園児のパチンコ

父の笑顔が嬉しかった。
ただそれだけだったと思う。


「玉が出てくるから、こうして」
とてつもない騒音の中、父は声を張り上げながら、水をすくうようなジェスチャーをした。
真似をした私の手を取ると、父は銀の筒の下に私の手を差し出す。

ここから銀の玉が出てくるということは、一列に座った大人たちを見て知っていた。
が、銀の玉の扱いは思ったほど簡単ではなく、そのいくつかは木の床に落ち、オレンジ色の椅子の間に消えていった。

慌てて拾い、父に差し出す。

「ありがとう」
そう聞こえた気がした。
見上げると、父が笑っていた。


ガラスにぶつかる玉の音と電子音が、私の集中力を高めてくれた。
私は、オレンジ色の椅子の間をくぐり、木の床に転がる銀の玉を拾っていた。

欲しいのは銀の玉ではない。
父が私に向ける、私にだけ見せる笑顔が欲しかったのだ。


数十年が過ぎ、あのパチンコホールはなくなってしまった。

しかし、あの木の床と父の笑顔は、今でも忘れることができない。

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