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若年性パチンコ研究脳
2022.04.29
研究#16-16:『設定付きパチンコ』そして『P機』誕生! 末期のCR機に残された存在意義を振り返る ~CR機の足跡を辿る連続企画2018年編~
どうもこんにちは。最近近所に導入されたパチスロ『壇蜜』(初代)で羽を察知しておきながら目押しミスで取りこぼすのが特技なraraです。純粋に見えなくて悔しいです。上パネルから突き刺さる壇蜜の視線が悪影響を及ぼしているに違いありません。
▲上パネルの存在感はどんな飛び出す筐体にも勝っています。眼力。
壇蜜を筆頭に挙げるのはちょっと間違っているかもしれませんが、Aプロ系だけではなくディスクアップなど完全攻略で出玉率100%超えのパチスロって本当に増えましたよね。1番悪い設定での出玉率が100%を越えている機械なんて、世界中のカジノを巡ってもどこにも存在しないのではないでしょうか。それ相応の技術介入性ありきの数字なことも含めて、特殊なゲームだなあと改めて思います。
ユーザーも、ホールも、そしてメーカーさえも、昨今の復活劇まで忘れられていた感がありますが、パチンコにも出玉率に影響を与える設定がもともとあるのです。
ということで、今回は設定付きパチンコが登場した2018年のパチンコ機についてです。
元来、CR機というのは設定を搭載できるものでした。義務ではなく権利だったため、搭載していない台も数多くありましたが……1996年の2回ループ規制の際についでのように撤廃されてしまいました。
そこから22年経った2018年に、パチンコへ設定が帰ってきました。……CR機に取って代わる新しい基準、P機という形で。CR機撤去をきっかけにはじめたこのシリーズですが、いよいよクライマックスです。 そんな2018年のトピックスはこちら。
★2018年のトピックス
★2018年パチンコ界ピックアップ
◯1992年から26年続いていたCR機の新規持ち込みが終了
◯新形式”P機”の時代がスタート
◯一種二種混合機が一大勢力として定着
◯恒例の駆け込み需要でミドルが多数排出
という2018年に登場したパチンコ機は174機種。(rara調べ)そのうち27機種がP機となっています。過度期ということもあってか、前年からさらに減少していますね……
スペックのまとめはコチラです。(別リンクにて公開中)
リストを見ると、P機が初登場した以降もCR機がリリースされていたことが分かります。新規の持ち込みができなくなったというだけで適合さえさせておけば、いつ発売するかは基本的には自由ですからね……ということで、まずはP機になって何が変わったのか。というのを再確認しましょう。
★出玉が減っただけ!? ~2018年時点でのP機事情~
このシリーズで定期的に書いてきたように、CR機には様々な規制が設けられてきました。ですが、今回は規制というよりも”新形式”。CR機という形式そのものが撤廃され、新設されたP機へと移り変わることになります。
かつての規制と違うのは、CR機の撤去期限が定められてしまったことです。MAX機規制を除いて、既に設置されていた台は不問という扱いだったのをまとめて一掃する形になります。そうまでして新しい形式を作った理由は、2022年の今となっては信じられないかもしれませんが”射幸性の低下”のためです。2018年当時のP機がどのようなレギュレーションだったかを確認しましょう。
まずもっとも大きな差として、最大出玉へと規制がかかりました。6号機でボーナスの枚数が規制されたのと同じで、大当りの出玉が多い=射幸性が高いという状態を規制するための措置ですね。
具体的にはラウンド数がかつての16Rから10Rまでと定められました。賞球数15個、カウント数10Cという部分については変更無しのため、最大出玉が単純に10/16された形ですね。払い出し個数でいうと2,400発上限だったのが1,500発上限になりました。
一方、新たに認められたのが『設定機能』になるわけです。大当り確率に設定差を設けることで、アナログ要素に頼らない出玉率調整が可能になりました。
……以上です!
