新着記事
- パチセブントップ
- パチンコ&パチスロコンテンツ
- パチ7虎の穴
- 【ロマンティックパチンカー】No.10 ザ・ラストロマン
パチ7虎の穴
2025.08.08
【ロマンティックパチンカー】No.10 ザ・ラストロマン
妻と共通の知人で、ネリという名の男がいる。もちろん本名ではない。いつからか定かではないがネリネリしている、という理由でそう呼ばれ始め、彼も今ではそれが親から授かった名であるかのように、ネリと呼ばれる自分を受け入れている。
1年ほど前の出来事だが、夕食時にネリの話題になった。時を同じくして、ボクシングの井上尚弥選手の世界戦が発表された。妻はボクシングに一切興味はないが、もしかしたら何年か前にその悪童ぶりが話題となった相手選手を知っているかもしれない。ネリの話をした直後ということもあり、妻にクイズを出してみた。
「さて、問題です。今度ボクシングの井上尚弥選手の世界戦がありますが、相手の名前は何でしょう」
ボクシング…。そう呟くと、妻は長考に入った。
俺は、焦れた。全く知識のない相手にボクシングの問題など出すわけがなかろう。ちょっと考えればわかるだろう。
すると妻は閃いた!という顔で「はい!」と挙手した。ロマンシングサガで技を覚えた際に出るあの電球が、その頭上に見えた。
「わかった! マザーファッカーでしょ!」
クイズ界においてタブーとされる行為がいくつかあるが、そのうちの一つに正解を超える解答をしてはならない、というものがある。妻はその禁忌を犯した。マザーファッカーは面白すぎる。もはやこのクイズにおいて、それ以上の答えは存在しない。
「うん、正解です」
「やったあ」
妻には今も、本当の正解を教えていない。
その他にも「蒙古タンメン中本」を「蒙古タンメン中卒」と読み、このお店は高校進学を断念し、ラーメンに人生を賭けた人が経営している、と思い込むなど、妻の天然エピソードは枚挙に暇がない。そんな純粋な妻は、かつては世界の誰よりも俺に優しかった。
パチンコのリングをこよなく愛しており「あなたとならば貧乏さえも楽しめる」と言って、笑ってくれた。コテンパンに負けた夜などは「今日より明日だよ!」とミスミ爺さんのような発言をして、俺を勇気づけてくれた。
そして今、妻は怒っている。悪いのは、もちろん俺だ。
妊娠発覚と同時にパチンコをやめた妻は、特に金銭面において厳しくなった。当然だと思う。新たに生まれる生命を前にして、無責任でいられるはずがない。そして、俺もパチンコをやめた。
どの道これから子育てが始まり、ホール通いをしている暇などなくなる。いくら打っても収支は上向かず、足を洗うにはちょうど良いタイミングだった。
その後、子供の成長とともにわずかだが時間にゆとりがうまれ、俺はパチンコのコラムを書くということを理由に、ホール通いを再開した。それだけならまだしも、ここ最近の実戦ではそこそこ派手に負けている。それにもかかわらず実戦費を無心してくる俺に、怒りを覚えるのは当然だ。
当コラムは今回で区切りの10回目を迎えた。そこで、これまでの収支を計算してみた。
9戦して3勝6敗、マイナス131,000円という数字が出た。
金額だけみると大敗だ。しかし、1回当たりの平均負け額は1万5千円以下と、月に1度の趣味としては悪くないのでは、と思ってしまった。時給で働く妻の前でそんなことを口走った日には、機嫌が良くとも全力の頭突きくらいは喰らってしまいそうだ。
さすがに今回は負けるわけにはいかない。だが、どうすれば勝利を手中に収めることができるだろうか。真剣に考えてみた。
俺もロマンティックパチンカーを自称する男だ。これまで幾多の危機を乗り越えてきた。
思えば俺が実力を最大限に発揮したのは、もはや後がない、という状況に追い込まれた時だった。
全てを賭け、魂を、想いを拳に込める。全身全霊の気を集めてレバーを叩けば、設定や確率など超越することは容易いはずだ。それができなければ、ロマンティストを名乗る資格はない。
「次、負けたら二度とパチンコをやらない。だから、悔いは残したくない。いつもの軍資金に加え、キャッシュカードも俺に託してくれ」
