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パチ7虎の穴

パチ7虎の穴

2026.01.08

【ロマンティックパチンカー】No.15 日暮里の富士

ダスト ダスト   パチ7虎の穴

思い出すのは全身を包むタオルケットの感触だ。

1986年の夏休み、3泊4日で伯父の家に泊まりに行くことになった。俺は狂喜乱舞した。そこの息子である4つ歳上の従兄は、我が家にはないファミコンを持っている。いつもは友人の家で肩身を狭くして遊んでいたファミコンが、遠慮なしにプレイできるのだ。

到着するなり「マリオをやらせてよ!スーパーマリオをやらせてよ!」と鼻息荒く迫る俺に、従兄はニヒルな笑みを浮かべながら言った。

「マリオ?あんなもんよりもっとやばいゲームを友達から借りてきてやったぜ」

そして、従兄が俺の目の前に差し出したそのソフトこそが、現在でも多くの人々を魅了してやまない「ドラゴンクエストシリーズ」の第1作目だった。

その頃はまだRPGが世間に浸透しておらず、スーパーマリオを期待していた俺は少々拍子抜けしたが、昔からこの従兄を信じて裏切られたことがない。「ドラゴンボール」も「ついでにとんちんかん」もこの従兄が教えてくれて、俺にとってのバイブルとなっていた。そんな従兄にレクチャーされながらゲームを始めた俺は、すぐにその世界観の虜となった。

街を歩く人々の声に耳を傾け、怪しい場所はつぶさに調べ、大陸をくまなく歩き回る。拠点となるラダトームから離れれば離れるほど敵が強くなるため、レベルを上げ装備品を整えるなどやる事は山積みだ。従兄とともに時を忘れてコントローラーを握り続け、気がつけばあっという間に3日が過ぎていた。明日は帰る日だ。

ローラ姫を助け、にじのしずくも手に入れた。あとは最後の敵、りゅうおうを倒すのみだ。しかし、時間がそれを許さなかった。

当時、子供部屋にテレビがある家などほとんどなく伯父の家も例外ではなかった。そして、チャンネルの支配権は伯父にある。伯父がナイターを見るといえば、それに従うしかないのだ。

この世には似ている人間が3人いると言われているが、高校の頃初めて「エアロスミス」というバンドの写真を見て衝撃を受けた。ボーカルのスティーヴン・タイラーとその伯父が、瓜二つなのだ。違っているところは、スティーヴンが長髪なのに対し、伯父がパンチなところくらいだ。まさにドッペルゲンガーである。

パンチパーマをかけたスティーヴン・タイラー似の男を怒らせたらまずいことは、小学生の俺でもわかる。下手をするとやられる。泣く泣くゲームをやめた俺たちは、言われるままに夕食を済ませ風呂に入り、床に就くことになった。  

数時間は眠っただろうか、従兄に揺さぶられて目が覚めた。枕元の時計を見ると、1時を回ったところだった。
「ううん、なんだよお、まだ眠いよお」
再び眠りにつこうとした俺に、従兄が耳元で囁いた。
「りゅうおう、倒しにいくぞ」
その言葉を聴いた瞬間覚醒した。俺は跳ね起きた。

忍び足で居間へ向かい、極力音を立てないように襖を閉める。そして、光が溢れぬようにタオルケットをテレビで覆い潜り込んだ。ふっかつの呪文を入力し、冒険の再開だ。

主人公であるロトの子孫には従兄と俺の名を合わせ「としすけ」と名付けていた。まさに我々の分身だ。にじのしずくを使い橋をかけ、りゅうおうの城に潜入したとしすけに、幾多のモンスターが襲いかかる。ラストダンジョンの敵とあって、どいつも強敵揃いだ。

しかしとしすけも最後の戦いに照準を合わせ、しっかりとレベルを上げていた。1匹ずつ確実にモンスターを倒し、ついにりゅうおうの元へと辿り着いた。

りゅうおうは強敵だった。特に竜に姿に変えたりゅうおうの攻撃は容赦なく、爪がとしすけの皮膚を切り裂きほのおは身を焼いた。

「ベホイミのタイミング、間違ったら死ぬよ!」
「わかっている!まかせろ!」

1枚のタオルケットに潜り込んでいるため、従兄の体温が伝わってくる。熱い。きっと俺も高熱を放っているだろう。恐らく今、この家の中で居間だけが異常なほど気温が上昇しているに違いない。