厳密にいうと出玉率試験が厳格化されていたりするのですが、ユーザーから見える部分だけを抽出すると本当にこれだけ。CR機末期にて行われていた”継続率規制”や”ベース規制”はそのまま引き継ぎのため、単純に出玉が少なくなっただけ、と言ってもいいような状態です。
継続率が据え置きなのに出玉が少なくなったということは、荒い機種を作るのが難しくなったということと同意義です。
CR機末期ではST機や転落機などの”次回大当りが確定しないジャンル”に関しては、65%継続で全て16Rかつ2,000発以上の出玉を搭載した台がいくつも出ていました。逆にいうと、全て2,000発以上にしたとしても問題ない性能なのが、65%という継続率なのです。ですが、P機においては65%ALL1,500発が限界になります。この出玉量でV-ST機を作るとどうしても厳しい性能になってしまいます。
結果ミドルにおいては、海物語のような初回出玉と確変転落時の出玉が、ちゃんと保証されている”昔ながらの確変ループ機”以外を作りにくくなったのがP基準です。
甘やライトミドルであれば、もとから平均1,500発出る台なんてあまりないのでどうにでもなるのですが……CR機が出せるうちに、ミドルでできることはやっておく必要があるでしょう。
P機が様変わりして、激荒ミドル全盛期になってしまった2022年の今からすると隔世の感がありますが、当時は本当にミドル終焉の風潮さえ漂っていたのです。 ということで、最末期の2018年にリリースされたCR機のデータを確率帯から確認していきましょう。
★大量出玉機最後の輝き
大当り確率 カテゴリ |
リリース機種数 |
甘 (1/60~1/139) |
42機種 |
ライトミドル (1/140~1/239) |
28機種 |
ミドル (1/240~1/339) |
90機種 |
特殊 |
6機種 |
こうしてデータを見ると一目瞭然。圧倒的にミドルのリリースが多くなっています。2010年以来、常にトップだった甘デジのリリース数を上回り、最後のお祭りとばかりに限界ギリギリの出玉性能を持ったミドル機が多くリリースされました。
複数出た2400搭載機の中で最もヒットしたのが、『CR真・花の慶次2 漆黒の衝撃』です。
▲マイナーチェンジ機としては異例の大ヒット。元スペックの影が薄くなり、甘やライトまで黒くなりました。
右打ちオール2,400発という圧倒的な破壊力に加え、初回の出玉量や突入率もそこまで悪くない、という完成度の高いスペックで65%規制後としては異例の大人気を博しました。シンフォギアのような変わり種ではなく、真正面から65%規制に向き合った機種としては最大のヒット作ではないでしょうか。
一方、いろんな意味で話題になったのが『CR牙狼TUSK OF GOD』です。
▲右打ち中は大当りが確定してからトイレにいっても間に合ってしまいます。
V入賞などを用いない純粋な確変機でありながら特図2(電チュー)での継続率はオール2,400発を実現。なのに初回出玉にも2,400発の振り分けがあるというとんでもないスペックで登場しました。ですが、その代償は大きかったようでとにかく確変中に時間がかかります。今の高速機に慣れていると……とかいう次元ではなく、ベース規制の影響もあり、比較的遅い台が多かった2018年当時でさえ圧倒的な遅さを誇りました。
そのうえ、市場での異常な出玉率の高さからメーカーによる買い取り騒ぎにまで発展しました。継続率が上の方に詐称されているという噂は結局なんだったんでしょうか……。
そんな良くも悪くも話題性のあるミドルに対して、随分大人しくなってしまったのがライトミドルや甘デジ。P機に変わっても問題なく作れるスペックですから、数年で撤去されてしまうCR機で無理に出す必要は無いという判断があったのかもしれません。
そんな市場において唯一独自路線を突っ走っていたのが西陣。”ぷらちな”シリーズという冠を作り、2,000発大当りを搭載したとてつもなく荒い性能の甘デジを乱発していました。
▲恐怖のぷらちな四天王
ただでさえベース規制によって出玉性能を落としている御時世なのに、現実的に2,000発の振り分けを搭載したぷらちなシリーズは、どれも突入率が鬼のような厳しさになっています。それこそ、ミドル機とあまりハードルが違わないんじゃないか、と錯覚してしまうぐらいに。16Rを引けなかった時の出玉も少ないため、本当に2,000発を引けるかどうかだけが収支を左右するイカしたシリーズです。
当時の僕は、良くも悪くも堅実な印象のあった西陣がグレてしまったぐらいに思っていたのですが……今振り返ってみると、これはこれで意義があった取り組みのように思えてきました。良くも悪くも、今じゃできないことですからね。最近の西陣がイキイキとしているのは、この時に殻を破ったお陰だからなのかもしれません。
ちなみに、業界を挙げて発足されたちょいパチブランドがひっそりと自然消滅しています。これこそ意義がある取り組みだと思っていたので非常に無念。やっぱり高交換率無制限営業じゃこの手の台は厳しいんでしょうね……。
さて、続けては2018年にリリースされたCR機のジャンルに関するデータを見てみましょう。