人は突拍子もないことを言われると、こんな表情になるのだろうか。妻はまるで奇妙な生き物に出会ったような顔で、俺を見つめた。
かつて「あなたにキャッシュカードを渡すのは、地面師に土地の権利書を渡すのと同じくらい怖い」と言われたことがある。それを踏まえつつ、バッキバキにキマった目をして詰め寄ると、妻は怯んだ。もう一息だ。そのか細い両肩を掴み、俺は言った。
「今回は、マジだ」
そうして無事、軍資金の5万とキャッシュカードをゲットした。何度も俺に騙されているはずなのに、やはり妻は天然で優しかった。
決戦の地に到着し電車を降りた途端、梅雨明け前とは思えぬ熱気に襲われた。気象予報士は毎年のように「今年の暑さは災害級」と言っているような気がする。
最初の万引きは出来心と許されても、2回、3回と罪を重ねる内に、その人物は泥棒と呼ばれるようになる。
もはやこの暑さがこそが正常で、日本は温帯ではなく熱帯に分類されるべきなのではないか。夏が来るたびにそう思う。
暑さから逃れるように、小走りで駅前のホールに辿り着いた俺は、想いや情熱が1番ダイレクトに伝わるであろう、あの名機の元へと向かった。
この店のハナハナホウオウは全8台、とりあえず居心地の良さそうなカド2を確保した俺は、右拳を見つめた。今日はこの拳が砕け散っても、レバーを叩き続ける所存だ。
閉店まで持ってくれよ、相棒。
心で呟き、拳にキスした。そして、魂を込めて1打1打を大切にプレイしていると、わずか50ゲームでハイビスカスが点滅を始めた。早めのお目覚めだ。
これはREGも、ボーナス終了後1ゲーム、再びハイビスカスが光り出した。フリーズを伴わない1ゲーム連は、限りなくREGの可能性が高い。しかし、ハナハナはREG確率にこそ大きな設定差がある。
今日は設定を超越した奇跡を起こすはずが、まさか高設定を予感させる台を掴めるとは…。俄然やる気が出てきた。
その後も浅いゲーム数でBIG1回、REG2回と最高の立ち上がりを見せた我が台の前に、突如としてライバルが立ちはだかった。
俺より遅れること5分、3台離れた席に着席した推定年齢50代のマダムの台が、エグいほど連チャンしている。俺の活躍が霞むほどだ。
実戦日はド平日であり、ひと気のないハナハナに高設定を複数置くはずがない。あっても1台だろう。勝つのはマダムか俺か…。負けるわけにはいかない。
しかし、その後1553回転でBIGが3、REGが7と、「高設定を匂わせつつじわじわ金を奪われ最終的に死亡」という典型的な負ける台の挙動に、俺の決意は揺らぎかけた。
それでも、と心の中で叫ぶ。
ここだ。ここなのだ。いつもであれば、ここで闘志が尽きてやめるところだ。
だが、今日は違う。金はまだあるし、何よりキャッシュカードがある。どうせなら、とことん地獄を目指してやろうじゃねえか。
そう覚悟を決め、レバーを叩こうと拳を振り上げた時のことだった。シマ1出していた先ほどのマダムが、ドル箱を抱え席を立ったではないか。すかさずデータを確認すると、1229回転でBIG7回、REG6回と設定6をぶっちぎっている。この状況で席を立つのは素人かエスパーしかいまい。失礼ながら、マダムは前者と判断した。
光の速さで台移動をした俺の期待に応えるように、すかさず光る赤い華。これがBIGでスイカが2回落ち確信した。これは6だ。
きっと先ほどの女性は、人の姿を借りた神だったに違いない。哀れな俺を見て、救いの手を差し伸べてくれたのだ。
あなたが垂らしてくれた蜘蛛の糸、決して離しませんよ。マダム、いや女神に心で感謝を告げた。
これは、閉店コースだな。そうやって、鼻息荒くレバーを叩き続けた結果がこちらである。
総回転数 3539
BIG 12 (設定1相当)
REG12 (設定6以上)
※回転数、ボーナス回数は女神との合算
拳が腐っているのだろうか。魂が腐っているのだろうか。それとも、俺自身が腐っているのだろうか。
叩けども叩けども引き当てるのはREGのフラグのみで、グラフは見事に右肩下がり、スキージャンプ界のレジェンド葛西さんですら怯むのでは、と思うほどの直滑降だ。総投資は33Kと、もはやハナハナでまくるのは厳しい。
