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オカイの全機種レビュー:パチスロ歴史語(レキシガタリ)
2020.09.20
レバーが無い? 右側? メダル不要? 『へんなパチスロ』~筐体(きょうたい)編~
岡井モノ:ライター兼パチ7編集部員(別館) オカイの全機種レビュー:パチスロ歴史語(レキシガタリ) オカイ☆サロン
パチスロは今日まで様々な進化を遂げてきました。カジノ型のスロットマシンにはじまるその歴史は、日本で『パチスロパルサー』という箱型の“パチスロ”になりました。
今では当たり前に搭載されているマックスベットボタンやクレジット機能、液晶演出もかつては存在しません。長い歴史の中、開発者の努力によってより楽しく遊びやすいパチスロへと洗練されていったのです。
現在のパチスロというものは『遊技機の認定及び型式の検定等に関する規則』に則って作られます。よく話題になる出玉性能の上限なんかもこの規則によるもので、ここが変わらない限り6号機では出玉率115%オーバーの機種は出せません。
出玉に関する部分以外にも取り決めがあります。「筐体全体をソフビ製にしたやわらかパチスロを作ろう」と思っても『遊技機の枠の材質は、鋼その他の材料で回胴の回転により破損し、又はその形状が変形するものでないこと。』 という規則があるため実現は難しいのです。
ただし制限が少ない、あるいは明文化されていない部分もあります。たとえばリールの数についての規定には『回胴の数は、3個以上とすること。』としか決められていません、つまりその気になれば10リール機を作ることも可能なのです。実際にはそこまですると製造コストがかかる上に打ち手も面倒なので、やる意味が無いというのが現状かとは思いますが。
演出用として最大5リール、その後有効リールとしての4リール機が登場
そうした事情があるため、実際にホールで設置されるパチスロに突拍子もない機能が付くことは稀です。実現不可能、あるいは可能だけど採用されなかったという背景もあったでしょう。
しかしパチスロ進化の歴史のなかで突然変異のように妙な特徴を持った台が登場することがあります。今回注目するのは『筐体』。試験を突破した数多の機種の中でも、見た目のインパクトや変わったギミックを持ったパチスロをご紹介しましょう。なお、本記事ではいわゆるパチスロ1号機以降の機種を対象とします。それ以前の機種は法律上もルール付けされておらず、厳密にパチスロとは言い難いアメリカ式のスロットマシンも混在しているためです。
よくある「クソ台ランキング」ではありません。一風変わった特徴を持っており、一見の価値ありと思われる愛すべき“変なパチスロ”達です。
レバーが右側に付いている ハイアップ
パチスロのレバーはなぜ左側に付いているのでしょう。当たり前のようにストップボタンの左側に位置しているスタートレバーですが、実はその位置になくてはいけないという決まりはありません。誰が決めたわけでもありませんが、実際にパチスロ1号機よりも前からスタートレバーは今の位置とほぼ変わらず存在し続けているのです。
これは想像ですが、昔から多くのパチスロが左リールの第一停止を基本としており、遊技における一連の手順を考えた時に左側の方が操作性が良いと判断されたからではないでしょうか。
しかしパチスロ黎明期、その当たり前が通用しない変なパチスロがありました。
『ハイアップ(25)』 1985年 タイヨー 1号機
『ハイアップ』はパチスロ1号機として登場した機種ですが、スタートレバーが筐体右側、投入口のすぐ横に位置していました。
どうやらカジノスロットにならって設計されたらしく、レバーは右側にあるのが当たり前という考えで開発されたようです。沖縄仕様の『ハイアップ25』をみるとより当時のカジノスロットに近いデザインであることがわかります。実はストップボタンがあるのは日本のパチスロ独自のものであり、現在でもカジノのスロットは自動停止が主流。そのため右利きが多い世界ではむしろ右側にレバーがあった方が操作性が良いのです。
だからといってそのままパチスロに持ち込んじゃまずかろうと誰も思わなかったのか、そもそも先行して市場に出た日本規格のパチスロも左側にレバーがあったのですが、開発中に違和感を感じなかったのでしょうか。
タイヨーは右側スタート仕様の筐体を『ガルーダ』『リスキーダック』といった2号機でも続けたのですが、結局定着はしませんでした。ちなみに2号機ではベットボタンも右側に付けてました、その右へのこだわりはなんなんだ。
『AKB48 バラの儀式』 2015年 京楽 5号機
ちなみに約30年の時を経て、『ぱちスロAKB48 バラの儀式』で右側レバーが復活したりもしています。もっともこれは筐体ギミックなので、実際にスタートレバーとしては使用できないのですが……
レバーなど無い デートライン銀河
スタートレバーを付ける位置に制限が無いことは上記の通りですが、そもそもレバーそのものが存在しないパチスロもありました。
そんな変なパチスロどうやって遊技するんだよと思ったあなたは、こちらの筐体をご覧ください。
『デートライン銀河』 1989年 興進産業 2号機
