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名機のそこ~マコトのメーカー開発インタビュー~
2019.11.11
『ハナビは曖昧さ。バーサスはメリハリ』バーサス開発者インタビュー
新台が発表された場合は最初にリール配列をチェックする。とりわけ、左リールのチェリーの数や位置に目が行くのだけど、その理由は小役を取りこぼさずに打てるポイントが何ヵ所あるか気になるから。左リールにチェリーがひとつしかない場合は、自ずとそのたったひとつしかないチェリー付近を狙うハメになる。もちろん、チェリーを取りこぼしたくないからね。
でも、それはあまりにももったいない。チェリーとかけ離れた位置にある出目は蔑ろにされっぱなしだ。そこに止めてみたくなる出目があったとしても、狙えないのであれば意味がない。だからこそ左リールには最低でもチェリーが2個あって欲しいし、チェリー付近の出目には変化が欲しい。
ほどよく離れた位置にチェリーが2個あって、片方はBAR付近、もう一方はボーナス絵柄と隣接していない箇所にあったりすれば最高だ。2つのチェリーをフォローすることで、全く違う出目を見せてくれる機種が理想だった。
バーサスという名機が登場するまでは。
もはや説明不要だけれど、バーサスはチェリー成立時に必ず予告音を伴うという特徴がある。言い換えれば、予告音が鳴らなければチェリーを狙う必要がなくなるのだけど、この画期的な法則が、小役狙い手順という概念を良い意味で壊してくれた。予告音非発生時は赤7付近や3連Vも狙い放題。それでいて、ボーナス成立時の半分程度は予告音を伴わないから、しれっと3連Vが止まって思わず声が出そうになったり、中段赤7から何気なく小役がハズれたりするのである。
予告音の法則に加え、演出バランスの絶妙さもバーサスの魅力であり、名機だと思わずにはいられない所以なのである。 チェリー成立時は予告音を鳴らしてくれれば、最悪チェリーはひとつでも良い。全てのリーチ目マシンがバーサスの法則を倣ってくれれば、より多くのリーチ目を堪能できるのに。そう思わずにはいられないほど、バーサスの演出は完成されていると思う。
今回はそんなバーサスの底を探っていこう。 もちろん、お相手は当企画でお馴染みユニバーサル広報の山本氏。開発さんにお答えいただいた内容を代弁して頂きました。
いつもありがとうございます。今回はバーサスという事で、リール配列やゲーム性が似ているハナビとの関連性なんかも伺えたらと思っております。よろしくお願いします。
山本氏「こちらこそよろしくお願いします。バーサスはハナビありきで作った機械なので、 その辺の逸話も多いみたいです」
興味深いですね。では、早速ハナビが出てきちゃいますが、バーサスはハナビとリール配列がほぼ同じですが、リール配列を変更しようという話はあったのでしょうか?
山本氏「配列変更の案はありませんでした。バーサスはハナビと『同じ配列なのに全く 違うゲーム性』というのを目標に開発された機械なので、あえて配列はいじっていません」
さきほど、バーサスはハナビありき…という話がありましたけど、ハナビのここを進化させたというエピソードはあったりするんでしょうか?
山本氏「ハナビは『曖昧さ』を軸に開発したのに対し、バーサスは『メリハリ』を意識した作りになっています。そのため、リーチ目の引き込みや演出法則の矛盾などからハナビと比べるとボーナス成立ゲームを見抜きやすくなっています」
メリハリですか。そう言われるとバーサスは、ハズレ目+小役以上確定のフラッシュでボーナスを察知するケースが少なくなっているかも。ちなみに、バーサスとハナビは同じ人が作られているんですか?
山本氏「開発チーム全員が同じメンバーではなかったと思いますが、メインの人間は同じですね」
だからこそ、ハナビとバーサスを比較しつつ、同じ配列でも違うゲーム性の機種が完成したんでしょうね。そういう意味では核になる要素だと思うんですけど、予告音非発生時にチェリーの可能性がないという仕様にした理由はなんだったのでしょうか?