そして、トドメとばかりに朝イチ俺が座っていたカド2がブリブリとメダルを吐き出している。しかも、噴かしているのは先ほどの女神だ。もしかすると彼女は女神ではなく、エスパー魔美だったのかもしれない。年齢的にも合致する。
完全に心が折れた。
もう家に帰って冷蔵庫のプリンを食べよう。贅沢に、皿に出してやる。
しかし、落武者のようにフラフラと出口を目指す俺の前で、再び奇跡が起きた。空く気配の無かった「新台」の札が刺さったシマから、1人の若者が席を立ったのだ。これも神のお導きなのだろうか。反射的にその台を確保した。
尼崎で少年時代を過ごした俺は、巨人は敵だという空気の中で育った。三つ子の魂百までというが、その後もdocomoよりもauを使い、ヴェルディよりもマリノスを応援するような人生を送ってきた。
そんな俺だから、アレックスが設置された1999年にはアルゼよりも山佐の台を好んで打っており、その存在を認識していたが、触れたことはなかった。引退を賭けた勝負で、26年越しの初打ちである。
不慣れなスマスロの操作に戸惑いつつ数ゲーム消化し、驚愕した。図柄が全く見えないのだ。小役はもちろんのこと、鳥や7すら見えない。
俺という人間は、若干ではあるがヒキが弱めに産まれたために、4号機時代は「フル攻略すれば1でも機械割100%以上」という台を好んで打っていた。
小役を取りこぼしたりハズシに失敗した瞬間、割は下がる。それ故、必死になって小役を狙っているうちに、国内でもトップクラスは言い過ぎだが、クラスで3本の指に入るほどの目押し力を身につけることができた。
ブランクのせいか、それとも加齢による老眼が原因か…。とにかく全くといっていいほど目押しができない。俺は、途方に暮れた。予告音が鳴ってもどこも狙えず、これではアレックスのゲーム性を楽しむことができない。
クレジットがなくなったらやめよう。そう決めた矢先のことだった。神は再び俺に試練を与えた。予告音が鳴り、リールが派手にフラッシュ、これが数ゲーム続いた。間違いない。ボーナスが成立している。
両隣りの若者の視線を感じた。慌ててスマホで「アレックス ボーナス 揃え方」と検索し、実戦しようと試みるが、何も見えないので狙いようがない。
「早く揃えろよ、おっさん」
「目押しもできねえくせに新台ってだけで飛びついてんじゃねえよ」
彼らの心の声と舌打ちが聴こえるようだ。屈辱だ。そして、その屈辱を上塗りするかのように、1000円分のクレジットが尽きた。買い足しである。数ゲーム後なんとか7を揃え、400枚弱のコインを手にした俺は、逃げるように席を立った。
以下、結果である。
ハナハナホウオウ 投資33K
回収0枚
アレックスブライト 投資2K
回収379枚
total -27K(46枚交換)
パチスロに没頭していた頃、月に2回発売される「パチスロ必勝ガイド」を全ページぼろぼろになるまで熟読していた。そのためパチスロに関する知識は誰にも負けない自信があったし、収支には結び付かなかったが、目押しの実力もそこそこあった。
それが今では「有利区間」の意味も知らず、ボーナス図柄の目押しもできない。なんでザマだ。胸の奥で、闘志の炎が灯るのを感じた。
このままですむと思うなよ。帰り際、アレックスブライトの下パネルに居る、澄ました顔の鳥を睨みつけた。
しばらくロマンは封印し、ハナビやコンドル、ディスクアップなど、目押しが重要な機種を打ち込もう。そして、かつての実力を取り戻した暁には、再びアレックスブライトに挑戦しよう。
それまでは、パチスロをやめるわけにはいかない。
「2万勝ったのに財布を落とした」
「帰宅する途中、強盗に襲われた」
「道端にボロボロになったかわいそうなお地蔵さんがいたので5万円お供えしてきた」
どう言えば、妻は許してくれるだろうか。帰り道、散々頭を捻ったが、ナイスな言い訳が思い浮かばない。
気がつくと、自宅にたどり着いていた。恐る恐る玄関のドアをあけると、我が家のアイドル、次女のみーちゃんが泣きながら抱きついてきた。普段、俺が幼稚園のお迎えに行くと「お前が来たのかよ」というような表情を浮かべるみーちゃんであるが、母親に叱られた時だけは俺に懐く。