★自由度を活かし多様化する混合機
ジャンル |
リリース機種数 |
確変機 |
34機種 |
V-確変機 |
10機種 |
ST機 |
38機種 (通常あり8機種) |
V-ST機 |
12機種 (通常あり8機種) |
転落機 |
1機種 (通常あり1機種) |
V-転落機 |
8機種 (通常あり6機種) |
リミット機 |
3機種 (通常あり1機種) |
V-リミット機 |
3機種 (通常あり2機種) |
V-確変リミット機 | 2機種 |
一種二種混合機 |
29機種 |
一般電役 | 2機種 |
役物機 |
7機種 |
羽根物 | 1機種 |
普通機 |
1機種 |
(小当りラッシュ搭載機は13機種)
昨年のシンフォギアブームによってか、一種二種混合機が大躍進! 確変機・ST機の2大巨頭に肉薄する数になり、完全にジャンルとして定着したことが伺えます。シンフォギアと同じく残保留を利用した継続率向上がメインの使われ方であるものの、一種二種ならではの役物を活用した物理抽選を搭載した台も数多く登場しました。
『CRうしおととら』は役物系とデジタル系一種二種混合機のハイブリッド的な設計をしています。
▲大好きな筋少の曲が聞きたくて何度も打って負けまくりました
初当りの役物はアナログ管理であるものの、2連目以降は確実にVへ入る役物が使用されます。アナログ要素がある役物にはどうしても個体差がついて回りますから、全てを役物で抽選するかつての混合機だと当たりやすい=続きやすいになってしまいバランスが悪くなっていたところを抑えつける新たな手法です。
▲ドットの『夢』が力強くて好きでした。
『CRクジラッキー』は、V入賞に至る役物こそ形骸化しているものの、特図2入賞口までの道に役物を設けています。時短終了後の残保留ですら高確率で当たる混合機の特図2を、役物突破で通常時から回すことができる……とっても面白い発想だと思います。
油ゴトの被害に遭い、短命に終わってしまったことが無念でなりません。この手のアナログ要素を付けると、どうしても攻略の余地が生まれてしまうんですよね……。
▲アナログ要素が皆無なのに凝ってるV入賞ランキング1位。是非動画を見て欲しいです。
『CRドラムゴルゴ13』には、図柄揃いによるいわゆる直撃大当りが搭載されていません。全ての大当りが役物経由で行われます。……といっても、役物が開くのはドラム上で図柄が揃った時だけですし、役物は必ずV入賞する設計になっていますから、打感は一般的なデジパチと何もかわりありません。
表の中では便宜上”一種二種混合機”というカテゴリに入れていますが、厳密にいうならばかつての権利物に非常に似通ったゲーム性を持つ、純然たる”二種”とでも呼ぶべき1台です。
そんな百花繚乱状態の混合機に対して、65%規制前まで栄華を誇っていたV-ST機は昨年2017年に続き冷遇されています。継続率65%のショートST+時短という形で継続率を底上げしたとしても、時短回数が100回までと決められていますから70%が精一杯、どうしても似たようなゲーム性ばかりになってしまいますから、仕方ありません。
ということで、混合機マジックによって上がった継続率に関するデータを見てみましょう。
確変継続率 |
リリース機種数 |
49%以下 |
11機種 |
50%~59% |
10機種 |
60%~69% |
62機種 |
70%~79% |
14機種 |
80%~89% |
11機種 |
90%以上 |
1機種 |
65%上限と決められているんだから当然なんですが、65%以下の台が圧倒的大多数を占めています。ですが、混合機やリミットの台頭により、高い継続率を持つ台も増えていることが分かります。P機になっても継続率規制が残っていたことから、しばらくはこの流れが続くように思われていたのですが……。
ここから、P機は大きな変容を遂げていくことになります。そして、CR機の長き歴史にも遂に終止符が打たれる時が来ました。次回、シリーズ最終回。CR機が最後にリリースされた年である2019年編でお会いしましょう。
ここからは2018年のP機についてのおまけです。
★おまけ~2018年のP機事情~
P機生誕元年である2018年は、まだまだCR機が大多数を占めており、P機の登場はわずか27機種に終わっています。早速確率帯のデータを見てみましょう。
大当り確率 カテゴリ |
リリース機種数 |
甘 (1/60~1/139) |
17機種 (設定付き12機種) |
ライトミドル (1/140~1/239) |
6機種 (設定付き1機種) |
ミドル (1/240~1/339) |
1機種 |
特殊 |
2機種 (設定付き2機種) |
ご覧の通り、CR機と対極に甘デジのリリースが過半数を占めています。ホールの主役たるミドルに関してはたったの1台のみという結果に。
やはり継続率65%以内かつ1500発以内という枠内でミドルを作る、というのは無理があります。その縛りを突破する手段として、唯一リリースされたミドル機である『Pぱちんこ新鬼武者2S5』は小当りラッシュを搭載しています。