山本氏「先ほどお話しましたが、ハナビと同じ配列なのに全く違うゲーム性を実現させるうえで、ハナビでは狙えない箇所を狙えるようにしたかったというのが最大の理由です」
やはり。誰もが納得の理由でした。他の法則案なんかもあったんでしょうか?
山本氏「スイカの可能性を無くすという法則にもできたのですが、それをやってしまうと第2停止後にアツくなれるシチュエーションが減ってしまい、小役ハズレ目が主体の出目演出とは相性が悪くなるので採用しませんでした」
スイカの可能性を無くしてしまうと、2確目でボーナスを察知することが増えそうですもんね。
山本氏「それは避けたかったみたいです。あと、予告音の他に上位チャンス演出を取り入れようかという意見が多かったのですが、ゲーム性のバランスが崩れる可能性が高いということでこちらも不採用でした」
強予告音的な演出でしょうか。あったらあったで、そのバーサスも打ってみたいですけど、予告音ナシ時がめちゃくちゃ弱くなっていたと思うので、取り入れなくて正解なんだと思います。演出ナシでも当たるから、予告音の法則が生きるワケですし。
山本氏「コアなユーザーほど演出が発生しないゲームを重要視する傾向にありますから、そこは大事にしているんだと思います」
ハナビと違って4号機のバーサスをあんまり打ってないんですけど、4号機のバーサスは中リールのチェ・ス・チェがハズレでも止まりましたよね。ここを小役ハズレ目に昇格させたのはどのような意図があったんでしょうか?
山本氏「これに関してはかなりこだわりがあるようで、リーチ目で重要になるのは見た目ではなく、出目の特徴だと捉えているみたいです。バーサスにおける面白さを追求するうえで、チェ・ス・チェという出目をハズレで止めるのは適切ではないと判断したとのことです」
以前、他のメーカーさんでリーチ目マシンに関するインタビューさせてもらった時もハズレ目の重要性を話されていたんですけど、やはりリーチ目マシンを作られている方はハズレ目の停止形もこだわるんですね。
山本氏「そうみたいです。ちなみに、4号機のバーサスはBAR上段からだと中リール赤7下段のスイカ斜めテンパイ、V上段からのチェ・ス・チェによるスイカ斜めテンパイが小役ハズレ目になっているのですが、順押しでスイカハズレ目になるスイカの種類が異なるというのが出目の特徴だと言っておりました」
左リールの停止形によって、同じスイカテンパイでも中リールで強い出目が異なるという法則があったと。
山本氏「ただ、5号機バーサスでは演出の法則を考慮すると、一方は平行スイカテンパイを小役ハズレ目にした方がリーチ目に絡みやすいと考え、BAR上段から中リール下段赤7のスイカ斜めテンパイの法則を残し、V上段からは赤7付きのスイカ下段テンパイを小役ハズレ目に変更している、とのことです」
チェ・ス・チェを小役ハズレ目に昇格させたから、もう一方のスイカは左リールの停止形に応じて小役ハズレ目になるテンパイラインを変えたということですか。あっ、なるほど。予告音が鳴って単V上段ビタで非消灯だと斜めスイカorボーナスだけど、順押しで赤7が枠下に止まれば対応役矛盾の2確ですもんね。中リールがビタ止まりだとスイカの可能性もあるんでしょうけど。
山本氏「そういう演出の法則と出目の法則を生かすための変更点だと思われます」
今、予告音と消灯の絡みについて触れたんですけど、予告音+消灯ナシを小役以上確定パターンにしたいきさつは何だったのでしょうか? あと、1消灯のみでもボーナスの可能性がある仕様にした経緯も教えて下さい。
山本氏「予告音からの王道なチャンスパターンは全消灯ですが、王道パターン以外にもボーナスに繋がる法則がないといけないな、と思ったそうです。王道パターンは大事ですけど、そればかりだと単調になりますから。そこで生きたのが4号機バーサスの1消灯がボーナス成立ゲームで出るという点です」