永遠に続くと思われたりゅうおうとの死闘であったが、ついに終止符が打たれた。ロトのつるぎを手にしたとしすけの攻撃が、りゅうおうのHPをゼロにすることに成功したのだ。

どぅるるどぅるどぅーんというお馴染みの音とともに「りゅうおうをたおした!」のメッセージが表示された瞬間、俺と従兄は叫んだ。
「よっしゃあおらああ!みたか、おらあ!!」
今が深夜ということを忘れていた。それほど熱い戦いだった。しまった、と顔を見合わせるも時すでに遅し、パンチのスティーヴンの登場だ。

「何時だと思ってんだこらああ!!」

血縁関係があれば連帯責任は間逃れなかったかもしれない。しかし、パンチのスティーヴンにとって俺は妻の妹の子という微妙な立場にあり罰を与えるのは躊躇われたのだろう、連行されたのは従兄だけだった。

「お灸を据えてやる」と言って本当にお灸を据える人を初めて見た。もぐさを肩に乗せられ火をつけられた従兄は悶え苦しみながら反省の弁を口にしていた。そして、1人だけ罰を逃れたという罪悪感が俺の胸を焼いた。

罰が終わり解放された従兄に泣きながら謝った。
「熱かったよね?俺だけ見逃されてごめんね…」
「りゅうおうのほのおに比べたら大した事ねえよ」
従兄はニヤリと笑った。そして、言った。
「な?ドラクエ面白かっただろ?」
こいつ全然反省してねえな、と思うと無性に楽しくなり、俺たちは声を殺して2人で笑った。  

基本的にRPGは1人で楽しむものだ。だが、従兄と共にプレイしたあの3日間が、宝石のように輝き記憶を照らしている。

ただでさえおもしろいドラクエが、仲間と一緒にプレイすると楽しさが倍増するならば、パチスロにおいても同じ効果が期待できるのではないか。

ロマンティックパチンカーが始まって約1年、常に1人で戦ってきた。金銭的な結果は惨憺たるものだが、パチスロを楽しんだという充実感を加味すれば精神的収支はややマイナス、プラスまであと一息のところまできている。

1年を締めくくる年末の大一番を前に考えた。パチ7には月に一度、日暮里にて「ホル調」という名のいわば連れ打ちのような企画がある。

何回かオフ会に参加し知り合いも増えた。この1年間の収支をプラスにするのはもはや奇跡に頼らない限り不可能だが、精神的収支であればまだ勝利を目指せるのではないか。

奇しくも12月のホル調の日が仕事の休みと重なっていた。これは神のお導きに違いない。12月6日、その日に今年の勝敗が決まる。

実戦当日、開店10分前にホールに到着し編集長や顔見知りの方々に挨拶をし行列に並んだ。事前にネットで抽選した並び順は55番目で可もなく不可もなしといったところか。最新台、人気機種は無理だろう。かまわない。俺の狙いはいつだって抽選いらずのこのマシンなのだから。
 

4号機時代から何十万ゲーム、下手したら何百万ゲームジャグラーをプレイしてきたが、いまだに飽きることがない。俺にとってジャグラーとはもはやテトリス、将棋、麻雀、ルービックキューブなどと同等の存在であるのだ。

入店直後、居心地の良さそうな角台のマイを確保しとりあえずブドウを数えながら店内の状況を窺おう、そう決めてレバーを叩いていると背後から「おお、もうブドウ10回ですか」という声がした。振り返ると、そこには自由帳でお馴染みのmareさんがいるではないか。

mareさんとはパチ7のオフ会で出会い、サシで飲みに行かせてもらったこともあるのだが、俺の知人の中ではトップクラスの知能の持ち主だ。

彼と話していると「この人が本気を出せば風邪の特効薬くらいは作れてしまうのでは」という気にさせられるが、今のところ残念なことにその能力をパチスロに全振りしてしまっているようだ。もし俺が彼の父親であったとしたら、全力のビンタをお見舞いしているだろう。だが、彼の興味が爆弾などに向かなくて本当に良かった、とも思っている。

