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君が教えてくれたこと
君が教えてくれたこと
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元・店長カタギリさん
シルバ〇アファミリーみたいに小さなパチンコ店の責任者から一転、 雑巾がけがメインの業務となってしまった事務員へとグレードダウン。 そんな設定①のスランプグラフのような半生を、隔週水曜日に連載させて頂いております。 タイトルは「しくじり店長」。 パチ屋の店長が平社員へと降格していく逆サクセスストーリーを、 海物語シリーズの泡リーチを見つめるような気分でお読みください。 - 投稿日:2016/03/22 20:50
おお、シンちゃん!?
なんだよ、すっげえ久しぶりじゃね?
いきなり訪ねて来るなよな、ビックリするじゃねぇかよ。
あ、
お前、まだスマホもケータイも持ってなかったんだっけ?
じゃあ仕方ねぇな…。
それにしても何年振りだっけ?
20年近く会ってない気がするよなぁ。
お前、全く老けてねえなぁ。
てか、昔と全く顔も体型も変わって無いじゃん…
ちょっとズルいんじゃねぇの?
もしかして顔、いじったのか??
…そんな怒るなって、冗談だよ。
上段青7テンパイだよ。
…おう、
俺もオッサンになったからオヤジギャグぐらい言うわ。
今日は突然どうしたんだよ?
…ああ、今は彼岸の時期なのか。
そっちの天気はどうなの?
雨とか降ったりするのか?
ヒガンって何か、ドイツのサッカー選手みたいだよな。
でも漢字で書くと「彼の岸」だもんな。
お前が立っている岸、そういう意味でいいのかな。
あの河川を渡る時ってどうすんの?
水上バスみたいのが運航してんの?
スイカとかパスモ、使える??
…ああ、
それもわかんねぇか。
今は電車やバスに乗るのに、いちいち小銭が要らないんだよ。
まあそんな話はどうでもいいよ。
何?
俺のことを心配して来たの?
ウソつけ、このやろう!
カネなら貸さねーぞ!!
河川を渡る駄賃ぐらいなら、くれてやってもいいけどな。
ああ、そうそう。
シンちゃん、すっげえ昔に俺の夢に出てきたんだよ。
俺とシンちゃんが一緒に働いてたパチ屋、覚えてるか?
あの店をバックレてさ、しばらく家にずーっと引きこもってた時期があるんだよ。
…いや、そこ特に笑うとこじゃねぇし。
で、仕事もしてねーしさ、
やることっつったら、パチスロと競馬ぐらいじゃん?
その頃に、いきなりお前が夢に出てきたんだわ。
忘れもしないわ、1995年の12月24日。
第40回、有馬記念の当日だよ。
夢の中のシンちゃんと俺は、パチ屋の事務所でタバコ吸ってたんだよね。
あの頃のこと、覚えてるか?
鬼よりおっかねぇツチダさんと、
悪魔みたいな性格のトキタさん。
当時のシンちゃん、凄かったぜ!?
スロットコーナーで立ったまま寝てるんだもん、しかも何回も。
ツチダさんメッチャ切れてたよな、シンちゃんに。
それでも眠い眠いってよく言ってたもんな、お前。
あの鬼と悪魔にしょっちゅう、馬券を買いに行かされたよなぁ。
府中の競馬場とか立川の場外馬券場とか、
二人でほとんど毎週のように行ってたもんな。
帰り道はいっつも同じだったよね。
俺が甲子園で負けた高校球児みたいに無口になっててさ、
シンちゃんはデッドボールを喰らった清原みたいに、
とにかくスッゲー怒りまくってんの。
そういや清原って最近、捕まっちゃったんだよね。
あ、
お前は野球は全然興味が無かったよな、ごめん。
その有馬記念当日の夢の中でさ、
シンちゃん、ずーっとニヤニヤ笑ってんだよ。
で、俺が「何だよ、キモチ悪ぃなあ!」って怒ってるのに、
お前は、ずーっと笑ったまんまでさ。
いい加減に俺も頭にきて
「何だよ、言いたいことあるなら言えよ!」
って怒鳴ったらさ、
ようやく口を開いたかと思ったら、
「俺、今日の有馬記念の勝ち馬、知ってるよ」
だもんな。
あれにはビックリしたよ。
俺、その時のシンちゃんのことを疑いもせずにさ。
「え? え? 何が来るんだよ??
やっぱ(ナリタ)ブライアンか?
それとも(ヒシ)アマゾン??