4号機のバーサスも1消灯でボーナスの可能性あったんですね。
山本氏「当時は頻度的にそれほど注目されなかったみたいですけど、ハナビとは違って特徴的だったからこそ今作でも継承した要素になっています。消灯ナシについては、第1停止の時点で王道パターンから外れることになるので、相対的に期待度が低くなるのは避けられませんが、それでもそこに意味を持たせるために期待度の振れ幅を大きくしました」
たしかに。消灯ナシ時の多くはチェリーかベルですね。
山本氏「でも、その法則が崩れたときに期待度を急上昇させることによって、サムいけどどこか期待するパターンにしようと。そうするからには、法則が崩れた瞬間が分かりやすくあるべきだろうということで、予告音+消灯ナシを小役以上確定パターンにしました。ちなみに、予告音+消灯ナシでチェリー&ベル否定がバーサス最大のボーナス期待度を誇る瞬間でもあります」
先ほど話に出た斜めスイカorボーナスですね。俺、あの瞬間がたまらなく好きなんですよ。予告音が鳴って単V上段非消灯。ここから順押しでチェ・ス・チェを狙って上段Vテンパイの2確を拝むのが気持ち良すぎるんですよね。
山本氏「バーサスの演出法則の目玉としている部分なので、気に入って頂けて光栄です」
赤7BIGを同時当選のみにして、単独当選を設けなかった理由は何かあるのでしょうか?
山本氏「BARを上段に狙った際に意図しない赤7の生入りを防ぐためです」
なるほど。ボーナスはリーチ目もしくは、演出との矛盾で察知してほしいということですね。
山本氏「そうです。ハナビは赤七BIGの単独当選を搭載していますが、その際は必ず『遅れ』を発生させているので、遅れを察知できれば意図しない生入りを回避できる仕様になっております。バーサスはそのような演出構成ではないので、単独当選を設けませんでした」
……衝撃的なんですけど。ハナビの赤七BIG単独当選時は必ず遅れが発生するんですか。全く気付きませんでした。いや~、深すぎます。
山本氏「赤七BIG単独当選時に遅れを伴う、というのは知らない人も多いかもですね」
続いてもハナビが絡んだ質問なんですが、ハナビと比較すると特殊リプレイ確率が下がっていますが、この点に何か意図があったりするのでしょうか?
山本氏「ハナビには同時当選の可能性があるリプレイフラグがJACリプレイ1種類しかなく、BIG同時当選時の一部で特殊リプレイの停止形をとっているんですが、バーサスはJACリプレイと通常リプレイで同時当選の可能性があり、JACリプレイ+BIG時のみ特殊リプレイの停止形をとるんです」
通常リプレイ+BIGの時はただのリプレイ揃いになる分、特殊リプレイが出づらくなったということですね。 続いてV/ブランク/ベルの1枚役の役割を教えて下さい。チェリーと同時成立している1枚役で、チェリーを取りこぼした際、BARまでスベってフラッシュ発生というケースを無くすために搭載した1枚役なのかなと思っているのですが、如何でしょうか?
山本氏「左リールのリプレイ・V・Vはチェリーのこぼしorリプレイorボーナスになっていて、この出目の特性を生かすうえで、どうなればチェリーを否定する出目になるのかを分かりやすくする狙いがあります」
リプレイ・V・V停止時にチェリーをこぼしたかも…という場合は、中リールにブランクを、右リールには③番以外のベルを狙って、リプレイを否定しつつ中段に1枚役が入賞しなければボーナス確定ってことですね。
山本氏「そういうことです。ただ、枚数的に損をしてしまうので、極力チェリーを狙ってもらいたい、とは思っています」
RT終了後1G目にBIGが成立した場合のBGM変化についてなのですが、なぜクランキーコンテストとワードオブライツのBGMをチョイスされたのでしょうか? コンテストに関してはクラセレのフリだったとも取れるのですが、ワードオブライツも今後のフリということなのでしょうか?
