初めてのパチンコ　～実践編～

前回の続きです。　読んでない人は要チェックやで。




｢藤君キンチョーしてね？」

｢してねぇよ。どれをやりゃいーんだよ！」


精一杯強がってみた。ハッキリ言う。びびってた。



生まれて始めてのホール。第一印象は｢うるさい」だった。
鳴り響くBGMに台の効果音、煽りマイク（※１）に玉の雑音。
ゲーセンの比じゃない。なんだここは。っつーのが素直な感想。


怖そうな人もいるし、オバさんからジーさんまで。
皆ハンドルを握って台と睨めっこ。
店員っぽぃ制服来たオッサンも煙草吹かしてるし・・（※２）


｢S・・・ちょっと待てよ。」

ズカズカと進んで行くS。なるべく周りと目を合わせないようについていった。

｢両替しよーぜ。ほれ。金。」

1,996年当時、僕の地元では、パッキー（※３）と500円と100円での遊戯が主だった。
比較的新しい店のCR機はパッキー。現金機（※４）と、羽根物は500円か100円。と言った感じだ。

俺の所持金は3000円。予め記述しておくと、お小遣いと言うモノを貰えるほどリッチな家庭に
僕は育っておらず、この3000円も、当時新聞配達をしていたバイト代から捻出されたモノだった。

一ヶ月5000円くらいのお金でやり繰りしていたので当たり前ではあるが、大金であった。

とりあえずSに習い、3000円を全て500円玉に両替した。

｢よっしゃ行くべ。」

ほぼドラクエ状態で後ろをついて行く俺。恥ずかしいが、それ以外に何も出来ない。
顔を上げる事にすら、抵抗があった。

｢これやろう！おもしれーで！」

Sが二台並んだ空き台に腰をかける。俺も座る。
その先にあった台がこれ。

現金機。大工の源さんだ。

今でこそパチンコには、各メーカーのブランドとも言えるキラーコンテンツや、
アニメや漫画、はたまた歌手や芸能人のタイアップ機が並んでいるが、

1996年である。まだ、｢海物語」が存在していない時期の、パチンコ屋だ。

｢おー！　源さんは知ってるで！スーファミ持ってたわ！」

そう、その中で大工の源さんとは、数少ないタイアップ機の一つだったのである。

Ｓがサンドに500円を投入。カラカラと貸し出される玉。
俺も習い、同じことをする。


・・・これだけ・・・・・・？


低貸出など存在はしていないので、当たり前だが一発4円、125玉の貸出である。
ハッキリ言ってその少なさに驚いた。500円だぜ？これだけかよ！みたいな。


ハンドルを握る前にSが指導してくれた。

｢ここ狙うんじゃ！コレ握っての！そしたらココに玉が入って、テレビが動くけぇ！」


訳そう。


｢ヨロイ釘の辺をハンドルを回して狙いなさい。そうするとスタートチャッカーに玉が入り、液晶がスタートするから」

と、言う事である。中学二年生にとって、全ての液晶は｢TV」と同義語だった。


Sが打ち始めたのを確認し、自分もハンドルを握る。生まれて始めてのパチンコ。



そして、生涯忘れる事の出来ないパチンコ。




------長くなったので次回をマテ！--------


※１　煽りマイク【あおりまいく】
店員が客の遊戯をマイクで煽る行為。
現在は「射幸心を煽る」との観点から禁止しているホールが多い。

※２　煙草を吹かす店員【たばこをふかすていいん】　
信じれないだろうが、当時は珍しくもなんともなかった。今でこそ、ホールスタッフは｢接客サービス業」
なんて言われるが、そんなモン微塵もなかった。平成2年なのにな！（笑

※３　パッキー【ぱっきー】
CR機を遊戯する為に、一部の店舗が導入したカードシステム。4金種（当時は3か）入る台とか無いので、最新の台を遊戯する為にこのカード（導入時の度数は1000.3000.5000.10000だった記憶）を一度「購入」し、サンドに入れ遊戯すると言う格好だった。現在と最も違う点は、｢余った度数の精算が不可能」だった事。

これが結構様々な問題になり、（偽造等も含め）思ったより早く撤廃されたシステム。
ちなみに、僕の記憶に間違いがなければ、地元はパッキーではなく、パニーカードだった様に思う。

※４　現金機【げんきんき】　
雑に説明すると、｢大当たり後に確率変動が存在しない」｢大当たり確率がCR機より高い」
タイプを指したパチンコ台。2008年以降は存在していない。

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