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パチ7虎の穴
2025.12.08
【ロマンティックパチンカー】No.14 RIDE THE WAVE!

7回の裏ツーアウトランナーなし、先攻チームが2点リードしているその場面で、8番バッターが放った打球は平凡なシングルヒットになるはずだった。右翼手もそう思ったのだろう、緩慢な動作で捕球体制へ入った。
しかし、打者は猛然と一塁を蹴った。慌ててボールを掴み送球するも、スライディングした足がわずかに早く打者は見事に2塁を陥れた。そして、この一連のプレイを見た解説者は唸るように言った。
「これは…流れが変わりますよ」
そこから打線が繋がりその回で同点に追いついた後攻のチームは、最終回でサヨナラ勝利を収めた。解説者が再びドヤ顔で言い放つ。
「やはり、波が来ましたね」
スポーツ界では当たり前のように用いられる「流れ」や「波」という言葉。それをひとたび我がパチスロ界で使った日には、その瞬間に珍獣を見るような目で見られ、街一番のおバカさん、というレッテルを貼られる。
だが、波や流れは、確実に在る。
もう20年以上前の話になるが、俺はあるホールに入り浸っていた。寂れた外観は人を拒んでいるかのような雰囲気を纏っており、店内にはもちろんほとんど客がいない。そんな店に通っていた理由はただ一つ、もはや旬が過ぎ、大多数の店から姿を消していた「ガメラ」の設置があったからだ。
パチスロ必勝ガイドの大ファンであった俺は、いつかライターデビューを飾った暁にはアニマルかつみさんのようにライター名を「ガメラようすけ」にしようと思っていたほどガメラを愛していた。
そもそもガメラは完全攻略をすれば設定1でも機械割は余裕の100%オーバー、理論上はどんな店で打ったとしてもプラスになるはずだった。
そんな激甘と言われたガメラでとことんやられていた。しかし、これは一時的な確率の揺らぎに違いない、続けていればいつか結果が伴うはずだ、と狂信者のような眼差しでそのホールに通う日々を送っていた。そして、ついに奇跡を起こすことに成功した。
あれは異常なほど熱い夏の日だった。熱波から逃れるべくたどり着いたコンビニで、少しでも涼がとれるようにと購入したガリガリ君が当たった。人生で初めてのことだった。今日は何か特別なヒキを持っている気がする。そう思った俺は、その日の予定を全てキャンセルして例のホールへ向かって走った。
店内には相変わらず人はいない。恐らく今日も全台ベタピンだろう。ままよ、と居心地の良さそうな角台を確保し打ち始めると、まさかの投資1KでBIGを引いた。
ガメラは大当たり中のハズレ出現率が6で1/978、1で1/31.5と顕著な差がある。このBIGでは当たり前のようにハズレが2回出た。プロなら即やめだろう。
だが、ノーマル打ちの方々にはわかってもらえると思うが、BIG終了後には連チャンの波が設定不問で残っていることがある。マイゾーンは純Aタイプなら100回転程度、大量獲得機なら200と決めていたのでそれまでは打ち続けようとレバーを叩くとクレジット内で連チャン、これもBIGで出玉は一気に1,000枚オーバーだ。
そこからが圧巻だった。ビッグウェーブの到来だ。15時までに揃えたBIGは驚異の17回、本日初めての200ハマりをくらったところで席を立ち、流したメダルは7,000枚を超えた。途中まで数えていたBIG中ハズレは1/20で、1を遥かに上回る数字だった。もしも俺がプロだったらこの出玉はなかっただろう。波が設定を超えたのだ。1で7,000枚も出されてしまい悔しそうな表情を浮かべる店長と思しき男性に満面の笑みをお見舞いし、大量の特殊景品を抱えて景品交換所へ向かった。
逆に、設定を信じて大敗したこともある。
5号機のクランキーコレクションもBIG中のコンドル揃いが設定6で1/163、1で1/819と約5倍の差があった。
