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パチスロワイルドサイド-脇役という生き方-
2024.07.30
ワイルドサイド最終回:脇役でも生きていく~パチスロメディアという大海~
「ユニバカサミフェス2024への出演依頼が来てるけど、どうする?」
そんなメッセージが『H』編集部の担当者から届いたのは、2023年の夏頃だった。メッセージには詳細な日付やギャラの記載もあった。売れっ子演者なら話は別だが、半年以上先のスケジュールなど空いているに決まっている。
それでも即答しかねた。
メッセージに既読をつけたままそっと閉じて、イスに体重を預けた。「出演オファーをいただけるだけでも名誉なことなのだから即答すべき」。それは当然そうなのだが…。
もちろんギャラに不満を持ったわけでもない。一流のライターや演者ならそうもいかないが、私の場合、ギャラなどいくらでも良かった。さすがに一人の大人として無料とはいかないが、どんなに少額だって構わない。
問題はそこじゃなかった。
――「……(私、いるか? 2024年のユニバカサミフェスに)」
L字型のパソコンデスクの前でイスのリクライニングを最大まで倒し、腕を組んだまま目をつむった。
返信。
――「ん~~~」
正直に言えば〝恥ずかしい〟という思いはあった。近年の仕事といえば動画の制作・編集がメインで、出役(デヤク=演者のこと)としてはたまにゲスト出演がある程度。書き物は粛々と続けているものの、時代は令和である。
ご存じの通りユニバカサミフェスには、新世代のYouTuberや演者が多数出演する。その中に、誰かも分からぬ半分スタッフのようなオッサンが混じるのはどうか…。
「どのツラ下げて出演してる」
「身分をわきまえろ」
そんな風に思われるかもしれないし、自分でもそう思ってしまう。
もちろんこのオファーは、私にとっても光栄なことに違いない。まだ頭数に入れていただけることを、シンプルに嬉しいとも思う。しかし、ここはお断りするほうが大人として正しいのではなかろうか。
義理で誘ったら本当に来た…なんてことにもなりかねない。
「…う~ん、お断りするか」
そう返信しようとイスを起こしたが、ふとマウスを握る手が止まった。思い出したのは〝ファン〟のことである。
改めて書くまでもないが、私のファンは多くはない。それでも、来店すれば少々遠くたって会いに来てくれるし、SNSでコラム更新のお知らせをすればリプライを送ってくれる。
数こそ少ないかもしれないが、たしかに存在しているのである。
とても残念な話だが、ライターや演者は〝ファン心理〟にかなり疎い。みんな若いうちから〝応援される側〟であるため、〝応援する側〟の気持ちが分かっていない。かく言う私もそうだった。
〝人を応援する〟とか〝人を推す〟という気持ちが分からなかった。たとえば野球やサッカーに贔屓の球団があれば、少しは理解できたかもしれない。しかし、パチンコ・パチスロに青春のすべてを捧げてきた我々には難しいのである。が…
スグにメッセージを開き「参加させていただきます」と返信した。〝自分の羞恥心より優先すべきことがある〟。そう思ったのにはワケがあった。
出演を決めたワケ。
「ユニバカサミフェスの出演依頼きました?」
友人である某演者からメッセージが届いたのは、件の返信から30分ほど経った頃だった。
――「うん。編集部経由できて、参加しますって送ったよ」
某演者「マジすか? 僕どうしようかな~」
――「なんでよ? ギャラ?」
某演者「いや、そうじゃなくて〝噛ませ犬〟じゃないスか」
――「ハハ、まあそうかな」
某演者「若手の人気演者いっぱいいるんでしょ?」
――「そりゃそうだけど、噛ませ犬で上等じゃん?」
某演者「う~ん…」
彼は私よりずっと若いし、動画への出演機会も多い。それゆえに、若手の人気演者と同じステージに立ちたくないという気持ちも強いのだろう。「まだ負けてねえ!」というプライドもあるのかもしれない。
――「まあ落ち着きなよ」
――「私だって恥ずかしい気持ちはある」