シライさんは(サクラ)チトセオーが来るって断言してたっけ?」
って、
メッチャ話に食いついたんだけど、
シンちゃんは必死になってる俺の顔を見てゲラゲラ笑っててさ。
そしたら急にマジメな顔になって、
「勝つのは、10番の馬だよ」
って言ったんだよ。
そこで俺、目が覚めたんだわ。
それがあの日の午前10時ごろのだったんだよ、確か。
「よし、じゃあ午後から有馬の馬券を買いに行こう、
10番の馬の単勝と、10番からの馬連でいいな…」
とか考えながら、とりあえずマリオカートやってたんだわ。
で、
クリスマスイブだっつーのに部屋にひとりぼっちで、
マルボロ吸いながらひたすらカメの甲羅を投げたり、
バナナの皮でスッ転んだりしてたらさ、
気付いたら午後3時をとっくに回ってやんの。
馬券のこと、すっかり忘れてたんだよね。
で、あわててTVのチャンネル変えたらさ、
ちょうど先頭の馬が、電光掲示板の前を走り抜けた瞬間だったんだよね。
1着でゴールした馬のゼッケンには、10の数字が書かれててさ。
勝ち馬は、マヤノトップガン。
単勝で13倍ほどだったかな。
単勝馬券で5,000円ぐらい買うつもりだったし、
馬連の分も合わせたら10万ぐらい楽勝だったよな…。
俺、その時からずーっと馬券は買ってないんだよ。
親友がわざわざ夢に出てきてまで教えてくれた話を、
結局は信じてなかったんだろうね…。
もう、この先の人生で馬券が当る気がしなくてさ。
お前が、最後にかけてくれた言葉。
たとえそれが夢の中であっても、信じてやれなかったんだもんなあ…。
ああ、でもパチ屋には相変わらず行ってるよ。
シンちゃん知ってるか?
ニューパルってまだホールにあるんだぜ!?
そう、俺らが国分寺で良く行ってたじゃん?
あの店の名前って何だっけ?
ほら、あのメッチャ狭かったスロ専。
シンちゃんが目押しに気合い入れ過ぎて、
中ボタンをブッ壊しちゃったあの店。
そう、
あの店で打ってた、あのニューパルサーだよ。
…って、ウソに決まってんじゃん。
あんな初期の4号機がホールに残ってる訳、無いじゃん!
冗談冗談、上段青7テンパイ。
…おい、
無視すんのはヤメろよ!!
今はニューパルサーRっていう5号機になっててさ、
ボーナスが入ったらランプが光る、
ジャグラーみたいな台になってんだわ。
…あ、
ジャグラーもわかんねぇか。
え~っと、
ザンガスなら覚えてるか?
あの台みたいに老人が心停止しそうな位にやかましい訳じゃないけどさ、
リールの左にあるランプが光るんだわ。
…え、
だったらリーチ目なんか要らないだろって?
そりゃそうかも知らないけどさ、
ほら、
爺ちゃん婆ちゃんがボーナス入ったままヤメる心配が無いじゃん。
シンちゃん、あの頃にホールで良く言ってたじゃん?
「お年寄りがリーチ目に気付かなくて、ヤメちゃうの可哀そうだね…」
ってさ。
あの頃は「何を顔に似合わねぇこと言ってんの、コイツ?」って思ってたけど、
今なら、よく分かるようになったわ。
シンちゃん知らないと思うけど俺、パチ屋の仕事は続けてたんだよね。
少しのブランクはあったけどね、色々な経験をさせてもらったわ…。
まあそんなことはどうでもいいけどさ、
年寄りも安心してニューパルが打てるんだぜ?
ソイツはちょっとだけ良い時代になったんじゃないかな…。
だけど国分寺のあのスロ屋も、よく通った居酒屋も、
ひとつ残らず瓦礫に変わっちゃったんだよなぁ…。
時代が変わるってのは、思い出の景色も消えてしまうってことなんだな。
あ、そうそう。
シンちゃん、俺に教えてくれたんだよね。
上段に7がテンパイして、右下段にカエルが止まったらビッグ確定だって。
この出目が止まってラークマイルドを咥えながらドヤ顔をキメたシンちゃんの顔、
今でも忘れてないからね、俺は。
そして、このリーチ目のこともずーっと覚えておくからね。
時間がどれぐらい流れたとしても、
街並みがどんなに変わったとしても、
俺の中で生きている思い出は、ちっとも色褪せたりしないんだよ。
やっぱりビッグだったわ。
そういやシンちゃん、こうも言ってたよね。
ニューパルでカエルを揃えた時は、「キーッ!」という鳴き声がするって。
お前このやろう、
アレ全然ウソじゃねえかよっ!!
カエル揃えた時は「ケロロロロッ!」って3回鳴いてるよ、あれは。
そもそもカエルって「キーッ!」って鳴かねえだろ。
それじゃ、更年期の義母じゃねぇか。
…なあ、聞いてるか?