どうやらmareさんは俺に付き合ってマイを打ってくれるようだ。我、100万の援軍を得たり、と思った。このマイを見立ててもらい、低設定のようなら他の台を選んでもらおう。そんな邪なことを考えていると投資3K、89ゲームで初光りをゲットした。

「お先でーす、うわ、REGかよ!」
「単独じゃないですか。いいですね」

mareさんのメガネがキラリと光った。REGでいいですね、という発言の意味がわからず「お、おふうん」という曖昧な返事をした俺であるが、聞くはひと時の恥聞かぬは一生の恥ともいう。知っているけど一応確認、という体を装いmareさんに尋ねた。

「単独って、いいんでしたっけ?」
「はい、設定差が非常に大きいところです」

まさに青天の霹靂である。知識が5号機のアイムで止まっている俺は、設定差が大きいのはチェリー重複だとずっと勘違いしていた。これまで単独REGを引き不愉快な気分になって捨ててきたマイの中には、高設定があったのかもしれない。

あの台やあの台も…と後悔が脳を支配し小刻みに震え出した俺に、mareさんはスマホを差し出した。そこにはマイの詳細な数値が並んでいた。

「あれ、こうみるとブドウってあんまり設定差気にしなくて良さそうですね」
「そうですね、やはり単独REGの設定差が大きいです。ですが一応ブドウも数えた方がいいです」

そんな事を話しているうちに俺の台でジャグ連が始まった。98ゲーム、18ゲームでBIG、72ゲームでREGを引くもこれはチェリー重複だったが、その後102ゲームで再び単独REGの降臨である。

「え…これまじであるんじゃないですか?」
「雰囲気は感じます」

再びmareさんのメガネが光った。プロのお墨付きだ。ぶん回し体制に入ろう。

その後、mareさんは自身の台が振るわず「では」という言葉とともにどこかへ移動していった。俺の台もそこから下皿モミモミ状態へと突入したが、予感があった。この台は耐えればいつか必ず噴く。そして、その予感は見事に的中する。

この台の天井は300台にあるのかと錯覚させられるほどハマりは浅く、その後は必ず2桁のゲーム数で連チャンした。そして、22ゲーム、29ゲームと立て続けに引いたREGがいずれも単独で、確信に至った。

ぷんぷん匂うぜ…。6の香りがなあ!!

心で叫んだ。途中、様子を見にきたmareさんも驚きで目を丸くしていた。

「ブドウはどうですか?」
「いや、もうブドウ数えてる場合じゃないんでやめました」

先ほど知識面ではお世話になったがジャグラーに関してだけは、俺に一日の長があるはずだ。この状態に突入したら、ブドウなどもはや関係ない。mareさんは呆れと苦笑いのちょうど中間、というような表情を浮かべてどこかへ去っていった。

1920ゲームで、BIGは8回、REGは10回、合算確率は1/106と6どころか8はありそうな数字だ。スランプグラフは70度ほどの傾斜で登り続けている。

しかし、妻に「今日は閉店コースです♩」とLINEを入れたのがよくなかったのだろうか。そこから500ゲームのハマりを喰らってしまう。合算確率が一気に4と5の間まで落ちた。

それでも今日のマイは一味違う。これまでハマった後は必ず連チャンしてきた。今回も44ゲームでペカリこれがBIGでますます確信を強めた。

古来よりスロット界では「良い台は呑まれない」という伝説がある。今日もしもこの台をやめるとするならば、それはコインがなくなった時だけだ。

その後、1000ゲームの間に一度もBIGが引けなんて、誰が想像できただろう。上がってきた時とほぼ同じ角度で沈みゆくスランプグラフは、まさに日本が誇る霊峰富士を彷彿させる軌跡を描いていた。

ブドウの数値が良ければ粘る選択肢もあった。だが、今となってはこの台が低設定のまぐれ噴きなのか高設定の不発なのか、神と店長のみぞ知るところだ。

やはりプロの言う事は聞くべきだったのかもしれない。本当にすいませんでした、と心の中で既に帰宅していたmareさんに詫びた。

マイナス6Kでギブアップ、実戦終了だ。  

さすがに心が折れた。今日は大人しく帰って明日のチャンピオンズカップの予想でもしよう。そう思い、競馬新聞を購入するためコンビニへと向かった。

しかし、と思った。

果たしてこれで帰っていいのだろうか。わざわざ早起きして交通費を払ってまでパチスロを打ち、マイナス6Kで帰宅…。もしかすると帰りの電車の中で泣いてしまうかもしれない。