少し間を置きながらメッセージを連投した。
――「でも、〇さんにもファンはいるわけじゃん」
某演者「はい、まあいますね」
――「そのファンのために出るんだよ」
某演者「ファンのため?」
――「想像してみなよ? 自分の推しがビッグイベントに呼ばれてないんだよ? ちょっと悲しくない?」
少し間を置いてから返信が来た。
某演者「まあ、たしかに少し悲しいですね」
――「でしょ? 私の推しはイベントに呼ばれないんだ…ってなるじゃん」
某演者「まあ、たしかにそうスね」
――「〝私の推しが今回も呼ばれました!〟って喜ばせたいじゃん?」
某演者「なるほど…たしかに」
――「ファンの数じゃ人気演者に勝てないよ。でも自分のファンをできるだけ満足させてあげなきゃ」
某演者「なるほど…少し考えてみます」
――「そうしたほうがいいよ」
親指を立てた「グー」のスタンプを貼ってメッセージをしめた。
ユニバカサミフェスのようなイベントには、いつ呼ばれなくなってもおかしくない。むしろ今回呼ばれたことに驚いたくらいなのだ。
私が所属する攻略誌『H』を支えてくれているファン層は、当然ながら年齢が高い。下は30代前半がギリギリで、40~60代がメインだろうか。来店で地方へ行くと、まるで離れて暮らす息子に会ったように喜んでくれるファンも多い。
可能な限り彼らをガッカリはさせたくない。ここまで支えてもらったんだ。どんなに恥をかいたって、彼らを楽しませ、喜ばせるためメディアやイベントに出続ける。それが我々のように長くいる〝出役〟の役目かもしれない。
――「さて、3月までに痩せるか」
もはや人にどう見られようと気にする年齢ではないのだが、とはいえ出役である以上、できれば良く見られたい気持ちもある。「久々に会った推しが豚でした」では申し訳が立たない。
家族に「歩いてくる」と伝え、ウォーキング用のウエアに着替えて家を出た。
違和感に気付いた?
ここまで読んで違和感を覚えた人はどれくらいいるだろう。そう、一人称が「俺」から「私」に変わっているのです。
キャラ変というと恥ずかしいけれど、2019年から衣装として赤いスーツを着るようになり、その際ついでに一人称を「私」で統一することに決めました。
実は「俺」は汎用性が低い。フォーマルなシーンでは使えないし、目上の人と話すときにも使いにくい。対して「私」はどんなシーンでも使いやすい。
動画を編集している際、いつも「俺」と言っている演者さんが突然「僕」とか言い出すと、どうしても気になってしまう。「いや、あなた僕ってガラじゃないでしょ」などと思うこともしばしば。
「俺」でも「僕」でも統一されていればいいのだけれど、ブレブレだとカッコ悪いので、私は「私」で統一することに決めたというわけ。ちなみにうっかり言い間違えないようにプライベートでも断固「私」です。
家族と話すときだけ「パパ」。たまに仕事仲間と真剣な話してるときに「パパは~」とか言っちゃうけれど。
閑話休題。
その一言で救われる。
結局1mgも痩せないままユニバカサミフェス当日を迎えた。なんならオファーをいただいた昨年の夏よりも太ったまであるが、この歳になると食べることくらいしか楽しみがないので許してほしい。
コロナ禍以降はじめて開催されたユニバカサミフェスは、想像よりずっと盛大だった。とうとうワンフロアでは収まりきらず、イベントや試打は1階、グッズや食べ物の出店、各媒体のブースなどは2階といった具合に分かれていたほどだ。
脇役である私は当然ながらメインステージとは無縁。イベントブースで盛り上げ役をやったり、ちょっとしたトークセッションに出演したり。空いた時間は一般のお客さんと同じようにフロアをぶらついたり、出店に行ってみたり。すると…
「ラッシーさん、写真撮ってください」
「ラッシーさん、色紙にサインください」
やはり近年は露出の機会が減ったせいか、以前より声を掛けられることは少なかったと感じたが、それでも喜んでもらえたのなら来た甲斐があった。これが超売れっ子演者なら、逆にフロアなんて迂闊に歩けないのだろうが。