今回もそのパターンのようだ。台所で仁王立ちしている妻に状況を尋ねると、いつも幼稚園の給食を完食していると言っていたみーちゃんだったが、本日行われた個人面談で担任の先生から「ぶっちぎりで、クラスで1番残しています」との報告があったそうだ。
「残すのはしょうがないよ。でも嘘はだめだよって叱ったの!」と、妻は言った。
これは、チャンスかもしれない。俺は優しくみーちゃんを抱きしめた。
「みーちゃん、お母さんにちゃんと謝りな。嘘は確かによくないよ。でもちゃんと謝れば、絶対にお母さんは許してくれるからね」
横目で見ると、妻はうんうんと頷いていた。
そして「ウウ…オカアサン、ゴメンナサイ」と泣きながら謝るみーちゃんの頭を優しく撫でた。
今夜、子供が寝静まったら俺も嘘をついたことを謝ろうと思う。今回も敗北したが、スロットはやめられない。
ものすごく怒るかもしれないが、何だかんだで許してくれるだろう。妻は天然で、誰よりも俺に優しいのだから。
11
53
共有する
- ダスト
- 代表作:ロマンティックパチンカー
ルパンでパチンコを覚え、アステカでパチスロを覚え、ミリオンゴッドでギャンブルを覚えました。子供が生まれた時に一旦現役から退きましたが、先日7年ぶりにパチンコ屋に行き、再び悪い心に火がつきました。リハビリ感覚で、ハネモノ、遊パチから始めようと思います。
プレイスタイルはロマン打ち、愛があれば確率なんて超越できると信じています。嫌いな言葉は下ブレです。
本日の人気記事
パチ7の特集&漫画コンテンツ
パチ7 パチンコパチスロ新台機種情報
パチンコ人気機種
パチスロ人気機種
2025年10月6日導入予定
パチンコ
Pフィーバーダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか2 LT-Light ver.
P冬のソナタ My Memory SWEET Version
パチスロ
2025年10月20日導入予定
パチンコ
パチスロ
2025年11月4日導入予定
パチンコ
P Re:ゼロから始める異世界生活 鬼がかり 199ver.
パチスロ
2025年11月17日導入予定
パチンコ
パチスロ
2025年12月1日導入予定
パチスロ
2025年12月8日導入予定
パチンコ
パチスロ
2025年12月22日導入予定
パチンコ
パチスロ
読んで頂きコメントも頂きありがとうございます!励みになります!
ほんっとに目押しだけはまあまあ得意だったのに、7年もやらないと全く見えなくなるんですね笑
次回の実戦では徹底的に目押しを特訓してくる予定です!
が、しかし
そんな実戦のコラムが果たしておもしろいのかどうかはまだわかりません!
エスパーが最初打ってた台は間違いなく上だと思います!
自分が打ち出してもBIG中のスイカは抜群に良かったので
ほんと、神様はなんで俺にいつもいつも確率の上ブレを収束する役割を与えるのでしょうか。
ゆるされるウソとゆるされないウソ、はたしてどうなるか……
ジャグラーでもたまにいますよね、エスパー
なんでここでやめんの!?
いいの!?
からのクソ凹みとか彼らは波を予測できるとしか考えられません笑
あ、今度波だけに注目して打つ企画やってみようかな
羽根物はいいですよね…確率のように裏切らないし
昔みたいに自力ラウンド継続の台が復活してくれたら僕は一生打ち続ける自信があります
最近大好きなTOKIOちゃんで3Rくらいすぎて病んできました笑
やっぱ移動は正解ということで、ありがとうございます!
マイナス方向の確率の収束だけを担ってしまうのです、いつもいつも!
ほんと設定だけはわからない
勝てばエスパー、負けたら凡人
スロのノーマル機はたまにしか打ちませんがハナハナで同じ状況なら移動してるかもなぁと思います。
ただ羽根物打つ際に上手い人らはその辺り上手に見切る事も多くてくわされる事が何度もあったので上手い常連さんの顔は覚えるようにしてます
私も同じく移動してます、当たってる台の方が偉いので…
あとは後任の人が出してもあんまり気にしないようにしてます