行ったコンビニで買ったのが、パチスロ必勝ガイドだ。
そして、ページを開き、現れたのが、「マッドパチスロブラザーズ」のお二人だった。
なんつーかっこよさだ。
ページをめくる。
木村魚拓さんのコラムに脳天をやられた。
こんな人たちがやってる遊び、俺もやってみたい。
そう思った。
そして、俺はパチスロ必勝ガイドとともに、とことんパチスロにハマっていったのだった。
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ダストさんの
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このコラムへのコメント(14 件)
りゅうおう、グレイトドラゴンと魔王の使いとは、なんておしゃれな配合なんだ!と思いましたよ、当時笑
読んで頂いてありがとうございます、いまでは自分もKもすっかり仲良しです!
Kさんも可愛いですがダストさんもだいぶ可愛かったです。
さみらいさん
読んで頂いてありがとうございました!
10代男性って、いきりたいじゃないですか。タバコや酒と一緒で、パチスロも悪の象徴として憧れてましたw
実は投稿したあと、「あー、やっぱあそこの文章おかしい!」と、いつも何度も修正してます…
ってか相変わらず、ダストさんの文章すっげぇ読みやすくてw
読んで頂いてありがとうございます!
俺は、パチスロの馬鹿話を披露できる自由帳が大好きです!
今はネタにされている先生ですが、昔のパチンコ攻略誌にも「リーチ目」って書いてましたしね笑
雑誌に載ってたら信じますよ!
◯村せんせは悪くないんだよ、当時はほんとにリーチ目あったし
ただ、そこで時間が止まってしまっただけなんだよw
読んで頂き、コメント頂きありがとうございます!
メガフレア、他の人にも被弾しちゃいますからね!ターゲットはあくまで奴のみですから笑
余談ですが、僕は一度だけアステカルーレットで7でとまったのに告知ランプ点かず、入っておらずを経験しました。
今だと即保通協に電話だ馬鹿野郎!となるのに大らかな時代だったからか、「ああ、バグか」と満面の笑みで許しました。
思えばドラクエ7も発売当初はバグだらけでしたね!
読んで頂いてありがとうございます!
Kはその後大手パチンコチェーンに就職し、自分はパチプロ(仮)になることを選びました。
5年に一回くらい同窓会と称した連れ打ちをしています笑