定番の位置にレバーが無い、かと言って右側を探してもそれらしきものは見当たらない、ではどうやってスタートするのか。実は左リール停止ボタンの左上、今で言えばMAXBETボタンがある位置に長方形のボタンがあり、それを押すことでリールが回りはじめます。規則にも始動装置をレバーにしなくてはならないという決まりは無いのです。
とはいえスロッターの慣れや操作性の面からもレバー式が適していると考えられ、現在までその伝統は続いています。操作困難とまでは言いませんが、やはり慣れるまでは何もないレバー部分を叩こうとして空振りするスロッターが続出したとか。
ボタンスタート式のパチスロは後の3号機でも数機種出ており興進産業の『デートライン銀河Ⅱ』、当時筐体機構の一部を共有していたタイヨーの『トライアンフ』あたりが知られています。
変則5段リール7ライン レインボークエスト
パチスロは3×3の枠内で直線に揃ったものが成立役である。そうした常識が規制緩和によって取り払われ、パチスロ4号機時代には中段・中段・上下段、小山型やV字型を有効ラインとする7ライン機が登場していきます。
各メーカーが新たな有効ラインをゲーム性や出玉性能に活かそうと開発を進める中、アルゼから変なパチスロが登場します。
『レインボークエスト』 1998年 アルゼ 4号機
多ラインが認められるなら枠自体増やせば良いのでは? いつしかそういう発想が生まれたのか、文字通り型破りな本機は右リールの枠を広げることで5段リールに、枠内コマ数は11コマになりました。リールの大きさや図柄数に制限はあったものの、リール枠に制限は無かったのです。
有効ラインを増やすことは見た目のインパクトだけではなく、ボーナス抽選確率を上げることもできたため、出玉性能においても意味のある仕様となっています。有効ラインもV字型のような変則型ではなく全て直線型であったためわかりやすくなるというメリットもありました。
なぜか生みの親であるアルゼ自身はこの右リールのみ拡大仕様に積極的では無かったのですが、後にベルコから『デジスロ7』等の右リール拡大機が複数登場しました。
リール4段8ライン マックスボンバー
『マックスボンバー』 1999年 サミー 4号機
当時から新しいもの好き、飛び道具的な新システムを作るメーカーとして認知されていたサミーは、右リールのみの拡大ではなく豪快に全リール枠を1段広げたフル4段リール機を登場させます。これにより枠内コマ数は12コマになり、1リール4連ボーナス図柄停止も実現しました。
BIGの連発が楽しめる仕様ではあったのですが、ここまでいくと左リールのチェリーが枠内に止まれば全て複合入賞になる等、少々有効ラインが体感でわかりづらく、払い出しがあって初めて小役が揃っていることに気付くケースもありました。
この4段リールは後続の『ボーナスラッシュ』『ゲゲゲの鬼太郎』等それなりに採用されていたのですが、翌2000年にAR搭載の『ディスクアップ』が、2001年にAT搭載の『獣王』が登場し、ボーナス抽選に関わらない出玉性能を強化する方針になったためか、活躍時期は短かったりします。
かつての4段リール機はもはやゲームセンターでもほとんど見かけることはないのですが、実は2020年現在でもホールで打てる4段リール機が存在します。
『A‐SLOT DARTSLIVE』 2019年 サミー 5号機
サミーは4段リールを忘れておらず、5.9号機のダーツライブとして8ライン機が帰ってきたのです。成立ラインがわかりづらく小役を狙いにくい、といった弱点は全リールフリー押しで取りこぼし無しという仕様で答えを出し、進化した4段リール8ライン機と言っても良いでしょう。正確な狙いが重要なダーツをテーマにしておきながら、狙わなくていいという設計はどうなんだという気もしますが。
これを逃すともう2度と出会えない可能性もあるので、未体験の人は一度設置ホールを訪ねてみてはいかがでしょうか。
リール2段8ライン エイトマン
変則ラインや4段リールと拡大を続けていたパチスロ4号機時代にあって、逆に有効枠を減らすという奇天烈な動きをした変なパチスロもありました。
『エイトマン』 2000年 タイヨー 4号機
タイヨー、またお前か。右レバーの『ハイアップ』、レバー無しの『トライアンフ』に続き本記事3度目の登場、タイヨーの『エイトマン』です。
見た目通り2段リール仕様の機種なのですが、2×2×2、つまり枠内に止まればどこでも有効な8ライン機というのが本機の特徴。おそらくタイアップであるエイトマンに合わせた設計だったと思うのですが意外や意外、2段ブチ抜きのボーナスやスイカ図柄、枠のどこかに図柄が出現していれば全て有効という仕様はわかりやすく視認性も良かったのです。
有効ラインとしての1ライン機や2ライン機はありますが、2段リール機を採用したのはタイヨーの後には藤商事の5号機『アカギ 永続の闘牌』くらいだったと思います。ただしアカギは4ライン機なので成立図柄の並び方には若干制限がありますが。
『トゥエンティーセブンR』 2004年 山佐 4号機
なお、それぞれのリールの枠内に収まれば全て有効、という意味での後継作は山佐の27ライン機『トゥエンティ―セブンR』が存在しています。もっともこちらはオーソドックスな3段リール枠なので、見た目上はそれほど特異性を感じませんが。