山本氏「クランキーコンテストは4号機のバーサスのベースになった機種なんです。所謂コンドルの系譜と言われるリール配列で、サンダーライクな演出を搭載した。コンテスト+サンダー=バーサスというイメージなので、コンテストのBGMを選びました。ワードオブライツに関しては、ハナビのRT連がまるで当時のCT連を彷彿とさせる仕様で好評を頂いたので、よりCT連をイメージできるCT機のBGMを選んだかたちです」
RT中にボーナスを引くとBGMが止まる静寂告知はまさに当時のCT機と同じですもんね。だからワードオブライツかぁ。
山本氏「実はハナビの1G連と異なる点として、バーサスは1G連後のRT中に再度BIGを引いた場合も、同じ1G連のBGMが再生されるんです。ハナビではオオハナビ→ドン2とBGMが変化するんですが、バーサスではCT中にボーナスを引いた部分を再現するために、同じBGMを流しているということです」
CTの流れをそこまで意識しているとは。出玉に関わる要素ではないですが、芸が細かいです。良い意味で細かすぎます。
ではこれが最後の質問なんですが、ハナビと比べると設定推測の難易度が高いと感じるのですが、これは意図的にされたことなのでしょうか? また、BIG中に設定2以上が確定する斜めV揃いというフラグを搭載された理由も教えていただきたいです。
山本氏「設定推測の難易度は上がっていませんが、ハナビとは販売台数が大きく異なることは想定していました。そこを考慮すると、ハナビと比べるとバーサスは設定5以上の割合が減り、設定2が多くなるだろうと予想しました。なので、設定2をハナビより甘くし、設定1否定を察知できるようにすることで、高設定が使われていることを実感しやすい仕様にしました」
導入後の設定配分まで考えているんですか。いや、そりゃ考えるとは思いますけど、そこまで細かく考えているとは。あと、バーサスの設定2ってハナビの設定2より出玉率にして0.7%も高いんですね。意識したことなかったです。
山本氏「設定1否定が出れば当然設定5以上にも期待してしまいますから、ハナビにはないその要素が逆に難易度が高いと感じる要因になっているのかもしれませんね」
最後の最後まで納得の言葉でした。今回も最高の開発秘話が聞けました。ありがとうございました。
山本氏「こちらこそありがとうございました」
バーサスの開発秘話を聞きに行ったのに、気が付いたらハナビの話で驚愕していた。まさか、ハナビの赤七BIG単独当選時は必ず遅れを伴っていただなんて……。もしかしたら、これは周知の事実なのかもしれない。
俺がバーサスに首ったけになっている時に、ハナビを打ち続けていた人のなかでは有名になった話なのかもしれない。でも、それもまたヨシ。だってそうだろう。バーサスの開発秘話を聞けたうえに、ハナビの秘話まで聞けたのだから。
今後はバーサスを打つのがより楽しくなるは当然として、ハナビの遅れを察知するたびに赤七BIGの単独当選を意識できるのだから。まさに一挙両得。もしかしたら、また別の機種の底を探らせてもらう時にバーサスの新たな秘話を聞けるかもしれない。
そう思わせてくれるユニバーサルの開発陣は実に偉大だ。
(C)UNIVERSAL ENTERTAINMENT
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- マコト
- 代表作:名機のそこ~マコトがメーカー開発インタビュー~・【回胴の探り手】マコトの味変(あじへん)回胴
岐阜県出身。3本のリールが織り成す出目演出に魅せられて、当時読者だったパチスロ必勝本に携わる仕事ができたらなという気持ちで履歴書を送付。無事、ライターとして採用してもらい、ほぼパチスロライターという仕事しか経験したことのない男が生まれてしまう。現在はパチスロ必勝本などを中心に執筆しているほか、DVD・CS番組・ネット動画などにも出演中。とにかく出目でアツくなれる機種が好き。
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