あの日、初BIGまでにREGが4回と、「高設定かもしれないが波に乗れぬ展開」の中で引いたそのBIG中に2回コンドルが揃った。それでも油断は禁物だ。3ゲーム連が確定している主役の銭形で中段チェリーを引いてしまったり(1/8192)、攻殻機動隊でAT突入1ゲーム前にBARチェリーを引いてしまったり(1/32768)、無駄引きさせたらマジでナンバーワンな俺にとって、この程度の確率差を乗り越えてしまうのは日常茶飯事なのだ。
それでも2回目、3回目のBIGで再びコンドルが揃ったとなれば話は違ってくる。俺はコンドルの瞳を見つめながら尋ねた。
「おまえは1/163の確率に導かれてやってきたのかい?信じてもいいのかい?」
すると、幻聴かもしれないが、頭の中でコンドルの声が鳴り響いた。
「FLY AWAY!」
経験上REGが先行する台は、終日悪い流れから抜け出せないことが多い。それでもコンドルを信じよう。そう決意して閉店までぶん回した結果、3万負けた。危惧した通り、終日REG確率のみが設定6を大幅に上回った。波に乗れないと高設定でも敗北するという典型的なパターンだ。その後、やけ酒にと立ち寄った居酒屋で焼き鳥の盛り合わせを頼んだことは言うまでもない。
7年やめていたスロットを再開して約1年、そろそろ現役時代の感覚が戻ってきた。波や流れを感じられるようになってきたのだ。
実戦当日、明らかに波に乗れていた。家を出ると空は雲一つない快晴、いつもは信号を3ターンほど待たねば渡れぬ交差点がその日に限ってガラガラに空いており青信号1発で通過出来たし、駐車場では入り口近くのポールポジションをなんなくゲットできた。
この良波を感じられない奴は、スロットを打つ資格がない。今日はやれる日だ。流れは我にあり。そう確信してホールへと向かった。

さて、今回の実戦はSHAKE BONUS TRIGGER(以下シェイク)である。最近では珍しく悪い噂を一切聞かない台であるが、設置台数が極めて少ない。俺の行動圏内では全ての店がバラエティコーナーに1台あるのみで、その中でも1番期待が出来そうなホールに足を運んだ。
入店は25番目と台の確保が危ぶまれたがやはりこの日は流れが良かったようで、大半の客がAT機に向かったため、無事シェイクに座ることができた。
軍資金は万札が2枚、千円札が9枚で、当然のように万札をコインサンドに投入する。若い方はご存知ないかもしれないが、昔のパチンコは1度パッキーカードを買ってしまったが最後、余り度数の精算が出来なかった。その頃から俺は必ず最大額である5,000円のカードを購入していた。これはいわば礼儀のようなもので、台に対して本気度をアピールし流れを良くする一種の願掛けでもある。
すると、サンドは万札を受け付けず吐き出した。二度、三度と繰り返し、違う万札に変えてみても結果は同様だった。もしかしたらかつてこの店でニセ札が使用され、センサーを敏感にしたのだろうか。
大袈裟ではなく15回ほど挿入を繰り返したが、サンドは一向に万札を受け入れない。そこで試しに千円札を入れてみたところ、すんなりと呑み込んだ。その一連の挙動が、脳内にあった古い記憶を呼び起こした。
8歳の頃、母親に「お小遣いを1,000週分前借りさせてほしい」と頼んだことがある。当時は1週間に30円ずつもらっており、どうしても30,000円が必要だったのだ。
母親は理由を聞きもせず音速で「ダメ。どうせろくでもないことに使うんでしょ」と言った。もちろんろくでもないことに使う気だった俺は、「うちのお母さんはエスパーなのかな」と思った。
同級生のY君が数日前に当時爆発的なブームを巻き起こしていたビックリマンチョコで、第8弾のヘッド「魔肖ネロ」を引き当てた。怪しく輝くホログラムシールが心底羨ましく、「いいなあ!いいなあ!」を連発する俺にY君は言った。
「30,000円出したら売ってやるよ」
Y君は俺のお小遣いが週に30円と知っていた。払えないとわかっていてそんな金額を提示してくるあの野郎に1発かましてやりたい、それが叶うならば1,000週間お小遣いがなくたって我慢できる。そう思って決死の覚悟でお願いしているのに母親は冷たかった。しかし、ここで簡単に引き下がるわけにはいかない。
2時間ほどお願いし続けるもしまいには「しつこい!無駄遣いはダメ!」と脳天に鉄拳制裁を食らった。結局魔肖ネロは手に入らなかったがその後ビックリマンブームは急速に萎んでいき、「あの時お小遣いの前借りをしなくてよかった。お母さんありがとう」と母親に心底感謝した。
