ある日のお時間

あー…金が無い。
何故こんなにも人は金を欲するのだろうか？

死んだ顔で毎日毎日働き顔はニコニコ頭の中では金が欲しい…金が欲しい…と呪文の様に唱えてた。

生まれ変わったら錬金術士になりたい…。
ファンタジーに逃げたくなる毎日。

そんな折、ある日職場の人から思わぬ話を聞いた。


市で5万円を無償で貸してくれるらしいよ？



マジか（笑）

すぐさま次の休みの日に市役所へ借りに行った。

この時点でどれだけクズなのかお分かりだろう。

借りれるものは借りなきゃ損！

大丈夫。給料入ったら返しゃいいだけの話だから！

意気揚々とボロボロのママチャリを漕いで市役所へ着き受付で

「5万円を貸してください！！」

はぁ？
そんな顔をされた。

なに？話が違うぞ？お姉さん！俺は5万円を借りれるという事でここにきたんたぞ！

すると奥から初老が現れてお姉さんが不審者を見る目で小声で話している。

初老は成る程的な顔をして

「どうぞー」

と別な窓口へ案内される。

簡易的な手続きで市民だという事を調べられようやく借りれるとなった時…




忘れた…。
判子を忘れたのだ。

俺「…あの」

初老「はい？」

俺「判子…必要ですよね？」

初老「えぇ。シャチハタ以外の」

俺「シャチハタ駄目なんですか？」

初老「まぁ…普通こういうのは駄目ですね」

俺「ですよね？」

初老「えぇ。」

俺「…」

初老「…」

俺「…」

初老「忘れた？」

俺「忘れたし…普通の判子ありません」

初老「駄目じゃん（笑）」


初老爆笑。

初老さん…爆笑するのいいけど俺は1ミリも笑えないから。

初老「仕方ないなぁ…」

俺「無くてもいいですか！？」

初老「そんな訳ないじゃん（笑）」

なんだよ！思わせぶりな初老だな！
1発ヤらせてくれって可愛い子に言って断られてそれでも粘ってその気になったかなと期待させる言い方からのまた断られる奴じゃねーか！
なんでそんな気分を初老相手にしなきゃいけねーんだよ！！

初老「判子屋さんに今のお願いしてあげるから買ってきなよ」

初老ーーーー！！
軽く優しいじゃねーか！

場所を聞くと

二駅先…。


初老ーーーー！！
それ俺の家の最寄の駅じゃねーか！！面倒くせーなー！！

しかし5万円を手に入れる為だ…。初老の言う事聞いてやるか…。

あー…チャリで帰るの面倒くせ。
電車で帰ろ。

1回電車で帰って買ってここに戻ってきて5万円をゲットしてからチャリで帰ろう。
体力を極力セーブする頭のいいやり方だ。

5分後に発車する電車が駅に止まっていたので電車内の椅子に座りボーッとしていた。


なんか揺れてるなぁ…。

めっちゃ揺れてるなぁ…。

電車内にいた人間は俺を残して全員外に逃げていった。

何故俺は逃げなかったのか？


電車内が1番安全だと確信していたからだ。
当時のその駅は天井を工事しており鉄骨やパイプなど剥き出しであった。

そんな所にこんな揺れの地震がきたのだ。
鉄パイプ落ちてくる危険あるじゃん。
電車に乗ってた方が安全じゃん。



結果こいつら馬鹿じゃん。

わざわざ死にに行くとはな…。
だから貧弱な関東民はいかん。
ビビり過ぎなんだよ。
こちとら幼い頃から地震が多い東北で育ってきたんだ。
どういう動きが安全か瞬時に判断しなきゃいけないのだよ。
お前らみたいにヌクヌクと物や店が揃ってる温室な所で育ってきていないのだよ！色んな意味で寒冷地で育ってきたんだ！
正に経験の差だ！馬鹿者共めが！！
のけ反ってやる！座ってのけ反ってやるぞ！！

駅員「お客さん降りて」

俺「え？」

駅員「これ発車しないから」

俺「…」

駅員「…いや早く！」


強制的に天井が剥き出しのホームに降ろされる。
なんか恥ずかしいよ…。注意される所めっちゃみんなに見られてたし…恥ずかしいよ…。


(あいつなんでずっと乗ってたの？馬鹿なんじゃね？)

そんな目でみんな見てくるんだけど…。


(非常識よね…。)

いや…聞いてくれよ。だってわざわざ外に出るなら乗って…


(どーせ田舎者だろ)

田舎者だけど違くてさ…


(イカ臭いんだよ)

風呂入ってるわ！！


そんな目で周りに見られながら降りて結局ママチャリで帰る。

ふざけんな！大体よぉ！シャチハタでなんで悪いんだよ！！硬いわ！頭が硬いわ！だからお役所は嫌いなんだ！

プリプリしながらコキコキ音を鳴らして漕いでると違和感を感じる。


なんか外にいる人多いな…。

判子屋に着き判子を買い、またわっせわっせと市役所へ戻る。

初老が出迎えてくれて無事5万円をいただく。

その金を増やそうと初代モンキーターンに座るも1万円アッサリ溶ける。

潰れてしまえ…潰れてしまえ…潰れてしまえ…


店に呪いをかけながら帰路につく。

これはまだ俺が東京にいた時の話。

続く。

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