…なんだよ、また眠くなってんのかよ。
もうツチダさんに怒られる心配も無いけどさ、
お前、ずーっと寝てばっかりだったんだろ?
まだまだ聞いて欲しいことはたくさんあるんだよ、
もうちょい付き合ってくれてもいいだろ?
こんな、くだらねえ話ばっかりで悪いけどさ。
俺のことを心配して会いに来てくれたんだろ?
ちょっと照れくさいけど、嬉しいよ。
でも、やっぱ遠慮しとくわ。
悩み事はダンボールの箱に詰め込みたいぐらいたくさんあるけれど、
お前とだけは、そんな話をしたくないんだよ。
少しぐらいは、カッコつけさせてくれよ。
…喉が渇いたね、何か飲もうか?
シンちゃんが来るとわかっていたら、ちゃんと用意しておいたのにな、
キリンのラガーとラークマイルド。
そこのコンビニ、酒は置いてるけどタバコ売ってないんだよ。
とりあえずポンジュースしかないけど、これでいいか?
大丈夫だよ、
ファジー・ネーブルだと思い込んでグイッと行っちゃえよ!!
…おい、
聞いてんのかよ?
…もう少し、俺の話に付き合ってくれてもいいだろう?
…なあ、シンちゃん。
あの時みたいに、もう顔が真っ白になってるじゃねぇかよ…
モヤシッ娘倶楽部じゃねえかよ、それじゃ。
そんなアイドルグループが今、メッチャ人気あるんだぞ?
…それもウソだけど。
今から急いでビール買ってくるからさ、
久しぶりにラークマイルドも吸いたいだろ?
俺、今からタバコ売ってる駅前のコンビニまで全力疾走するからさ、
もうちょっとだけ待っててくれよ。
今度はお前が話す番だろう…
離れていたってずっと友達だったんだ、
20年ぶりの思い出話、たくさんあるんだろ?
あの時は別れの言葉さえ言えなくて辛かったけど、
今はもう、サヨナラなんか言いたくねぇんだよ…
なあ、シンちゃん…
…ありがとう。
シンちゃん…
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元・店長カタギリさんの
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このコラムへのコメント(10 件)
ここでまさかの、カモ原スタイルにチェンジっすか!?
…う~ん、
編集長、マジで脳波と臓器の検査をしたほうが良いですよ!
このリーチ目だけは、どうしたって忘れることができませんね。
投資1本で拝めた今回のリーチ目も、
アイツがちょっとイタズラしてくれたんじゃないかと、
そんな風に思ってしまいますね。
どうして皆
涙腺を刺激する
文章書くのさ。
泣けて泣けて仕事にならん。
しかも
ニューパルの
マイベスト1リーチ目
見せられた日にゃぁ……。
ここ最近、思い出の場所巡りを繰り返していたせいで、
少し幻想の世界に足を踏み入れてしまったようですね。
くるももさんも、そのような幻想の一種だと思うことにしましたw
会えたって実感と満足感が残ってる不思議な朝になるんですよね。
そんなシンミリした気持ちでコメント欄見たら「くるもも」って。
南斗獄屠拳を使う金髪の人とか、
局部を晒しがちな春日部の男児とか、
忍者ハットリくんのすぐ泣く弟を思い出しますね。
…みんなの心の中にも、
シンちゃんはいるんだよっ!!
(※個人の感想です)
そう。
自分だけどんどん老けていくのに、
アイツだけズーっと和解まんまなのが頭にくるんスよねw
吸ってた煙草の銘柄とか、チャリでスッ転んで折れた前歯の型とか、
2つ折りの茶色い財布にハズレ馬券を入れて分厚くしてたこととか、
しょうもないことばっかり覚えてるんだよなぁ。
府中の競馬場に行ったら普通に再会出来るんじゃないかな。
どうせアイツもヒマだと思うからw
なんだか色々…思い出しちゃいました。
多分俺が今ここで書いてるのもスロットと出会わせてくれた今はもういない悪友のお陰だし…あいつはマイセン6ミリ好きだったな…。初代北斗から幾つも新しい北斗が出て時が経ってるのに…俺だけがオッさんになってそいつの時間は未だに4号機末期のままだし。
こちらから会いには行けないから会いに来てくれる事を願うしかないけど…いつも人が苦しんでる時に小馬鹿にした感じでポッと現れる。そして昔のまんま一緒につるんでヘラヘラして遊んでるだけだから言いたい事も1つも言えないっていう。あいつなりのエールかもだけど。マイセンとポカリ持って留守だろうけど学生の時みたいに家に遊びに行こうかな。
今日も残念な位元気だ馬鹿野郎!