もしかしたらこのコインサンドはあの時の母親のように、無駄遣いを諌めているのかもしれない。つまるところ、この台の設定がワーストであると警告しているのではなかろうか。
それでも、と呟く。俺は今日確実に波に乗っている。設定1など恐るるに足らずだ。そう信じてレバーを叩き続けた結果がこちらである。
シェイク
総回転数 1995
BIG 4(1/498.75)
REG 4(1/498.75)
投資 19K
回収 0枚
ネオアイムジャグラー
投資 4K
回収 0枚
total -23K
投資4KでREGを引いた後、うんともすんともいわず千円札が尽きた。再度万札を入れようとするも、やはり吐き出されてしまう。さすがに腹が立ち店員を呼びその旨を伝えた。
「何回やっても、札を変えても入らないんですけど!」
「大変申し訳ありません。ちょっとお札を貸して頂けますか」
信じがたいことだが女性店員が差し込むと、札は1発で呑み込まれていった。
「では、ご遊技をお楽しみください」
「お、おおう…すいませんでした」
きっと彼女は俺のことをただの気のふれたクレーマーだと思っているだろう。目を血走せつつ追いすがり「まじで俺がやった時は入らなかったんだもの!まじで俺がやった時は入らなかったんだもの!」と叫ぼうものなら、警察に通報されかねない。
激しい羞恥に襲われ居た堪れない気持ちでレバーを叩く俺は波に呑まれたサーファーのようなもので、もはやそこに流れはなかった。
その後なんとか当選した4回のBIGで引けた継続JACは1回のみ、ボーナス出現率は1以下、継続JACの確率は6以下と設定1どころかないはずの零を疑う挙動でこれ以上シェイクは打てず、いつものジャグラーのシマへと移動、いわゆる「逃げJ」を炸裂させしっかりトドメをさされてゲームセットと相成った。
恐らく万札が吐き出されていた時点で波は去っていたのだろう。それに気づかぬとは、まだまだ感覚が戻りきってなかったのかもしれない。後悔するも後の祭りで、これがほぞを噛むということか、と深く反省しながら家路へ着いた。
今回のコラムを綴るためあらためて実戦データを見直しているが、ボーナス確率、継続JACともに目も当てられない数値である。それにも関わらず、もうシェイクを打ちたくなっている自分に驚きを禁じ得ない。
これだけボーナスを引けなくてもわずか19K負けと、「完全攻略時の機械割は100%超え」の甘さも魅力の1つではあるが、やはり4号機からのAタイプファンとしては演出面が刺さった。
ステップアップが「ワン!」で終わり憤りつつリールを止めるとリーチ目が出ていたり、バウンドストップで小役が外れたりと様々な演出に心がくすぐられたが、何より興奮したのがベルナビが外れた瞬間だ。
スイカやチェリーなどレア小役のナビではなく、単なるベルナビが外れてボーナスを察知したのは5号機最初のエヴァンゲリオン以来かもしれない。小役ナビは、はずれてなんぼなのだ。今回は拝めなかったがもしもベルナビが出てBARが滑ったら、失禁するかもしれない。
今後のシェイクとの付き合い方であるが、設置台数の少なさ故に朝イチから打つのは危険極まりない。となれば、未練打ちはどうだろうか。
継続JACの振り分けは5に次いで1が良く、他の台で致命傷を負った後の1発勝負にこれほどふさわしい台はないだろう。
うまくいけばどこまでも継続して傷を癒してくれるかもしれない。流れを見極め、ビッグウェーブに乗ることができれば、50%の壁を超えることなど容易いのだから。
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- ダスト
- 代表作:ロマンティックパチンカー
ルパンでパチンコを覚え、アステカでパチスロを覚え、ミリオンゴッドでギャンブルを覚えました。子供が生まれた時に一旦現役から退きましたが、先日7年ぶりにパチンコ屋に行き、再び悪い心に火がつきました。リハビリ感覚で、ハネモノ、遊パチから始めようと思います。
プレイスタイルはロマン打ち、愛があれば確率なんて超越できると信じています。嫌いな言葉は下ブレです。