▲冗談だった”島設備が震えるほどのバイブ”を本当に搭載してしまった意欲作
この時は今後出るミドルは海物語のような、普通の確変機か小当りラッシュ搭載機、もしくは混合機による継続率を底上げした台ばかりになるんだろうなと思っていました。それはそれで健全で悪くないような気もしていたのですが……翌年以降、情勢は様変わりすることになります。
続いてはジャンルに関するデータです。
★設定を活かす難しさ
ジャンル |
リリース機種数 |
確変機 |
10機種 |
V-確変機 |
2機種 |
ST機 |
8機種 (通常あり1機種) |
VST機 |
1機種 |
(小当りラッシュ 6機種)
ジャンルに関してはまだまだ様子見の感が強く、比較的スタンダードなスペックが多めです。強いて言うなら小当りラッシュ搭載機の多さが特徴でしょうか。
この年から始まった設定の概念は、大当り確率にのみ差が設けられるシンプルなものです。重大なのが、確変中の大当り確率も通常時の設定差に比例するということです。 次回大当りまでの確変中ならテンポが良くなるだけですが、ST機の場合は単純に継続率が向上してしまいます。かといって継続率は65%が上限ですから、ST機の低設定は継続率をさらに削る他ありません。
また、確変機であったとしても時短がありますから、実質的な継続率は高設定のほうが高くなっています。高設定は当たりやすい上に出玉性能まで上がってしまうんですね。
一見夢がある話のように思えますが、現実的に考えると”設定差を付けにくい”ということにも繋がります。設定差をつければつけるほど出玉性能にも差が出てしまいますから、あまり極端な設定差は付けられないんです。
事実、最初期に登場した設定付きの台は1/99~1/80のような、たった分母20程度の中に6段階もの設定を詰め込んでいる台が多くなっています。99と80だと、出玉率的にはとてつもない差ではあるのですが……
一日回すと9000Gはこなせるパチスロじゃないんですから、設定を意識できる試行数を稼いだ時には日が暮れてしまいます。1と6に限った場合でさえこれですから、中間設定の存在意義はほとんどないとも言えるような状態です。
▲設定付きの命運を握っていると称されていた沖海リメイク
一例として、最も導入数が多かった設定付き台である『Pスーパー海物語IN沖縄2 SAHS』のスペックを見てみましょう。
通常時 大当り確率 |
確変時 大当り確率 |
|
設定1 |
1/119.8 |
1/19.9 |
設定2 |
1/117.4 |
1/19.6 |
設定3 | 1/114.9 |
1/19.1 |
設定4 |
1/113.4 |
1/18.8 |
設定5 | 1/110.7 | 1/18.4 |
設定6 |
1/106.5 | 1/17.7 |
このようにとてつもない圧縮具合です。これだと設定6以外の設定差を実感するのは1日単位では不可能ですし、それなら設定を使う必要がありません。かといってかろうじて差が実感できるかもしれない6を入れるか……というのも平常営業では厳しいでしょう。結局、設定を使う理由は非常に薄くなってしまいます。
そんなジレンマを多少なりとも改善してくれるのが「小当りラッシュ」だったのです。
小当りラッシュは大当りすると終わってしまいます。つまり……確変中の大当り確率が低い方が小当りラッシュの性能は高くなるんですね。それを利用することで多大な設定差を付けるのに成功したのが『P弾球黙示録カイジHIGH&LOW ざわっ・・・Ver.』です。
▲実は通常時の演出バランスが秀逸。心穏やかに打てます。
小当りラッシュ付き+次回大当りまで継続する確変+時短なしというスペックで、右打ちに入ってさえしまえば純粋に低設定の方が出玉力が高い設計になっております。その結果……、
通常時 大当り確率 |
確変時 大当り確率 |
|
設定C |
1/199.9 |
1/109.3 |
設定B |
1/149.6 |
1/81.8 |
設定A | 1/99.9 |
1/54.6 |
どうですかこの素晴らしいスペックは。ここまで差があれば設定を見抜く楽しみがあるというものです。6段階にせず3段階設定にしているのも素晴らしいです。回転数稼げない使用なんだから選択肢は絞るべきだと思います。
まあ、ミドルスペックが色々とやらかした台なので、設定うんぬん以前に設置がほとんど無かったのですが……今でも全国101店舗で稼働しているみたいです。もし近隣に残っている方は、設定を意識して打ってみてください。きっとなかなか終わらない高性能な楽しいラッシュに出会えると思います。それではまた次回。
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- rara
- 代表作:若年性パチンコ研究脳
北海道に蠢く24歳のスロパチ好き。珍古店を探して全国を駆け巡ったり、大きいホールに一台だけ置いてあるマイナー台を打って、悦に浸ったりするタイプの人。最近のマイブームはパチスロミルキィホームズ。
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