メダル無しパチスロ CRP花月伝説R
先の『遊技機の認定及び型式の検定等に関する規則』には『遊技メダル等の獲得に係る遊技機の性能に関する規格』が定められています。そう、遊技メダル“等”です。
実はパチスロの遊技にはメダルを使用するという決まりはありません、星型のチップやカードを投入するパチスロを作るのも自由なのです。しかし現在まで全てのパチスロメーカーが同じ規格のメダルを使用しています、なぜなら違った規格にしてしまうとホールでは管理が煩雑になり、設備の共有ができなくなってしまうからです。たとえば直径5cmの巨大メダルを使う独自規格のパチスロを開発したとしても、多くのホールは導入を見送るでしょう。
ある意味当たり前であり、変える必要無しと考えられていたメダルの使用。しかしパチスロ5号機黎明期にはその当たり前を崩す驚きの変なパチスロが誕生しました。
『CRP花月伝説R』 2005年 SANKYO 5号機
初のパチスロ5号機という話題になると『新世紀エヴァンゲリオン』が挙げられることが多いのですが、パチスロ5号機規定のもとで開発・設置されたのはこの『CRP花月伝説R』が先です。
パロットと呼ばれたこちらは簡単に言えばパチンコ玉で遊技するパチスロであり、その筐体は液晶やリールがある上半分がパチスロ、操作部分や下皿がある下半分がパチンコというものでした。一見奇抜なこの筐体はパチンコ設備をそのまま流用することができるためホール側も新たな設備投資が不要であり、そのインパクトも手伝って新たな客層の獲得にも一定の効果がありました。
玉15個を上皿から一気に投入できるボタン等操作性も考慮されていたが……
しかしその操作性や出玉性能がパチンコ派・パチスロ派どちらからも中途半端になってしまった印象は拭えず、目押しの苦手な打ち手への対応や交換率と言った機械性能以外の部分でも問題が浮き彫りになってしまった影響もあり、パロットは複数メーカーから数機種発売されながらも早々に設置を減らしていく結果となりました。
そして誰もがパロットのことを忘れかけた2018年、三洋物産より6号機「SパロットブルーハワイKD」がひっそりと型式試験を通過して一部で話題になったりもしました。しかし2020年現在未だ導入されたと言う話は聞かず、再び忘れられかけている気がします。
現れては消えていった変なパチスロ達
「変な」とは、普通とは違っているさまや思いがけないさまを表す言葉であり、劣悪なものを表現する言葉ではありません。
現在では当たり前のボーナス告知ランプや目押し不要AT機も、初登場時は変なパチスロと認識されていたのではないでしょうか。それらは人気と共に定番化することで変では無くなり、パチスロの進化ととらえられるようになりました。
今回ご紹介した変なパチスロ達はその後定番化しなかったこともあり、今も変なパチスロのままです。しかしこうした各メーカーの試行錯誤が現在のパチスロを作り上げたという意味では決して無駄ではありません。こんなパチスロがあったのかと思い返すことで、パチスロのさらなる可能性に気付くこともできるのではないでしょうか。
今回ご紹介できなかった変なパチスロはまだまだたくさんあります、また機会を見てご紹介しましょう。
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- 岡井モノ:ライター兼パチ7編集部員(別館)
- 代表作:オカイ☆サロン
学生時代友人に連れられ、はじめて『ジャグラー』を打って負けたその日、悔しくてなぜか『サバンナパーク』のゲームを買った異端の猛禽。パチ7自由帳において「何か変なヤツがいるな」と思われていたが、何か変なヤツのまま編集部に捕獲されたトリックプレイヤー。日本全国を旅する渡り鳥としての経験を活かしたコラムを、旅情たっぷりに綴るかと思わせながら特にそういうコラムを書いたりはしない。今日も今日とて奇策縦横。
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リニアフラッシュはアミューズ感がある筐体で新しかったですね!
ただ規格が新しくなるとスペース上の問題をはじめ、いろいろ難しかったのかなぁと。
あれが並んでるところは、近未来を感じさせたんだけどなあ。設置伸びず残念だった。あれが売れていれば違った風景が広がってたかも
実際に打ったことがないので謎のまま終わった機種です。
当時は質より量で次々に新機種が出ていたので、打てずにスルーも多かったです。
ファンシーロックナイトなどの下段ライン追加の6ライン機種も不発でした。
実際に打ったことがないので謎のまま終わった機種です。
当時は質より量で次々に新機種が出ていたので、打てずにスルーも多かったです。
ファンシーロックナイトなどの下段ライン追加の6ライン機種も不発でした。
エイトマンと同型のAT機ですね。あまり設置がなかった印象なんですけど、あの謎のモアイ推しは何だったんでしょうか。
藤商事さんの変則4ライン機ですね。確かに2段リール機種でした、情報感謝します。
ART中にボーナステンパイすると鷲巣が「いいのかぁ~?」って言うんですよね。