◯◯とパチスロの奇妙な因果関係 『し』

今回のお題はトリオレの三男さんからいただいた「シャングリラ」。



尚、本文中にチャットモンチーもangelaも一切出てこないので悪しからず。






シャングリラ。イギリスの作家、ジェームス・ヒルトンの小説「失われた地平線」に登場する理想郷の名称。ヒマラヤ山脈の西の果てを崑崙山脈の方へ向かった先の山の麓にある僧院の名前だ。そこに住む人々は通常の人間より遥かに長寿であり、また老いる速さは非常に遅い。図書館などの施設があり、知識を蒐集する研究の地となっている。



この小説からシャングリラの名は一躍広まり、ミステリアスな永遠の楽園、外界から途絶された地上の楽園として、理想郷の代名詞となった。




パチスロにとっての理想郷とは何であろう。店内全台、右を向いても左を向いても設定6というのであれば、異論の声も少しは小さくなるだろうが、パチンコ店も慈善事業をしているわけではない。勝者の陰には等しく敗者がいる。店が喜んで其方側に回ろうなどとは罷り間違っても言わないだろう。




我々スロッターは、多かれ少なかれ理想を追う生き物だ。眼の眩むような大金を手にしたい、今日こそは万枚出してやる、設定6であれ、五千枚出たらいいな、せめて二千枚、4でいいから上で在ってくれ、負けなければそれで良い、楽しめればいいや。大きすぎる理想が現実に潰されてしまわぬ様、我々は理想を下方修正して行く。




だがそれでも尚、人は大志を抱かねばならない。俺は何時も、大きすぎる程の理想を抱いてパチスロを打つ。朝一座れば二万枚出ろ、ボーナスを引けばこれが伝説の幕開けだ、連荘が始まれば閉店まで続け。途方も無いほど大きな期待を胸にパチスロを打つ俺を、愚かだと笑う資格は誰にも無い。人間なんて皆何処かしら愚かなんだ。




理想には現実が付き纏う。柱の陰からチラリチラリと此方を伺い、夢を見た瞬間冷水を掛けてくる。ならば其れを物ともしない程の大炎の理想を抱かねば、ずぶ濡れの不完全燃焼で勝負を終える羽目になる。何処までも飽くなき夢追い人、スロッターとはそうでなければならないと個人的に思っている。




朝が来る度に万枚の期待に胸を膨らませ、新台が入れば心がときめき、裏切られると薄々勘づきながらもゾロ目の日に並び、ボロボロに打ち負かされて眠る夜に虹色の夢を見る。そんな愛すべきスロッター達の夢と理想が集結する地、ホールとはそういう場所でなければならない。勝利も、敗北も、理想の一部なのだ。




理想が渦巻き、野望がひしめき、夢が叶い、破れる場所。そんな夢追い人の理想郷で、最期にはBIGの第三停止を離さぬまま絶命したい。例え侮蔑の眼を向けられようが、自分が成りたい自分でいたい。




我々は皆、何処かしらで間違っている。だが、我々を間違っていると言う世界もまた、等しく間違っている。




















性懲りも無くお題募集中です。お題を下さる皆様に幸運が訪れる様祈っておきます。次回は「す」から始まる言葉で。

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