『超ディスクアッパー選手権2024』も一般のお客さんに混じりメインステージ前で観戦。お客さんから「ラッシーさんも本来あっちに立つ側でしょ?」なんて煽られながら観てました。できるわけないだろが! あれはもう別次元の競技ですよ…。
ちなみにユニバカサミフェスへの出演を私に相談してきた友人の某演者は、どうやら出演を断ったらしい。あれだけ熱弁したのに伝わなかったのは少し寂しいが、人の考え方はそれぞれ違うから仕方がない。
彼もあと数年も経てば、私と同じように考えはじめるかもしれない。
同業者やお客さんと一緒に過ごすと、あっという間にエンディングの時間。出演者のほとんどはメインステージに登壇するが、全員は入りきらないとのことで、私は当然のようにバックヤードで過ごすことに。
しかし、残された後輩とイスに座りジッとしているのも寂しいのでバックヤードをウロついていると、ネームプレートを下げた一人のスタッフらしい人物が近づいてきた。
男性「ラッシーさんですよね?」
――「はい、そうですが…」
設営スタッフのバイトという風貌ではない。30代前半だろうか。そこそこ立場のありそうな風格を漂わせている。そろそろ終わりだから、あまりウロつかず大人しくしておけと怒られるだろうか。そんな風に身を固くしていると…
男性「パチ7のワイルドサイド、いつも見てます!」
――「えっ!!?」
男性「いつも楽しみに読ませていただいてます」
――「え…そんな…」
男性「急に声掛けちゃってスミマセン。これだけお伝えしたくて」
――「いえ、あ…ありがとうございます!!」
一般のお客さんからならいざ知らず、まさかスタッフから「ワイルドサイド見てます」と声を掛けられるとは!
男性「これからも連載頑張ってください!」
――「ありがとうございます!」
これは沁みた。最後のステージにも登壇できない私に、まさかこんな形で声を掛けてくれるスタッフがいるとは!
多少の恥ずかしさは実際に感じた。出演者用のTシャツを着ていながら普通にフロアを歩いているものだから「誰あれ?」や、「演者さんですか?」などと言われることもあった。
でも、「ワイルドサイド読んでます」という、その一声で救われる。そのたった一声で「来てよかった」と思えるんだ。
男性「それでは、また」
――「また」
男性と会釈して別れた。文章を書くライターなど不要。そう言われて久しいパチンコ・パチスロメディアだが、読んでくれている人は必ずいる。連載を続けてきてよかったと心の底から思った。
そして、こんな脇役の自伝的なコラムを約7年半にもわたり連載させてくれたパチ7。言葉では言い表せないほど感謝しております!
近年、声を掛けられる際は必ず「ワイルドサイド読んでます」でした。文筆業は19年目になりますが、ワイルドサイドは間違いなく私の代表作になったと思います。
ワイルドサイドは今回の更新をもって終了となります。これまで読んでいただいた皆さま、ありがとうございました。心より感謝いたします!
同時に文筆業も引退となりますが、これからも演者兼ディレクターとしてパチンコ・パチスロ業界で活動を続けていきます。
私が移籍する「ニコナナチャンネル」は、パチ7とは競合関係となりますが、これから先もパチ7卒業生として仲良くしていただけたら幸いです。
ご愛読ありがとうございました!
またパチ7オフ会でお会いしましょう!
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- ラッシー
- 代表作:パチスロワイルドサイド -脇役という生き方-
山形県出身。アルバイトでCSのパチンコ・パチスロ番組スタッフを経験し、その後、パチスロ攻略誌編集部へ。2年半ほど編集部員としての下積みを経て、23歳でライターに転身。現在は「パチスロ必勝本&DX」や「パチスロ極&Z」を中心に執筆。DVD・CS番組・無料動画などに出演しつつ、動画のディレクションや編集も担当。好きなパチスロはハナビシリーズ・ドンちゃんシリーズ、他多数。
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ラッシーさんの活躍を動画でみるの楽しみにしております!