どうせ負けるなら、とことん逝くか!そう決意した俺は、ホールの方向へ踵を返した。

とりあえずウォーミングアップとしてギンパラ夢幻で0.5K分の銀玉を弾き、地下のスロットコーナーへと向かった。すると、パチ7の大型新人、ししょーさんがまだ生配信を続けているではないか。

還暦を迎えたししょーさんが頑張っているのに、ここで諦めるわけにはいかない。ししょーさんの力を少しでも分けてください。そう呟き、ししょーさんの打つエウレカの後ろに設置されているというだけで選んだクランキークレストで、第2ラウンドの始まりだ。

コンドルとは長い付き合いだ。技術介入の走りといわれる初代クランキーコンドルのリリース時にはまだ高校生だったため、全盛期に打つことは出来なかった。だが、その後のコンテストや5号機のコンドルシリーズはかなり打ち込んできた。いまだに青7のフォルムを見つめているだけで、白飯3杯は余裕でいける。

青7を上段にペシリペシリと狙っていると、投資2Kで伝説のリーチ目、青テンが炸裂した。そのまま青7を揃える。

規制に縛られてボーナスの出玉は制限され、6号機のノーマルタイプは青色吐息の状況にある。だが、青テンの美しさは4号機のあの頃のままで、少しも損なわれていない。

ボーナス後、中段青7から小役が外れてBIG、青7が下段まで滑りスイカが外れてBIGと、青7狙いのリーチ目をフルコースで堪能したところで持ちコインは500枚ほどになり、収支がプラス域へと浮上した。

やめるならここだ!すかさず下皿のコインをドル箱に移し計数機へ向かう。獲得したコインは490枚で、まくりの成功だ。

以下、結果である。

マイジャグラー
投資6K
回収0K

ギンギラパラダイス夢幻カーニバル
投資0.5K
回収0K

クランキークレスト
投資2K
回収9K

total プラス0.5K  

結果だけみるとショボ勝ちだ。しかし、そこへ至る壮大なドラマが確実に在った。それは、1人で打っていては決して生まれなかっただろう。仲間の存在が、今日の勝利をもたらせたのだ。

終わりよければ全てよし、という格言がある。最後の勝利は、それまでの敗北を綺麗に洗い流してくれた。その余韻に浸りつつ新年を迎えようと思う。

ロマンティックパチンカー
2025年収支
-182,500円 

 

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この記事へのコメント(4 件)

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ダスト
投稿日:2026/01/08
有利区間よくわからない勢さん
クレストおもしろかったです。今後の未練打ちに活躍してくれそうです。
4号機時代、まだ無知なころコンドル打てば勝てるときいてずっと打ってたのですがよくみるとその台は「コンテスト」と書いていました。勿論負けまくりました。
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ダスト
投稿日:2026/01/08
ポリンキーさん
ゾフです!(勘
いやー、ほんとジャグラーは難しいですね。一生打っても飽きないと思います!
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有利区間よくわからない勢
投稿日:2026/01/08
クレスト楽しんでいただけたようで、クレスト好きとしては嬉しい限りです。
ドラクエの入りから、今回の実戦はドルアーガかな?と予想しましたが、しっかり裏切られました。
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ポリンキー
投稿日:2026/01/08
ちょいちょい光るmareさんのメガネはどこで売ってるんだろう

ダスト
代表作:ロマンティックパチンカー

ルパンでパチンコを覚え、アステカでパチスロを覚え、ミリオンゴッドでギャンブルを覚えました。子供が生まれた時に一旦現役から退きましたが、先日7年ぶりにパチンコ屋に行き、再び悪い心に火がつきました。リハビリ感覚で、ハネモノ、遊パチから始めようと思います。
プレイスタイルはロマン打ち、愛があれば確率なんて超越できると信じています。嫌いな言葉は下ブレです。

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